shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題16-5

 

 

たまったら出す!
「あやかし郷愁譚」シリーズの紹介第2弾です。

 

設定など、前回までを忘れている方はよければこちらをどうぞ。

無題16-4 - shanの落書き帳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

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ヤマネコ ~やこ~

 

2020年5月に発売された第九弾の作品。主人公はゲーム本編にも少しだけ登場した、ものべのへ入る道の門番をしているヤマネコ。ゲームアフターよりも少し時が流れ、人化の術を使えるようになったヤマネコが、ものべのの山に迷い込んでしまった聞き手(あなた)と出会う。

音声作品としての特徴は、フォーリーサウンドを活かした森の中の音。家の中にいながらにして森林浴の気分になれる。

あなたは、「世界で一番きれいな何か」を探して、ものべのの山の中を散策していたところ、それを侵入者と勘違いしたやこに出会う。主人公はやこの誤解を解き、「宝物」を探して一緒に冒険をする、という話。

やこは本編に登場する猫妖の「ちま」及び「ちま」の信奉する人間の「ありす」との関係に憧れており、主人公を「隊長」と呼んで、冒険を手伝ってくれる。ビジュアルにある服は、ありすがやこのために仕立ててあげたファッションだという。またヤマネコは最初名前がないが、主人公から「やこ」という名前を付けてもらい、一緒に温泉に入ったり、やこの住処で耳かきをしてもらったりする。やこと一緒に添い寝するうち、主人公はその「宝物」が「やこ」のことだと気づき、やこも主人公の事を特別に思う、というところで終わり。

オチがありきたりだが、全体の流れとしてはきれいにまとまっていて悪くないと思う。やこはものべのにずっと住んでいるためバリバリの土佐弁で、さらにネコなので「ちにゃ」や「きにゃ」という語尾を使う。ネコのキャラで語尾が「~にゃ」であればどんなにおかしくても違和感がなくなるのはなぜだろうか。

CVは民安ともえさん。言わずと知れた超豪華声優さん。今まで聞いてきた音声作品の中でも抜群に演技がうまいが、たまにキャラでなく素っぽい抑揚、間の取り方になることがある気がした。土佐弁に関しては本物を聞いたことがないため、よくわからない。

 

 

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いんがめ ~ほゆる~

 

2020年6月に発売された第十弾の作品。主人公は熊本県出身で、第四弾で紹介した雪御嬢のゆきと一緒にものべのに亡命してきた、いんがめ(犬神が訛ったもの)のほゆる。

音声作品としての特徴は川で洗濯をする音、ブラッシングの音。

「いんがめ」とは狐憑きのような、犬の霊に憑かれた人間の事。聞き手(あなた)は、ものべのにあるアイスクリームパーラーのバイト募集の張り紙を見て、その面接にやってくる。そのお店は以前紹介した雪御嬢のゆきが経営している店で、そこであなたは雇われ店長をやっているほゆると出会う。すぐに採用を決めたほゆるだったが、主人公が不注意からジュースを服にこぼしてしまい、ほゆるはシャツを洗濯することを申し出る。主人公は洗濯のお礼にほゆるの髪をブラッシングし、さらにほゆるから耳かきをしてもらう、という話。

以前のゆきの話からも少し時間が経過しており、ゆきは今ではものべのに居場所を見つけており、反対にゆきを強引にものべのに連れてきたほゆるの方が、今では居場所がなくてフラフラしている、という対比が語られる。

ほゆるは、元々裕福な庄屋の一人娘であったが、犬神に憑かれて自分を見失い、狂って死にかけていたところ、犬神の意識に共感して自我を取り戻した稀なケースであった。ほゆるが自我を取り戻した時、とっくに自分の家、ひいては村は朽ち果ててしまい、残っていたのは自分の部屋と衣装箪笥に入った服だけだった。その有様から、両親が最後まで自分を守っていてくれていたことがわかったほゆるは、生きることを決意し、優しい匂いに誘われた先でゆきと出会う。当時ゆきはまだ村人から信仰されており、そのおかげで村で人間に混じって暮らすことのできたほゆるはゆきに恩があり、それゆえゆきがものべので幸せになっているのを近くで見ることができてよかった、という想いをあなたに話す。

