shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題21

 

 

みなさんこんにちは、shanです。

今回は私の好きな瀬戸口廉也シナリオのゲームをプレイしたので紹介します。

 

それがこちら。

 

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2005年7月29日に、Le.Chocolat(制作自体は「CROSS†CHANNEL」などで有名なFlyingShine)から発売された「SWAN SONG」です。

[ Le.Chocolat ] - SWAN SONG

 

公式サイトのギャラリーがAdobe Flash Playerのサービス終了により見られなくなっているところに時代を感じます。

 

私のプレイする瀬戸口廉也作品最後の1本で、瀬戸口廉也については以前の記事で軽く紹介しています。よければどうぞ。

 

無題5 - shanの落書き帳

 

ちなみに制作に関わった会社はどちらも倒産し、今は残っていませんが、業務委託を行っており、過去作品を購入することは可能です。

 

 

 

シナリオゲーかつ、難解なシナリオであったため、今回も説明するのが難しくなっていますが、どうかご容赦願います。

 

鬱ゲーと呼ばれるだけあって、画面のほとんどが曇り空と雪で構成され、背景が黒いのも相まって暗い雰囲気がすごく良く出ていてよかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・攻略

 

本作は場面によって一人称が入れ替わる、いわゆる群像劇と呼ばれる手法をとっている。この手法は小説などではよく見かけるものの、主人公とヒロインとの恋愛という要素が重要になりがちなエロゲにおいては珍しい手法だと感じた。実際、シナリオ上で設定されている主人公以外の男とヒロインが付き合って、Hをするシーンが描かれたりもする。ただ、これは主人公とは別の男と付き合うヒロインが主人公に好意をもつ描写がないので、精神衛生上問題がなくてよかった。ただ鬱ゲーではあるため、レイプ描写は存在する。

一応クリア後に回想数を数えると、

柚香 4(うちレイプ1、数行で終わる短いもの1)

妙子 2(うち短1)

雲雀 2(うちレイプ1、主人公とは別の男1)

希美 2(うちレイプ1、主人公とは別の男1)

あろえ1 (うちレイプ1)

となっている。これを見ればわかるが、主人公が抱くことになるのは柚香と妙子のみである。

シナリオは細かい章に分かれているが、エンディングはNormalとTrueの2種類のみで、他は全てバッドエンドである。シュタゲのような途中下車方式と言えばわかりやすいだろうか。

2種のエンディングを全て合わせても、プレイ時間は全体で約6時間ほど。

 

 

・あらすじ

 

12月24日の深夜、とある山奥の地方都市に住んでいた主人公、尼子司(あまこつかさ)は、雪の降り積もる中自販機まで飲み物を買いに行って大地震に遭う。街は一瞬で崩壊し、地獄絵図となる中、主人公はとある倒壊した民家の中から、自閉症スペクトラム障害を持つ少女、八坂(やさか)あろえを救い出す。障害のせいで両親に捨てられ、唯一の肉親であった姉は瓦礫の下敷きになって間もなく息絶え、主人公はあろえの事を託される。避難先を求め、歩き始めた主人公とあろえは、猛吹雪で方向がわからなくなる中、古びた教会を見つける。中には先客である田能村慎(たのむらしん)がおり、やがて佐々木柚香(ささきゆか)、川瀬雲雀(かわせひばり)、鍬形拓馬(くわがたたくま)も避難してくる。6人はその教会で、崩れたスーパーから拾ってきた食料を食べ、身を寄せあって生活を始めるが、なぜか何日たっても雪は止まず、空は一向に晴れる気配がない。やがて物資が減っていく不安に耐えかねた彼らは、大地震によって水没してしまった街を筏を作って渡り、向こう岸にたどり着く。

向こう岸では人の姿を発見できたが、そこで女性をレイプしていた元警官に襲われる。必死に逃げ、新たな避難場所である学校にたどり着いた彼らは、そこにいた300人余りのコミュニティの中で集団生活を始める。しかし、そこでもコミュニティ外の人間とのいざこざ、そして物資の盗難、殺人が起き、人間の本質を目の当たりにする。

また、別のコミュニティとして「大智の会(だいちのかい)」という宗教団体が現れ、考え方の違いによりそこでもいざこざ、そして戦争へと発展していく。

 

なんだか説明するのが難しくなってきたので、あとは個別キャラのところで説明することにする。

 

 

・キャラ

 

f:id:shanxdl:20210213002256p:plain 鍬形 拓馬 くわがた たくま

 

