shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題46

 

 

みなさんこんにちは、shanです。

今回プレイした作品はこちら。

 

 

タマユラミライ - Azurite

 

Azuriteより2019年5月31日に発売された「タマユラミライ」です。AzuriteはDMM GAMES傘下のブランドの1つで、個人的には処女作である「シンソウノイズ〜受信探偵の事件簿〜」が有名だと思っています。本作は同ブランドの3作目ですが、この作品以降新しい作品を出していないので、同じブランド名で作品を作るのはもう難しいのではないかと思っています。

個人的には、この作品は妖怪をテーマにした作品であり、また萌えゲーアワード2019で準大賞を受賞しているということもあって以前から興味がありました。

茉宮祈芹先生(由岐奈、みだり)とあめとゆき先生(花子、白)の2人作画ですが、絵柄を似せており違和感なく仕上がっている所も評価できると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・攻略

 

攻略ヒロインは4人。最初の3人を攻略すると白ルートの分岐が解放される。

プレイ時間は共通が6~8時間で、各ルートそれぞれ5~7時間ほど。

推奨攻略順は花子→みだり→由岐奈→白

回想数は

花子  4+1

みだり 4+1

由岐奈 3(内1回はフェラのみ)+2

白   5(内1回は授乳手コキのみ)+0

(+より後ろは本編クリア後のおまけで解放)となっている。

 

Hシーン数は各ヒロインでそれぞれ5回というのを売りにしていたのか、世界観の説明に尺を割いた由岐奈が割りを食って、本編中のシーン数が1回少なかったり(さらにおまけのボリュームも前の2人とほぼ変わらないので、そのせいで1回あたりが短くなっている)、白ルートをグランドエンドにしたせいで、その後でおまけHが解放され余韻がなくなるのを良しとしなかったのか、白だけ5回全てを本編中にねじ込まれているので1回あたりの尺が少なかったりしたのが残念だった。

 

 

・あらすじ

 

本作中では妖怪を指す呼称として、妖怪、妖異、怪異、妖異幻怪などが出てくるが、ここでは妖異として統一して表記する。

 

かつて、ヒトと妖異が共に暮らしていた地、深野市—―。外つ国から深野にやってきた魔法使いの末裔と名乗る高校2年生の主人公、夜羽睦季(よはねむつき)は、妖異の暮らしやすい町として国内外から妖異が流入してくるようになったこの地で、ルーン魔術を用いて妖異の関わるトラブルを解決したり、相談に乗ったりする「御役目」を担っていた。

名前が変えられているが、舞台は日本屈指の妖怪で有名な土地である遠野。後にも出てくるが、実在の場所を下敷きに話を作っているのは好感が持てる。

 

主人公はもう使われなくなった、山の中にある旧校舎を魔法使いの館として改造し、昔主人公に命を助けられたことから主人公を先生と呼んで付き従い、秘書のような役割をしている淫魔(サキュバス)の水晶石みだり(すいしょうせき美陀璃)と共に暮らしていた。また学校には、かつて猫川(ねこがわ、実際の地名)の主であったこともある、水虎(すいこ、中国における河童のような怪異、しばしば日本では河童と混同される)の猫天宮花子(ねこてんぐうはなこ)が、深野のカッパたちの主となって女子トイレに住み着いており、カッパたちを通して特に水の妖異たちの情報を主人公に教えてくれたりしていた。

