shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題16-4

 

 

またまたものべのシリーズについての話。

みなさんこんにちは、shanです。

 

今回は、少しずつ聞いていた「あやかし郷愁譚」シリーズがたまってきたので、それについての感想を述べていきたいと思います。

「あやかし郷愁譚」シリーズについては、前回の記事でも少し触れているので、よければそちらもお読みください。

無題16-2 - shanの落書き帳

 

 

 

とはいえ、だいぶ間があいているので、まずは復習から。

公式サイトからの引用してきた紹介がこちら。

 

 

ものべのはグランドルートを持たない、完全にパラレルな物語群を内包する「物語」です。
そのうちの「すみアフター」のあと。
「人とあやかしと半妖がともにくらせるうようになったものべの」が、『あやかし郷愁譚』の舞台となります。

ものべの/むこうのに住まう、人とあやかしと半妖が力をあわせ、新たなる平穏を作り出した、『ものべの』。

そこに突如、ものべのの守護者たる力を持つ土地神が顕現します。(ご開祖ちゃん)

幼い少女の姿を取ったその土地神は、手当たり次第、といいたくなるほどの勢いで、
日本各地で孤立している――その存在が人間から忘れかけられそうになっている――あやかしたちを、茂伸へと招き入れます。

そうして、いまだ姿をあらわにせぬ――
けれどもすでにものべのへの移住を済ませているあやかしたち。

そうした外来のあやかしたちの茂伸での暮らしを描きつつ、ものべのの「今」の様子を、彼らの視点で切り取っていく――
それが、ものべのスピンオフとしての、「あやかし郷愁譚」の魅力となります。

「あやかし郷愁譚」でながれる時間は、それぞれの「平穏な日常」そのものの時間の流れであり。
さらに申せば、愛する者と、あるいはこれから愛すべきさだめにある者と、「出会った」状態での時間です。

ので当然、流れはゆるやかに、甘くたゆたうものとなります。

「ものべの」本編シリーズではじっくりと描ききることが難しかった、
「恋人同士の、あるいは夫婦の、なにごともない、けれどもゆえに、特別でかけがえの無い時間」

――「あやかし郷愁譚」は、それらをじっくりと味わっていただける物語となります。

 

 

とまあ、音声作品にありがちな、日常のイチャイチャワンシーンを切り取ったのがこの作品群になるわけです。

最低限の体裁を保つためにどの作品にも耳かき音声と添い寝音声は共通となっていますが、それ以外のトラックはその物語で主人公となるあやかしの特徴を活かした音声になっています。

さらに最近では、登場するあやかしの背景描写にも力を入れていて、ただリラックスするだけではない、物語の余韻を味合わせてくれる作品となっていると感じます。

主人公は各作品ごとに異なっており、音声作品の性質上、聞いている自分自身ととらえてもいいですが、大体その登場ヒロインと結ばれることになるのでハーレムが嫌いな人は第三者ととらえておいた方が精神衛生上いいです。 

 

それでは、個別の作品についての紹介に移ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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洗濯狐 ~お紺~

 

2018年12月に発売された、記念すべき第一弾の作品。主人公は静岡県出身の野狐(やこ)の一種、洗濯狐(せんたくきつね)のお紺。これに限らず、この「あやかし郷愁譚」シリーズに登場するあやかしは全て実在する?伝承のあるあやかしだが、一発目からかなりマイナーどころを持ってきたように感じる。洗濯狐は、夜中の川で洗濯をする音を人間に聞かせて怖がらせるあやかし。妖としての狐の中ではしっぽが2本で、格は最下層に近い。洗濯をして汚れを落とす性から、名前も「せんたくぎつね」とは濁らないと言及されるところが細かくてよかった。

音声作品としての彼女独自の特徴は洗髪といろりの音、また最初の3作品は2部構成になっているため、2つ目では焚火と背中を流す音、である。残念ながら音声のクオリティに関しては要改善。ノイズが全体的に混じるのがどうしても気になる。

このシリーズは、大体聞き手(あなた)が茂伸へ旅の途中に立ち寄り、あやかしに出会ってそのあやかしと関わるところから始まる。その後色々あって最後は添い寝することになるのだが、この時にあやかしの方が自身の身の上話をしてくれる。