最初に男キャラを説明するのは嫌だが、これはシナリオゲーなので男キャラがかなり重要な立ち位置になってくるし、そもそもこいつが一番シナリオを動かすので、こいつを一番最初に説明するのがいいような気がする。

 

最初は柚香、雲雀と共に教会に登場。2人と同じ大学に通う大学生で成人式イベントがあったことから年齢は20歳。後からのモノローグで、柚香に好意を抱いており、地震直後に柚香の様子を見に行ったところ、柚香とその親友の雲雀と出会い、行動を共にするようになったことが語られる。

キャラデザからわかるようにオタク気質で臆病者、自分に自信がなくおどおどとした性格。雲雀にはいつも足蹴にされている。正義感、感受性が強く、地震によって理不尽に死ななければならなかった子どもの死体や、物資がなく病院に並べられて死を待つだけの患者を見て強い憤りを覚える。決定的だったのは灯油を盗んでいた奴らを捕まえに行ったときで、彼はそこでレイプされている少女を助け、その少女が怪しげな宗教団体(前述した大智の会)から逃げ出してきたこと、のちにその宗教団体に属する母親(よくある宗教にのめりこんで理屈が通じなくなっているタイプ)が娘を取り返しに来て論理的な会話ができなかったこと、レイプされていた少女が心を閉ざして、助け出してくれた拓馬のことしか信用せず、その少女と一緒にいすぎて感情移入しすぎてしまったこと、などが重なって徐々におかしくなってしまう。最初は大智の会メンバーを目の敵にしていたのが、やがて彼らは理屈が通じないから人間ではないので殺してもいいという理論を展開するようになり、捕まえた女性をレイプしたり、自分と考えが異なる人物は同じ学校内のコミュニティに属していても排除しようとするようになり、最終的には他人を一切信用しなくなる。

 

物語中の中では一番「人間」らしいキャラであり、最初はただ純粋に被害者の側に立って苦しみを分かち合おうとしていたはずが、法律というルールがなくなってしまった世界において、それを自分という価値基準ではかろうとしてしまったために取り返しのつかないところまで間違ってしまったというとても分かりやすい話。

物事を客観的に見る重要性というものも学べるが、もし極限状態に陥った時にそれができる人が果たしてどの程度いるのかどうか。

 

Normalエンドでは学校内で起こった暴動と余震によって死ぬが、そのときのセリフから、自分自身の弱さに耐えられなかったことがわかる。

Trueエンドでは田能村に捕縛され、負けを認めて自主的に軟禁状態を続けるが、自分は負けただけで間違っていたわけではないと述べる。

 

主人公サイドを殺しに来る敵に回るため、ヘイトを買いやすいキャラだが、極限状態における「普通」の人間として描かれていたのではないかと思い、私自身はそんなに悪い感情は持たなかった。ただしNormalエンドで雲雀をレイプしたのは許さない。

 

 

f:id:shanxdl:20210213005103p:plain 田能村 慎 たのむら しん

 

主人公が最初に教会であった人物。両親と妹を地震で亡くし、自分は避難してきたと語る。大学卒業後フリーターとして働いていたと言っているので、年齢は24歳前後だと仮定する。実家は剣道場で、剣の腕がたち、容姿はチャラいが、穏やかかつ芯の通った物性格。言い争いはせず、陰口も叩かず、仲間をそれとなくフォローしながら何に対してもポジティブな姿勢を保ち、避難先の学校でもリーダー的な立場に選ばれる。しかし、大智の会と学校側とのコミュニティで、物資の補給先の縄張り争いの小競り合いが始まった時、攻撃するのではなく不干渉という立場を表明したことで副リーダーの鍬形をはじめとする過激派の怒りを買い、濡れ衣を着せられて殺されそうになる。しかし、持ち前の剣の腕をもってそれを撃退、鍬形に友達の情けで殺さないという慈悲をかけ、学校を去る。

このとき、雲雀に告白するのだが、そのシーンが最高にかっこよかった。それがこれ。

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田能村は雲雀に対して返事を要求せず、それどころか告白をしたその瞬間が一番輝いていて美しく、その瞬間に死んでもいいとまで思っている。その刹那的なきらめきが最高に自分に刺さって、めちゃくちゃによかった。

そもそもこの構図がすごくいい。血まみれの男が、自分だけの女の子に向かって笑顔でひざまずいてるシーンとか最高か??