今までゆきの幸せだけを願いつつ、あなたと出会ったことによって、自分の人生について考え始めたほゆる、という構図はとてもよかった。

また、ほゆるは犬神に憑かれて一体化してしまった妖ではあるものの、元は人間であり、それゆえ他の人間からの恐れや敬意の感情を必要とせず、人に忘れられても生きていくことができる。したがってご開祖ちゃんはゆきはものべのに呼んだものの、ほゆるについては来る者拒まず、というスタンスを取っているため、ほゆるはものべのを出ていこうと思えば出ていける。よってほゆるは自分の店を持たず、ゆきに雇われているという形で職に就いている、という設定も、練られていてよかったと思う。

ほゆるが洗濯をするとき、「シャラク石鹸」という棒石鹸が出てくる。棒石鹸とは手洗いで洗濯をするときに使う、汚れた部分に直接塗り込む石鹸らしいのだが、元ネタは「ウタマロ石鹼」であり、石鹸界隈では有名な石鹸らしい。ネタが細かすぎる(褒めてる)。

CVは天知遥さん。調べたところ、九州出身の声優さんらしく、ほゆるの使う熊本弁がとても自然(に聞こえる)でよかったと思う。もっと低いお姉さん系の声を想像していたが、思ったより高い声だった印象。

 

 

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マコ ~まことこま~

 

2020年7月に発売された第十一弾の作品。主人公は鎌倉出身の、一対で一つの妖怪であるマコ(原文は魚偏に麻+魚偏に古)。あまりにもマイナーな妖怪だったが、江戸時代に井原西鶴が書いた「西鶴諸国ばなし」の中に登場するらしい。一対で妖怪としての体をなしており、種族名が「マコ」で、個体名が左側が「まこ」で右側が「こま」。

音声作品としての特徴は、魚釣りの音、野外での調理の音。そして波の音。

ものべのに新しくできた旅館に魚を卸している、出入りの業者であるまことこまは、その旅館に泊まっていた客である聞き手(あなた)と出会う。ものべのは山の中で海がなく、海出身の2人は寂しく思っていたが、あなたの魂から海の匂いを感じ、あなたに興味を持ってあなたを川釣りに誘う。「まこ」は釣り竿、「こま」は投網の名手であり、あなたは2人と一緒に川でイワナやヤマメを釣り上げ、そのまま焚火を起こしてそれを串焼きにして食べる。旅館の部屋に帰ってきたあなたは2人に耳かきをしてもらい、そのまま2人と添い寝する、という話。

川での釣りの音、その後の屋外での調理の音が非常にリアリティがあり、キャンプ経験者であれば風景が想像できるのではないかと思うほどに素晴らしかった。また魚の骨から削り出した耳かき棒を使っているので、耳の中で波の音がするという謎設定は置いておいても、波の音は個人的に好きなので堪能できてよかった。

添い寝をしながら2人は、自分たちは元々貝の精であり、ある時海岸で天然痘にかかり、自殺をしようとしているお坊さんを見つけた。「こま」は貝として、浄化された水でお坊さんを洗ってやり、「まこ」が貝の足を伸ばしてお坊さんを掻いてあげた結果、お坊さんの病気が治り、2人は大層感謝されて、お坊さんはかゆいところを掻くための道具に「マコの手」という名前を付けて「マコ」という妖怪のことを世に広めた。その結果、「マコ」のことが人々に認知され、2人は力を得て人化の術が使えるようになった。しかし、いつのまにか「マコの手」が「孫の手」という言葉に置き換わり、「マコ」は忘れ去られ、力を失っていったところをご開祖ちゃんに誘われた、という身の上話を聞くことができる。あなたはそのお坊さんの子孫であり、それゆえ冒頭で2人は主人公から懐かしい海の匂いを感じたのだと。

2人は消滅しないために海のそばから仕方なく離れ、そのことだけが心残りだったが、主人公と会えたことでまた海を感じることができ、安心したというところで話は終わる。

この孫の手の話、細部は脚色してあるがどうやら本当らしいところがすごいと思った。ややこしいのは妖怪としての「マコ」にはさらに元ネタがあり、それが中国に伝わる爪の長い仙女である「麻姑」に由来するということだろうか。

CVは水野七海さん。エロゲとしての出演の方で有名な方で、代表的なところでいうと「ぬきたし」にも出演されている(未プレイ)。音声作品はこれが初という事だったが、いきなりで難しい1人2役をしっかりとこなされていてすごいと思った。ちなみに「まこ」はお姉さん系でふわふわした感じ、「こま」はマイペースでクール系でぼーっとしたしゃべり方をする。言葉については標準語であり、特に何も思うところはなかったが、水野七海さんはちゃんと神奈川の海沿い出身らしい。