夏休みのある日、主人公は花子から、山で長年縄張り争いをしていた経立(ふつだつ、年をとった動物の妖異、今作では狒々(ひひ))と人狼の話を聞く。元々深野の六神石山(ろっこうしざん、実際の地名は六角牛山(ろっこうしさん))には経立が主として座っていたが、100年ほど前に外国から流れてきた人狼が山に住み着き、それ以来2人は毎日のように喧嘩を繰り返してきたと言う。しかしとうとう人狼の寿命が近づき、弱った人狼は経立の攻撃から逃れるためにこの学校へ紛れ込んだというのだ。人狼は元々ヒトだったため、ヒトに化けるのがうまく、判別するのが難しい。しかし、弱った人狼は力の回復のためヒトを喰らう可能性があり、主人公は人狼を探すことになる。花子は女子トイレに入らないと姿を現してくれないため、主人公は天狗の隠れ蓑を使って他人の認識を阻害していたが、女子トイレから出てきたところを知らない女子に見つかり、不審者だとはたかれてしまう。彼女はものすごい霊力を持っていて、その衝撃をもろに喰らったせいで主人公は失神してしまうのだった。彼女は神掛由岐奈(かみかけゆきな)と言い、桁外れの霊力を持つがゆえに幼少期から妖異から力を狙われ続け、そのせいで一般社会から外れてしまった人間だった。しかし、唯一その事情を知り、同じく霊力を持っていて妖異を視ることのできる神掛蒔奈(かみかけまきな)にだけは心を開いていた。彼女たちは2人きりで「オツキサマ」という落とし物の人形を探しに、この深野の地に引っ越してきたらしい。主人公が由岐奈にはたかれていたころ、蒔奈は探し物を求めて山に入ってしまい、霊力の匂いから経立に見つかってしまう。必死に逃げる蒔奈は結界をすり抜け、「叶えたい願いを持つ者」「牙なき妖異」だけがたどり着ける主人公の住処、魔法使いの館にたどり着く。そこでは留守番をしていたみだりが蒔奈を出迎えるが、蒔奈は叶えたい願いに心当たりがなかったため、みだりは蒔奈を帰してしまう。一方主人公は由岐奈にはたかれた後しばらく気を失っていたが、警備員に起こされたことで目が覚める。しかし、まだ天狗の隠れ蓑を着ていたままだった主人公は、この警備員こそが人狼だと見破る。正体が見破られたことで暴れ出す人狼を主人公はルーン魔術を使って鎮圧し、自分はヒトを喰らってまで延命したくないが、経立に襲われるのは嫌だという話を聞く。そこで主人公はそのまま人狼を警備員としての役割につかせ、その代わりに学校に結界を張って経立の侵入を防ぐことにした。

しかし、蒔奈が経立から生贄の呪印を刻まれていたことをみだりから聞いた主人公は、由岐奈にはたかれたときに繋がってしまった霊的なパスを通じて、由岐奈を館へと招くように夢で呼びかけた。翌朝、由岐奈が蒔奈と現れた事で、由岐奈と蒔奈の間にもつながりがあることがわかった。主人公は2人の関係が親友なのに苗字が同じであること、2学期から転校生が来ることは知っているが、それは1人であるはずなこと、に違和感を覚える。主人公は2人に、魔法使いの役目は「調和をとる」ことであって片方に肩入れはできないため、経立からも理由を聞くために蒔奈に囮になってほしいこと、由岐奈の有り余る霊力を制御するため、および他の妖異から狙われにくくするためにどちらか1人だけを自分の弟子とすること、を提案するがどちらも断られる。

翌日、蒔奈は経立に襲われるが、主人公の渡していた身代わり人形のおかげで助かる。経立は人形を蒔奈だと誤認したまま、人形をもって蒔奈の囮になって逃げた由岐奈を追いかけ、ついに由岐奈を捕まえる。経立は由岐奈を持ったまま、人狼のいる学校へと向かい、自分が傷つくことをいとわないままに結界を壊そうとする。主人公は由岐奈を助けた後、経立をルーン魔術を用いて鎮め、その話を聞く。