雲雀が変に照れたりせずに自然体でいるのもまたよし。

 

雲雀はその告白に応え、2人はそろって学校を去る。しばらくは教会に戻り、2人で暮らしているが、そこに鍬形が追撃にやってくる。

Normalエンドでは迎撃に間に合わず、鍬形に逆に殺されてしまう。

Trueエンドでは、迎撃が間に合って逆に不意をつくことに成功し、鍬形を捕虜にして学校側との交渉を試みる。交渉は成功し、鍬形が仕切っていた自警団は解体され、田能村は再び学校のリーダーの座に就く。

 

「力」を持っていながら、極限状態においてもそれを乱用せず、本当に必要な時しか殺さず、また殺した相手には敬意を払う。まさに理想的な武人だと思う。しかしNormalエンドでは、その相手へのリスペクトを理解されなかったため、鍬形に殺されてしまうのが可哀想であったが、現実はきれいごとだけではないということだろうか。

そもそも一人だけ実家の家宝だった、とかで真剣の日本刀持ってるのがおかしいんだよなぁ。

 

f:id:shanxdl:20210213011450p:plain 川瀬 雲雀 かわせ ひばり

 

柚香、鍬形と共に後から教会に現れた人物。年齢は2人と同じ20歳。小柄で快活な性格で、気が強い。わがままだととれる発言をすることもあるが、芯は強く、人に媚びることをせず、ただ純粋である。そしてたまにバカが出る。また面倒見のいい性格で、あろえの世話をしてやったり、学校では子供たちや犬の世話もしている。人は分かり合えると信じており、Trueルートで鍬形を捕縛した際にさえ、まだ話せば分かり合えると思っているほど、悪く言えば子どもっぽい。しかし彼女の明るさは特に田能村をはじめとする多くの人の心を救っている。またたまに物事の本質を突いた哲学的な質問をすることもある。

Normalルートでは、鍬形によって捕まり、捕虜にされ、集団レイプをされてしまう。このシーンはかなり胸糞だが、その後、同じく捕まった主人公と一緒の牢に入れられたとき、汚れてしまったから1枚しかない毛布に一緒に入れないから使って、と譲るシーンは健気でとてもかわいかった。その後、そんなことは気にしない、寒いんだから一緒に入って温め合ってくれ、と言った主人公の対応もベスト。

その後、学校内で起こった暴動時に子供たちを救出し、一緒に逃げると主人公に言うが、多分死んでしまう。

Trueルートではレイプもされないし、雪解けが起こり始めた世界で、皆の楽しみを願ってひまわりの種を一面に植えることを提案する。

ここでさらっと山村暮鳥の詩「風景 純銀もざいく」が引用されるのが素晴らしい。こういうなんでもないところでしれっと文学作品を引用してくるのが、私が瀬戸口廉也を好きな理由の一つなのだ。

ちなみに田能村との純愛Hシーンは普通だった。

 

田能村とくっつくことが決まっているキャラだからかはわからないが、主人公と関係を持つ他2人のヒロインと比べてキャラの掘り下げが少なかったことが残念だった。

 

CVは榎津まおさん。聞いたことがなかったが、調べると古くから活動をされている大ベテランの方で、なんと今でも活動を続けているみたいだった。声質がハスキーなロリボイスと書かれていたのだが、まさにその通りで、特に公式サイトにあった販促インタビューボイスがかなり声的によかった。

 

 

f:id:shanxdl:20210213013909p:plain 佐々木 柚香 ささき ゆか

 

雲雀、鍬形と共に後から教会に現れた人物。年齢は2人と同じ20歳。いつも誰に対しても笑顔で、教会での生活では料理を担当し、皆の世話を焼く。また親友の雲雀のことをいつも気にかけている。主人公に対して最初から好感度が高く、筏で対岸に渡って元警官に襲われたとき、逃げる途中で主人公と2人きりになり、そのまま一夜を過ごした時にsexをする。その後は主人公の彼女のようにふるまうようになる。

実は重い心臓病を患っており、いつも吸入薬を持ち歩いている。昔はピアノを習っていたが、緊張すると心臓に負荷がかかるため、ピアノを辞めざるを得なかった。その辞める前の最後のコンクールで、当時神童と呼ばれていた主人公と出会い、主人公の服が汚れたために自分の服を貸すことになる。そこで聞いた主人公のピアノの腕に絶望し、それまでは悲劇のヒロインのように高揚していた心が一気に冷め、以降はピアノを辞め、人生に絶望しながら暮らしていた。そんな時、あの教会で主人公と再会する。