 

 

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大禿 ~ちせ~

 

2020年8月に発売された第十二弾の作品。主人公は大阪出身の大禿(おおかぶろ)のちせ。大禿とは、遊郭に現れる背丈が2 mほどある禿(かぶろ、遊女見習いのこと)の妖。頭身が高いのではなく、幼女のままで全体が拡大されたイメージらしい。

音声作品としての特徴は、囲炉裏焼きの音、髭剃りの音、御座敷遊びの音。

ちせはものべのに新しくできた旅館「旅館あやかし」で仲居をしており、丸2日も食事をとりにこなかった聞き手(あなた)の事を心配して様子を見に来る。あなたは作中で明言されないが何かの作家をしており、ちょうど原稿が修羅場を終えて部屋の中で倒れてしまっていた。部屋に入ったちせはあなたを介抱し、あなたの事情を知って2人で打ち上げを行う事を提案する。あなたはちせに火鉢で食べ物を焼いてもらい、髭を剃ってもらい、マッサージをしてもらい、ちせとお座敷遊びをする。その途中でちせの投げた扇子が当たりそうになったあなたは、ちせにおわびに耳かきをしてもらい、添い寝しながらちせの話を聞く、というもの。

ちせが、現在では存在しない、遊郭出身の妖だからか、時代背景や遊郭の仕組みといった説明に普段より多くの時間が割かれ、ちせとの何でもない話が短くなっていた印象。あなたはちせと「五重塔」、「投扇興」という2つの遊びを行うのだが、これは少しだけお座敷に行った気分を味わえてよかった。

ちせが1200歳ほどになるという描写があるものの、遊郭の成立は安土桃山時代、つまり16世紀であり、時代設定が合わない。しかし、調べ切れていないだけで何か作者側からの理由があるはずなので、それを開示してほしいところ。

ちせは元々農家の娘であったが、口減らしのため女衒に売られ、当代一と言われた太夫(最上級の遊女)、篝火太夫に仕える禿となった。自分の背が不自然に大きくなり、遊郭の皆からいじめられるようになっても、篝火太夫だけはちせをかわいがってくれた。自由恋愛の現代と違って、親の決めた相手と結婚させられていた時代、遊郭は夢を売る場所であり、篝火太夫遊郭に来た一夜の客と本気で恋をし、本気で付き合うという接客スタンスの珍しい太夫であり、それゆえ熱狂的な客も多かった。そんなある日、ちせと篝火太夫のいた遊郭が、恋に狂った客によって放火され、ちせは篝火太夫に抱きしめられたまま、焼けて妖になってしまう。それからのちせは、「今は悪い夢を見てるだけ」と言ってくれた篝火太夫の言葉を支えに、何百年と遊郭、それが廃止されてからは風俗店を転々としながら暮らしてきた。しかし、本当は夢から醒めていることは心の底ではわかっていたちせは、ご開祖ちゃんの誘いを受け、このものべので仲居として働くことになった。ちせはあなたに初めて恋をし、「お客はん」ではなく「旦那はん」と初めて呼びたいと思った、という話。

最後まで聞くと結構設定が作りこまれていてよき。またちせは廓言葉を話さないが、遊郭とか遊女とかが好きな自分にとっては聞いていて楽しかった。お世話してくれる女の子最高。

ちせが最後に眠っている主人公の耳元でこっそり「旦那はん」と呼びかけるシーンも、とてもかわいかった。

CVは天上紫乃華さん。この人もWhispおかかえの声優さんっぽい。この人も名前はお姉さん系のようだが、結構高い声を出していて勝手にギャップを感じていた。ただ、大阪出身ではないようで、大阪弁に若干の違和感があった。台本の言葉がおかしいところもあった。

 

 

これからのあやかし郷愁譚では、2話続けて旅館の話が出たこと、ちせの話の中にでてきた「女将さん」、「板長さん」が出てきていないこと、からしばらく旅館で働く妖シリーズが続くのではないかと勝手に期待している。

コロナ禍で収録が大変だと思われるが、是非負けずに頑張ってほしい。

 

それでは、また作品がたまったころに。