お紺は静岡の茶畑で人間に混じって働いていたが、狐であることを隠していたため、いつも独りぼっちだった。そんなある日、ご開祖ちゃんから一通の手紙が届く。それは、この茂伸の地に店を用意したので、移住してきて洗濯屋を開かないか、というものだった。

 実は四国と狐の間には因縁があり、昔々狸の味方をした空海によって狐たちは四国から追放されてしまったのだとか。そして四国に鉄の橋が架かるまで、狐たちは四国を出禁になってしまったらしい。これは実話(というか実際にある伝承)であり、こういった現実の話が混ざったフィクションはすごく好きなので、この設定はすごくよかった。

そしてお紺はこの地で洗濯屋を開き、一般的な衣類の洗濯のみならず、客の心と身体の「汚れ」を落とすことでお客を日々癒している、というお話。

ちなみに、以降のシリーズの中で、この時にお紺と出会った聞き手(あなた)が、茂伸に移住し、お紺と一緒に洗濯屋を経営しているという後日談が語られる。こういうさりげない後日談は好き。

お紺のCVは伊ヶ崎綾香さん。同人音声界隈の大御所であり、文句なしなのだが、お紺のビジュアルイメージと、お姉さんっぽい声のイメージが合わないと言えば合わない。個人的にはもう少し幼い声の方が好みだが、音声作品、特にバイノーラル録音で重要になる、息の使い方、聞き手との距離感などは抜群にうまいので安心感があった。

ご当地ものの宿命として方言の問題があるが、このお紺は標準語を話そうと心がけており、たまにしか静岡弁が出ないし、本物を聞いたことがないので特に違和感はなかった。

 

 

 

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送り雀 ~ひよ~

 

2019年2月に発売された第二弾の作品。主人公は和歌山県出身の送り雀のひよ。送り雀は「送り狼」という人間を襲う妖から逃れたいという人間の願いから生まれた妖で、送り狼に狙われている人間に警告を発する、という性を持つ。しかし、近年電灯が普及し、夜の闇が失われたことから送り狼が人間から忘れ去られて消えてしまうと同時に自身もその在り方から絶滅の危機に瀕している。サンダー・ボルトに対する避雷針のようなあやかし。

音声作品としての独自の特徴は童謡、2つ目ではマッサージ。特にゆりかごの唄はサマポケでも印象深かったし、雰囲気がマスト。

ひよはこのままではただ消えるのを待つだけだったところ、ご開祖ちゃんからの手紙をもらい、どうせなら消えてしまう前に一度旅をしてみたいと思って茂伸にやってくる。その後は竹林にある庵で歌を歌い、みかんを食べて暮らしていたところ、聞き手(あなた)と出会う。あなたはひよが消えてしまわないために、自分がひよの事をずっと覚えておくことを約束し、またひよも人間に覚えてもらうために、歌が好きなことを活かして保育園を開くことにする、というお話。

後日談ではあなたがひよと一緒に保育園を切り盛りしていることが語られる。ちなみにこの保育園には本編に登場した透とすみの娘、えみが通っている。

この作品については前回にも語っているので詳しくは省略するが、こういう物語全体に流れる儚げな空気が好き。雀らしく、毎日をその日暮らしで生きていたひよが、ちゃんと主人公と一緒に働くようになる、という展開もいい。また2部ラストではひよが家族、子供を作ること、に憧れていることが語られるが、まだ子供だとして「あなたに抱きついたときにむずむずする理由」がわかるまではお預けだと言われるのも雰囲気があってよかった。

CVは藤咲ウサさん。言わずと知れたエロゲ界隈の人気声優。最近ではニコニコチャンネルやYoutube配信なども精力的に行っている。コロナで仕事がないのかな。

ひよの外見と藤咲さんの声の相性は抜群で、一緒にこたつでみかんを食べたり、お手玉をして遊んだり、童謡を歌ってくれたり、と魅力がたっぷり詰まっている。

紀州弁については若干の違和感があったものの、全体的に可愛らしく仕上がっていたと思う。

 

 

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コロポックル ~パロポロ~

 