彼女はシナリオ中に何度か暴漢によって人質にされるが、その度に主人公が助ける。そこで主人公は初めての殺人を経験し、まるで自分を殺してしまったような奇妙な感覚に襲われる。主人公はその違和感を確認するために死体を見に行こうとするが、柚香はそれはだめだと言って、自分の身体を使ってまで主人公を止める。結局翌朝主人公が見に行くと、それはただの死体だった。

このシーンがなぜかすごく心に刺さってしまったので紹介してしまった。

 

主人公はシナリオ中、逃げ出したあろえを探している途中で大智の会に捕まってしまうのだが、柚香はずっと鍬形によって変わり果てていく学校の中で主人公の帰りを待っている。

その途中、鍬形によって柚香がレイプされてしまうと、完全にタガの外れてしまった鍬形によって大智の会への焼き討ちが行われ、どさくさで主人公が殺されてBAD ENDとなる。柚香がレイプされない場合、主人公たちは助かることになる。

Normalエンドの場合、柚香は鍬形を説得しようとするが失敗し、主人公をおびきだすために罠として拘束される。そして主人公と鍬形のバトルが始まり、それは唐突な余震による建物の崩壊、それによる鍬形の死によって終わる。

主人公も瀕死の重傷を負うが、雲雀とした約束のため、どうしても教会まで行かなければならないと述べる。柚香は満身創痍の主人公に肩を貸し、何とか教会にたどり着いたが、そこにあったのは天上が崩落した教会と、その下敷きになったあろえの死体、そしてあろえが完成させた、粉々になっていたキリストの像だった。主人公は「友達」の成果を見せるため、その像を立てるが、失血により目が見えなくなってしまう。

柚香は、今まで主人公の事を好きだと思っていたが、それはただ主人公の重荷になって、足を引っ張りたかった、今はピアノが弾けなくなってしまっていても、懸命に努力しようとする主人公の姿が眩しくて邪魔をしたかっただけなのだと語る。主人公はそれを赦し、やはり彼女を愛すると言う。

主人公は像の様子を見るように柚香に頼むが、柚香には像の良し悪しがわからない。主人公は柚香に、声が震えているのがわかる、泣かないでほしいと言うが、柚香は寒くて震えているだけだと言う。主人公は顔に涙が当たっていると言うが、柚香は雨が降っているのだと言う。柚香は主人公に死なないでほしい、1人にしないでほしいと言い、主人公は僕は絶対に死なないと言う。そうして主人公は死んでしまう。

ここの流れが最高に美しくて、このゲームはTrueルートよりNormalルートの方がきれいだと思った。

死なないでって言われて、死なないよって言って、死ぬ主人公とか最高過ぎるんだよなぁ...。その前の2人の会話もすごくきれいだった。ただキリスト教の像の意味はよくわからなかったが。

 

Trueルートでは、学校での暴動は起きないが、余震によって雪崩が起こる。柚香はなぜか全然好きではない、学校で飼っている犬を保護しなければならないと思い、犬を助けに外に出たところで雪崩に巻き込まれる。発見されたのは1時間後だったが、急速に冷やされたことで体が仮死状態になっており、一命をとりとめる。

柚香が急に犬を助けた理由についても、よくわからなかった。ここでは柚香は最後に「正しいこと」をしておきたかったのだろうという事で納得しておく。

 

Normalルートでの会話といい、柚香が主人公とのピロートークでどうせ何をしたって無駄なんだから楽しいことだけをして生きていればいいのに、ということを語り、それは絶望している人が言うことだ、と自分が無意識に世の中に絶望していたことを伝えられた里、となかなかのメンヘラキャラだった。雲雀にも、柚香と付き合う人は大変だろう、と言わしめている。だがそれがいい

 

CVは同名の佐々木柚香さんというらしいが、調べたところ、たかはし智秋さんらしかった。場面にあった落ち着いた演技と、Hシーンでただ声を大きくするだけでなく、引き算の演技がとても素晴らしいと思っていたので、納得。

 

f:id:shanxdl:20210213023627p:plain 乃木 妙子 のぎ たえこ

 

 主人公たちが対岸に渡った後、男たちに襲われているところを助けた少女。そのときは主人公たちのコミュニティに誘うが断られ、のちに敵対することになる「大智の会」の教祖「竜華樹(りゅうげじゅ)」であることが判明する。新興宗教として限られたコミュニティの中で教祖として育てられてきたため、今まで学校に通ったことがなく、箱入り娘のような言動をするときもあるが、洞察力に優れ、まるで未来を見通すかのような発言をし、その力で教祖としてあがめられている。年齢は10代後半だと思われる。