経立は、最初はヨソモノの人狼のことを疎ましく思い、追い出そうと毎日勝負を仕掛けていた。しかし、人狼が故郷を追われ、居場所の無い身であることを知ると、勝負をして勝った方が山に住むことができるという約束をすることにした。妖異にとっての約束は魂を縛るもので、破ると消滅してしまうこともある、とても重いものだった。経立は、毎日勝負をして、その決着がつかなければ、約束を破ったことにならず、いつまでも2人ともが山で暮らしていけると考えていた。最初に喧嘩をふっかけた経立は意地になってしまい、また人狼も後に引けなくなってしまっていたのだ。そんなとき、人狼が寿命で死期が近づいていることを知った経立は、禁忌である人喰いを犯してでも人狼に生きてほしいと願い、由岐奈をさらったのだった。お互いの事情を知った経立と人狼は100年越しに始めてお互いを友と認め合い、和解した。人狼は余生をそのまま学校の警備員として過ごすことになり(妖異の余生は何十年もあることもある)、経立もまた有事の際に主人公を助けると約束を結んだ。この一件を通して、由岐奈は魔法使いというものに興味を持つようになった。

本作のシナリオは章ごとに分けられており、ここまでが1章にあたる。ちなみに1~3章が共通で、4~6章が個別である。それぞれのヒロインの紹介をしつつ、妖異としてのすれ違いの話や、安易に妖異を祓うことで解決しない主人公のやり方が描かれていてとてもよかった。妖異と約束が絡む話は個人的に外れが無いと思う。

2章は、由岐奈が魔法使いと間違われ、妖異から手紙を押しつけられてしまうところから始まる。由岐奈は主人公の元に手紙を届けに行くが、手紙は雨に濡れており、判別できなくなっていた。手紙の送り主が「ゴンゲサマ」(山神の遣いであり、鹿(シシ)が変化した村の守り神。村ごとに1体ずつおり、疫病や火事から村を守ってくれる)から誰かに向けたラブレターであることがわかった主人公、由岐奈、みだりは渡す相手を探すことにする。主人公の魔術で手紙と関係のある場所をダウジングし、ゴンゲサマの元恋人である、龍神の娘である媛神(ひめがみ)が祀られている神社を訪れるが、水神である媛神は、何百年も前に水場が干上がってしまったことにより力を失っており、媛神に会う事はできなかった。主人公たちは結果を聞きに来たゴンゲサマにいきさつを報告し、そこでゴンゲサマが、とある理由から媛神と別れてしまったという話を聞く。水の妖異と山の妖異は伝統的に仲が悪く、2人が恋仲であることは好意的に受け止められていなかった。さらに2人が一緒にいることで、お互いの力が弱まっていくことが分かった。媛神はそれでもゴンゲサマと一緒にいたがったが、ゴンゲサマは村を守るという自らのお役目との間で板挟みになっていた。そんな時、自分が守っていた村で火事が起き、ゴンゲサマは媛神に会いに行く途中で火事を未然に防ぐことができなかった。そのことを悔いたゴンゲサマは媛神に会いに行くことを辞め、お役目に生きる事を決めた。しかし、いまさらになって媛神がどうしているのか、消えてしまったのならその最期はどうだったのかを知りたいと思い、主人公に相談に来たのだった。主人公とゴンゲサマは水妖の代表として花子に事情を聞きに行くが、姫様は水が干上がった時に霧になってしまったというそっけない返事があっただけだった。