2019年4月に発売された第三弾の作品。主人公は北海道出身、言わずと知れた有名な妖であるコロポックルのパロポロ。

音声作品としての特徴は石狩鍋の音、2つ目は川遊びの音。川のせせらぎの音って結構好き。

コロポックルはメジャーな妖で、特に茂伸に移住しなくても暮らしていけたのだが、友達である青森県の妖「砂撒き狸」が茂伸への移住を決意したときに誘われて、一緒に茂伸に引っ越してきた。狸については本編と関わりがあるので、この辺の演出がうまいと思った。北海道とは違う四国の夏の暑さにまいっていたところ、ご開祖ちゃんから冷蔵倉庫のある場所を案内され、その一角に住むようになる。ちなみにこの倉庫は、次回の作品に登場する妖が営むアイスクリーム屋の施設である。この作品以降、このように次回に登場する妖とのかかわりが少しだけ明かされることが多い。パロポロは「ポンポンアイヌ」というコロポックルの術が使え、それを使うと、人間のサイズをコロポックルと同じサイズまで小さくすることができる。パロポロはその術を使って人間を冷蔵倉庫内の自分の家に案内し、夏の茂伸で冬を味わうことのできる「いやしどころ・ひやしや」を経営していた。あなたはそこでパロポロのもてなしを受け、パロポロに気に入られる。また2部では、再び現れたあなたに今度は河原で術を使い、パロポロが意思疎通のできる、カエルや鳥に乗ったりして遊ぶ。あなたはパロポロに、新しい「癒し」として術を使ったフィールドアスレチックを運営することを提案する。パロポロはコロポックルの風習として旅に出た両親が恋しくて探していたが、あなたに会えたことでそれが満たされ、いずれはともに暮らすようになるだろう、という話。

有名な妖で消滅の危険がないと考えられているコロポックルでも、近年は昔ほどの力がなくなっているといった内容が語られる。パロポロは100歳ほどだが、人間換算で10歳ほどらしく、純粋な面が見られるのもよかった。

CVは浅見ゆいさん。18禁作品がNGなことで有名な同人声優さんで、透き通るような清純派の声が特徴的。収録後のインタビューで北海道出身ではないと語っていた通り、北海道弁またアイヌ語の発音に関しては少し違和感もあったが、パロポロのかわいらしいイメージに合うような声だったと思う。

 

 

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雪御嬢 ~ゆき~

 

2019年6月に発売された第四弾の作品。主人公は熊本県は球磨の山中に住まう、雪御嬢(ゆきごじょう)のゆき。

音声作品としての特徴は乾布摩擦の音、洞窟の音。

昔々、球磨の地に雪が降った時、その元凶として人々に想像され、畏れ敬われて力を得ていた雪御嬢だったが、近年の気候変化もあり、九州に雪が降るのはおかしいと人々が考えたことで力を失い、消滅の危機にあった。ちなみに雪御嬢には、雪や氷をある程度操る力はあるものの、天候を左右する力はない。そんなとき、ご開祖ちゃんからの手紙が届き、友人である「犬神(いんがめ)憑き」と共に茂伸への移住を決意するが、その名の通り、犬のように元気な犬神憑きは大土地のバス停につくや否や、ゆきを置いて走り去ってしまう。夏の暑さのせいで動くに動けず、バスの待合室から出られなくなっていたゆきは聞き手(あなた)と出会う。その後、あなたはクーラーのきいた車でゆきを山の中の洞窟まで送り届け、ゆきはあなたをもてなして、お互いにひかれあい、あなたはゆきと暮らしていける道を考えることになる、という話。前作を聞くと、人里離れた洞窟ではなく、文明の利器を活かしたクーラーのきいた部屋の中でゆきがアイスクリーム屋を営みながら暮らす道を見つけたことがわかる。

添い寝中に語られる、昔ゆきに吹雪を止ませるために贈られた生贄の女の子をゆきが逃がし、その後女の子は大人になって妊娠した姿を見せに再び訪れ、ゆきはその胎児の鼓動をきいて、家族というものを意識するようになった、という話がエモくて好き。

CVは鈴谷まやさん。今まで聞いたことはなかったが、結構古くから活躍されている方らしい。ゆきの持つ、おっとりとした雰囲気が良く出ていてよかった。熊本弁については、こちらも若干のイントネーションの違和感を感じるところはあったが、全体としての雰囲気はつかんでいたように思う。

 

 

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三吉鬼 ~サキ~

 