 

ちなみに教祖モードのときがこちら。かわいい。

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「大智の会」は、元々は会員制の占いを行う組織であったが、今回の地震が予知できるものであったとの情報をとある筋から入手し、その地震から人々を救済し、信仰を集めるために自作自演を行っていた。

基本的に来る者は拒まず、去る者は追わず、のスタンスであるため、主人公たちを襲った元警官を受け入れてメンバーとしていたことから、鍬形をはじめとする学校側の不信を買い、それが争いにつながっていくことになる。

この、罪を犯した後それを反省している人に対して、それをどうやって証明するのか、という問題はルールが崩壊した世界においてはとてもわかりやすい問題であると思った。

また、「大智の会」は末法思想を教えとしており、今の現世を末法とし、それを救済してくれるための弥勒菩薩の下生を願って徳を積み、善行を行う。弥勒菩薩の下生時に、弥勒菩薩の言葉を人々に伝える役割を果たすのが「竜華樹」であり、そのときの集まりを「竜華三会」と言う。この「竜華三会」に同席していた人々のみが、救済される、というものである。

仏教の考え方では、そもそも弥勒菩薩の下生は56億7千万年後に行われることが決定しており、その下生を早めてもらうために祈りをささげるのが「大智の会」のやり方である。会の人々はその教えを信じているため、奇異に見えることもあるが、そもそも信じる対象も世界的に認められている仏教の対象であるがゆえに、普通の仏教徒との違いを見出すことができず、新興宗教とか言われてもあまりしっくりこなかった。この話で描きたかったのは、価値観の違う人々との接し方、だろうが。

 

主人公は吹雪の中外に裸で飛び出していったあろえを追いかけるが、途中で転倒し、足を骨折して意識を失ったところを「大智の会」のメンバーに助けられる。あろえも同様に助けられており、そこで主人公は妙子の母親から、お告げに従って妙子との間で子供を作るように言われる。それに従うまで主人公はここから帰すことはできない、と。

主人公が妙子との性交を了承すると、やがて主人公が「大智の会」に入ることを決め、そこでBAD ENDになる。確かに「大智の会」は学校側との戦力差から、未来がないことは確定しているが、それでも主人公が妙子と幸せになっている以上、これはBADではないのではないかと考えた。

妙子を抱かないと、やがて「大智の会」の拠点が鍬形たちによって襲撃され、主人公とあろえはどさくさに紛れて脱出し、田能村と雲雀のいる教会を目指すことになる。

妙子は人々を最後までだましていることの良心の呵責に耐えられなくなり、信者たちに真実を打ち明けるが、それにより激昂した信者たちによって学校側に人質として差し出される。

Normalルートでは、「大智の会」の教えではなく、妙子個人を認めてくれていた信者の一派によって、人質からの脱出を幇助してもらえるが、最後まで罪を償うと頑固になり、脱出しない。そして学校で起きた暴動に巻き込まれて命を落とす。

Trueルートでは、自分に向けられた想いから逃げないことを誓い、学校から脱出し、さまよっていたところを主人公たちに出会う。そこで妙子は実は主人公の実の妹であることを明かす。この展開がめちゃくちゃとってつけたようで、全く気に入らなかったのだが、それはそれとして「おにいちゃん」と呼んでくれる妙子がすごくかわいかった。

Trueのエピローグでは信者からも「妙子ちゃん」と呼ばれ、人々の役に立つために料理の特訓をしている彼女の明るい姿が描かれる。

 

CVは北都南さん。言わずと知れた大御所。主人公に対して照れているときの演技、箱入り娘らしく、世の中を知らない純粋さ、がとてもよく表れていて、すごくよかった。

 

f:id:shanxdl:20210213172426p:plain 八坂 あろえ やさか あろえ

 

主人公が最初に出会う、自閉症スペクトラム障害を持つ少女。他人とのコミュニケーションが上手く取れず、他人の言ったことを繰り返してしまったり、突然どこかへ走っていったりしてしまう。毎日寝る前には珈琲を飲む、などひとつのことに強いこだわりや執着を持っているように見える。「バラバラに壊れたもの」を正確かつ凄まじいスピードで復元する能力があり、彼女が復元していたキリストの像、がNormalエンドでは象徴となる。