2019年7月に発売された第五弾の作品。主人公は秋田の山奥に住んでいた山鬼(さんき)、三吉鬼(さんきちおに)とも呼ばれるサキ。これまでのあやかしとは異なり、かなり格の高い妖で、古くは山神として祀られていたこともあったほど。

音声作品としての特徴はアイスマッサージの音、鍋の音。

古くからお酒と交換で山に入る人間を助けていたサキは、いつの間にか三吉様(サンキチサマ)という山神として祀られる存在となっていた。しかし時代の推移とともに人々の信仰対象が変化し、三吉様(ミヨシサマ)という城主を祀るものに変わっていった。(秋田の太平山に城主を祀っている三吉神社(ミヨシジンジャ)が実在する)。信仰を失い、力を失ったサキは、ご開祖ちゃんの誘いに乗って茂伸の山に移住することを決める。その性質上人間の事は気に入っていて、困ったことがあれば助けてくれる。

聞き手(あなた)は冬の茂伸の山に迷い込み、足を滑らせて崖から落ちそうになっていたところをサキに助けられる。しかし、そのとき足をくじいてしまったあなたは、山小屋でサキから看病ともてなしを受ける。人間という種族から、あなたという個人に興味の湧いたサキは、あなたとまた会う事を約束する、という話。

サキが個人に興味の湧くきっかけとなったのは、同じ鬼である「とおこ」が透という人間の旦那を持っていることだという関わり方がよかった。

サキはとおこにいつも相撲勝負を挑んでおり、サキがとおこを透をダシにして挑発したのをきっかけに2人が本気で取り組み、土俵が割れてご開祖ちゃんに1か月の禁酒を命じられている、という設定が細かくてよかった。

CVは歩サラさん。秋田出身の声優さんによる本物の秋田弁が聞ける。まあ、収録後のインタビューでわかりやすいようにかなり標準語を混ぜた、とおっしゃっていたが。そう考えると今までの声優さんの違和感も、方言をわかりやすくした結果なのかもしれないと考えた。私は方言女子とかには萌えないタイプなので、そこはどうでもいいのだが、普段標準語でラジオとかで話している声優さんの出身の方言が聞けるのはなかなかレアだと思うのでよかった。

 

 

 

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目玉しゃぶり ~ぺろ~

 

2020年2月に発売された第六弾の作品。主人公は滋賀県出身の目玉しゃぶりのぺろ。目玉しゃぶりとは近江の瀬田の唐橋に立ち、橋を渡る人に和紙に包まれた箱を渡す妖。橋を渡り終えたところにいる人に箱を渡すまで絶対に中を見ないでと言う言いつけに背いて箱を開けてしまうと、中には目玉と男性器がぎっしり詰まっており、それを見た人は高熱を出して死んでしまう、という伝承が、今昔物語集に載っているくらいメジャーらしい。

音声作品としての特徴は飴作りの音、歯磨きの音、アイマッサージの音。なお今作からフォーリーサウンドという手法を採用しており、それっぽい音ではなく、ふすまを開ける音、石畳を歩く音、など実際のその行為の音が収録されている。まあだからと言って臨場感が増すかと言えば微妙なのだが。

ぺろは住処を転々と変えながら暮らしており、定住できる地を求めて茂伸に移り住み、今は飴屋を営んでいる。聞き手(あなた)はたまたま買い物中のぺろと出会い、話の流れで飴作りを体験してみることになり、そのときに飴を歯にくっつけてしまったおかげでぺろの家にお邪魔させてもらい、歯磨きや耳かき、アイマッサージに添い寝といったもてなしを受ける。

飴屋に買い物に来る、なな様、ご開祖ちゃん、すみとえみ、の話がぺろから聞けるのは細かくてよかった。なな様は絶対に添加物入りの飴は買わず、ご開祖ちゃんは見た目重視でかわいい飴を選び、えみはきれいな飴を買いたがるが、すみは添加物の入っていない飴を買わせたがるという攻防があるらしい。またぺろは1500年くらい生きているらしいが、新しいものを試すのが好きという性格のせいで年寄りな感じが出ていないという設定が個人的に好きだった。人間でも年をとって新しいことを始めるのを敬遠するのはよくない。

また本作では目玉しゃぶりに対して独自の解釈が語られる。ぺろは昔、琵琶湖のほとりの村に住む人間で、人間の身体に興味があり、薬師を目指していた。昔の時代なので女が薬師になることはできなかったが、それでも旅の尼がぺろに医術を教えてくれ、村の祈祷師のようなものとして暮らしていた。そんなとき村に疫病が発生し、その原因を探っていたぺろは目玉と男性器に異常があることに気付いた。ぺろは疫病に罹って死んだ死体から目玉と男性器を取り出し、箱に詰めて岐阜に住んでいる尼に送り、原因を解明してもらうことにした。しかし、箱の輸送を頼んだ人が途中で箱を開けてしまったことから疫病が広がり、またぺろが妖だったという人々の考えのせいでぺろは本当に妖になってしまった。さらに「目玉しゃぶり」という名前を付けられてしまったせいで、目玉をしゃぶりたくて仕方がなくなってしまったが、その衝動は飴、「あめだま」をしゃぶることで抑制することができた。「あめだま」の中には「めだま」が含まれているから飴が代わりになるという日本独自の言霊の力を下敷きにした設定がよかった。さらに人間だった時の名前は思い出せなかったが、ある時小さな女の子にいつも飴をなめていることから「ぺろ」という名前をつけてもらう。1500年生きている割に名前が新しいのはこのせい。そんなぺろにあなたは、今の世の中なら、もう一度勉強しなおして医者になることも可能だということを伝える。また「目玉しゃぶり」の意味も世の中から変え、目玉をしゃぶりつくすほど勉強した、人間の目も妖の目も治せる眼科医になるのはどうかと伝える。ぺろは自分の生き方に新たな目標を見つけ、あなたに感謝する、という話。

この解釈についてはよくまとまっており、結構気に入っている。またぺろは前述の理由でいつも飴をなめているため、耳元で囁かれたときに飴が歯に当たる音がなんとも言えず心地よかった。

CVは古都ことりさん。ものべのの会社であるLose、その音声作品部門であるWhispのおかかえの声優さんで、他社の作品への出演はほぼないが、何とも言えずとろけるような声、特徴のある甘い囁き、ととても好みだった。近江弁についてはあまりなじみは無かったが、会話のアクセント程度に抑えられていたように思う。

 

 

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縄のうれん ~結~

 

2020年3月に発売された第七弾の作品。主人公は京都府出身の縄のうれんの結(ゆえ)。どうでもいいことだが「ゆえ」と言われるとどうしても「月」という字の方が先に出てきてしまう。

縄のうれんとは、夜道を歩く人の顔を縄で編んだのうれん(=のれん)でなぞってびっくりさせるあやかし。このあやかしも文明の発達による、暗い夜道の減少、藁文化の衰退により消滅の危機にあった。そのためご開祖ちゃんの勧誘に従って、茂伸へ移住して来て藁製品の販売を行っているが、茂伸でも藁製品の需要は無く、商品が売れずに貧乏な暮らしを送っていた。しかし、藁のようなしたたかな心を持つ結は決してあきらめず、路上で呼び込みを行っていたところを聞き手(あなた)と出会う。

音声作品としての特徴は藁を扱う音、鍋の音。囲炉裏の前で藁仕事をする音というのはとてもノスタルジーにクる。

あなたは結の熱意に負け、結の店で藁製品を作る体験をすることになる。そうしてできあがった卓上用の藁帚を結はほめてくれ、湯葉鍋をごちそうしてくれて煤竹を使った耳かきもしてくれる。あなたは結に藁製品を売るためにニッチな需要に切り込むべきだと提案し、フェイシャルマッサージ用やキーボード掃除用としての藁帚を売ることを勧める。また顧客から耳の写真を送ってもらい、それをもとにオーダーメイドの煤竹耳かきを作ってネット販売するアイデアも出す。またパソコンの操作に自信のない結のために一緒に仕事をすることを申し出る、という話。

この煤竹というのは、囲炉裏の煙で何十年とかけて燻された、梁に使われていた竹材を指すもので、現代では囲炉裏がほぼないため、高級品らしい。藁よりこっちのほうが儲かるのでは。というか藁の話なのに煤竹が出てくる時点で藁製品を売るのには限界があることがうかがえてしまう。