私は自閉症について詳しくないので、あろえの描写にどれだけリアリティがあったかわからないが、少なくとも障害を持っている、という雰囲気についてはうまく出ていたと思う。また、雲雀があろえの面倒をみてやるシーンが結構出てくるが、そのシーンは微笑ましくて好きだった。

全体的に物語への絡みが薄く、せっかく自閉症のヒロイン、という普通ではありえないような設定を出してきたのに、彼女の物語上の存在意義について疑問に思ってしまった。とある感想ブログでは彼女は「人と人とが分かり合えないことの象徴」であり、他人と同じものが見えているとは限らないことをわかりやすく伝えるための存在、らしい。そうなると彼女の存在そのものが何らかの暗喩めいたものになってくるわけで、難しいことはわからん! となった。

 

CVは草柳順子さん。こちらも言わずと知れたレジェンド。お声を拝聴したのは初めてだったが、思ったよりも高くてかわいい系の声だった。

 

f:id:shanxdl:20210213173520p:plain 尼子 司 あまこ つかさ

 

本作の主人公。年齢は柚香の1つ上という描写があるので21歳。父親は世界的な指揮者だが、女癖が悪く、主人公は産みの親の顔を知らず、また育ての親ともすでに離婚している。ピアノの才能があり、幼いころは神童と呼ばれていたが、12歳の時に出場したコンクールで上述した柚香との出会いがある。主人公は初めて自分のわがままを聞いてくれた柚香に感動し、お礼に服を返しに行くが、その途中で事故に遭い、右手の握力を失って、ピアノが思うように弾けなくなってしまう。しかし、現在でも右手のリハビリを根気よく続けている。瀬戸口シナリオにありがちな、人の心がわからない系の主人公で、沈着冷静で表情をあまり変えず、どのような事態に遭遇しても全てを客観視し現状を的確に把握する強靱なメンタルの持ち主である。

主人公の行動については、各ヒロインのところで語ったので、あまり話すところはないが、Normalルートで鍬形に捕まってしまった主人公が拷問として左腕を切断され、それでも柚香を助け出そうと右手に槍をガムテープで巻きつけて進むところや、最後まで鍬形を説得しようとするところ、柚香に看取られて死ぬ教会でも最期まで希望を捨てないところ、などこれまでの瀬戸口主人公に比べるとすごく前向きな印象を受けた。

主人公だけは地震が起こる前から右手のことで絶望しており、それでもあきらめずに現実に立ち向かう心をすでに持っていたことから、この物語においても一人だけ希望を持っていたのではないかと思う。人間らしくないと言えばその通りだが、私は個人的には好きな主人公だった。

Trueルートでは雲雀から渡されたひまわりの種を鍬形、妙子、柚香に配って回るが、それでも誰一人として分かり合えないのがこのゲームのらしいところだと思った。

 

全体を通して、このゲームの主題は人と人とは分かり合えない、という事であり、Trueエンドでありながらもメリバの様相を呈して後味悪く終わるのが個人的には好きだった。

 

 

・その他

 

こんなゲームなので、一つだけ自分でも考察をしておこうと思う。このゲームのタイトルである「SWAN SONG」とは、人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すこと、またその作品を表す言葉である。その由来はヨーロッパの伝承で、白鳥が死ぬ時に美しい声で鳴くと言われているからである。しかし、作品内ではこれについて、普段も醜い声で鳴いているのに、死ぬときにだけ美しい声を出すなんてことはありえない。人々もそれは分かっているが、わざと騙されているのだ、ということが語られる。

このゲームにおける「SWAN SONG」とはやはりあろえが作ったキリスト像であると思われる。だとすればあろえの存在は必要だったことになるのだが、それは置いておいて、結局あろえの「SWAN SONG」の価値がわかったのは主人公だけであり、人々には騙されてやるだけの価値もなかった、つまり最後まで他人との価値観の違いというものを明らかにしたのではないか、と考えた。

 

何を言っているのかわからないのでこの辺で終わり!

 

・最後に

 

本当にうまく言葉をまとめられず、また大した考察もできないので、支離滅裂ではあるが、雰囲気だけでも読み取ってもらえたらと思い、このまま公開しようと思う。申し訳ない。いくつか、ちゃんとした(?)考察ブログがあったので、気になった人は検索してみればいいと思う。

全体的な感想としては、Trueエンドが蛇足で、Normalエンドがきれいに終わる、珍しい例だと思った。終わりが見えている、閉じた世界という個人的に最も好きな設定の一つであり、その世界観に十分に浸ることのできた素晴らしい作品だったと思う。