結は縄のうれん最後の生き残りで、それは結が名前を持っていることが関係していた。結は昔、縄のうれんとしての存在が消えかかっていることに焦って、普段はおどかさないと決めている小さな子供をおどかしてしまった。その女の子は驚いてこけてしまい、その泣いている姿に我慢できなくなった結は人に化けて、その子を助けてあげた。それで結は結という名前をつけてもらった、という話。このとき、「当時は全然うまくなかった」人化けをして、というセリフがとてもエモくてよかった。人外が人に化けて人を助ける、という話は大好き。

CVは花澤さくらさん。こちらも私は聞いたことがなかったが、結構色々なエロゲで主役級を演じられている。また収録後のインタビューで、自身が京都出身であることを明かされているが、それにしてはイントネーションに違和感があったように思う。ビジュアルの通り、やさしいお姉さん、という役柄がぴったりはまってとてもよかった。

 

 

 

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赤い靴の少女 ~メリー~

 

2020年4月に発売された第八弾の作品。主人公は神奈川県横浜に伝承をもつ赤い靴の少女、メリー。このキャラは少々異質で、あやかしというよりは都市伝説に含まれるのではないかと考える。元ネタは横浜の山下公園銅像のある、童謡にもなった赤い靴の少女。wikiを見に行くと、いろいろな説があるが、この話は俗にいう「定説」をもとにして作られたようである。

音声作品としての特徴は、ヒールを修理する音、靴磨きの音、タップダンスの音。靴磨きの音ってなんか落ち着く気がする。

メリーは歌の通り、宣教師に連れられてアメリカにわたり、そこで大切に育てられていた女の子。「定説」通り、メリーはアメリカに帰る宣教師の夫妻に預けられ、アメリカに渡るはずだったが、結核に侵されていて結局アメリカへ行けないまま死んでしまった。しかし、女の子はアメリカに渡って幸せに暮らしたはずだ、という人々の願いがメリーを形作った。しかし、文明の発達によりアメリカが、世界が、より身近に感じられるようになったことで人々の願いの力、想像の力が弱まり、メリーは存在する力を失うとともに、「アメリカで幸せに暮らす」という縛りが解けて日本に帰ってこれるようになった。メリーはご開祖ちゃんの誘いでもう一度存在を取り戻すため、日本の両親の墓参りをするために日本に帰ってきて茂伸へ向かうが、メリーの力は想像以上に弱まっており、メリーの象徴である赤い靴のヒールがポッキリ折れてしまう。そこに茂伸に靴工房をもつ聞き手(あなた)が通りかかり、メリーの靴を直してあげるという話。

メリーは靴を修理し、自分を励ましてくれたあなたに好意を抱き、あなたをデートに誘って終わり。

この話だけあなたが靴職人であることがはっきり明言されており、音声作品としては例外の、聞き手が自分ではないことがはっきりわかる、という異色の作品。アメリカが身近に感じられるようになったことによってメリーの力が弱まり、しかしその副産物としてメリーが日本に帰ってこられるようになった、という設定は好き。

メリーはアメリカ帰りというキャラ付けのためか、セリフにちょくちょく英語が混じるのだが、ルー語にしか聞こえないのでやめてほしかった。一応発音は日本語の英語なのでそこまででもないが。またセリフ回しが等身大の少女っぽくてすごくリアリティーを感じた。

CVは奏谷しはるさん。この人もWhispおかかえの声優さんで、この作品で初めて聞いたが、ウィスパーボイスがとにかく甘くて吐息たっぷりでとても気に入った。またこの作品は英語を除くと横浜出身という事で標準語なので特に方言はなかった。

 

 

 

 

以上となります。1か月に1本ペースで新しいキャラが出るので、聞くのと買うのが大変ですが、セール時にまとめ買いするなどしてなんとか対応しています。またある程度たまったら更新すると思います。

それでは。

 

 

 

P.S.

ものべのの書籍版「ものべの~そのごの・夏葉の七つの夏~」を買いました。内容は無印版の夏葉ルートアフターを描いたもので、夏葉と透がIAGSを治して再び茂伸に帰ってくるまでが描かれています。HE発売前に発売された作品なので違う展開になっているのではないかと期待していたのですが、HEでの夏葉アフターと全く同じ展開、主人公視点なので内容もほぼ同じと期待外れでした。一応夏葉視点での補足が入る場面も少しだけあります。これなら公式サイトでHEと一緒に買うとオススメだと紹介してほしくはなかったです。しかしこれでものべの関連コンテンツは全てやりきったと言えるのでそこは満足です。