主人公は再び媛神の気配を感じた神社を訪れるが、御神体である鏡が何者かに盗まれていた。さらになぜか集まっていた水妖達から、ゴンゲサマが窃盗の犯人だと疑いをかけられ、ゴンゲサマが水妖の本拠地である川へ連行されてしまう。また主人公もゴンゲサマと一緒にいるところを見られていたため、山妖の側に立っていると共犯扱いをされてしまう。ゴンゲサマを連行された山妖たちも怒り、このままでは水妖と山妖による大戦が始まってしまおうとしていた。臨戦の気配を伝えに来た花子からそれを聞いた主人公は、まず山妖の説得に行く。そこで経立への貸しを使って山妖たちをなだめた主人公は、花子を水妖代表の人質として山に残ってもらい、経立にゴンゲサマの捕まえられている川へと運んでもらった。主人公は、霧となった媛神を呼び出し、事態を鎮めてもらおうと考えたが、魔法は成功するものの媛神は現れなかった。とうとう戦いが始まろうとしたとき、主人公が別件を頼んでおいたみだりが到着する。みだりは最初にゴンゲサマが主人公に渡した手紙をルーン魔術を使ってその場に拡散した。みだりと媛神は、手の届かない人を好きになってしまった、という境遇が似ており、例え想いが叶わないとしても、好きな人のそばにいつまでも居続けたいと願うのではないか、という仮説をみだりは主人公に話していた。その2つ目の仮説の検証のために、主人公は手紙をみだりに取りに行ってもらっていたのだった。ゴンゲサマの想いと、みだりの想いが共に重なってその場を満たし、サキユキという低級の怪異が1匹、ゴンゲサマの元に降り立ってきた。媛神は、話すこともできず、知能の低い怪異になってでも、ゴンゲサマのそばに居続けていたのだ。しかし、媛神にとって最後に見た手紙が、ゴンゲサマからの別れの文だったため、手紙に本能的な恐怖を感じ、今まで近づいてこられなかったのだった。みだりの力(本来魔力の少ないヒトが使うためのルーン魔術を魔力の多い怪異のみだりが使うのはよくない)で一時的に知能の戻った媛神は、これまでのいきさつについて語り始めた。

媛神も、ゴンゲサマといることで自分たちの力が弱まっていることはわかっていた。また、ゴンゲサマは、力が弱まっていることを心配した同僚のゴンゲサマと媛神のことでケンカをし、その結果片耳がなくなっているのだが、それも自分のせいだと考えていた。ゴンゲサマが自らの守護する村で火事が起きるのを許してしまったのは、媛神の手下の水妖が独断で村に放火したためであることもわかっていた。それらのことから、媛神もゴンゲサマに会わせる顔が無く、手紙を出すのも辞めてしまったのだった。やがて媛神の宿っていた湖は、龍神の力が失われていくのに伴って干上がっていき、小さな沼になった。そしてそこには、卯子鳥(うねどり、実際に卯子酉神社が遠野にある)という、来世でも添い遂げたいと願った恋人たちの魂がつがいの鳥となった怪異、を祀る縁結びの神社が建設された。しかし媛神に縁結びの力はなく、それでもヒトが頼ってくれることが嬉しかった媛神は、自らの生命力を削って人々の願いを叶えるようになった。やがて媛神の生命力が尽き、霧となってしまうとき、神社に集まっていた卯子鳥たちの力によって、媛神はサキユキ(1羽でいる黒い卯子鳥、本来は他人との縁を切ってしまう不吉な存在)として生まれ変わったのだった。

ゴンゲサマと媛神の事情を知った妖異たちは争いを辞めた。また、みだりが主人公へ抱いている気持ちに気付き、それについて相談されたゴンゲサマは、後悔をしても得るものはある、自分で自分を許し、受け入れる事だ、という助言をみだりに残した。これ以降、みだりは主人公に対して少しだけ積極的になれた。御神体の鏡を盗んだ犯人は花子であり、花子は元々媛神の一番の従者だったことから、媛神が消えるときまでそばにおり、媛神が生命力を削って人々の願いを叶えていることを誰にも言わない「約束」をしていた。また、自分から媛神の心を取っていったゴンゲサマを恨んでいたのも本当であり、今回の事はゴンゲサマへの憂さ晴らし兼主人公の力量を試すためにしたことだった。花子は、媛神が消える原因となった「恋」というものを知りたいと思っており、主人公が自分の恋人にふさわしいかどうかをテストするために今回の事件を起こした。また、今トイレに住んでいるのは、「この地の子どもたちをずっと見守っていたかった」という媛神の想いを受け継いだからだった。

新春(にいばる)(実際の地名は新張(にいばり))のゴンゲサマの片耳が、他のゴンゲサマとのケンカのために無かったり、ゴンゲサマが火を消すために火を食べるという描写は、そのまま「遠野物語」に乗っている話であり、伝承にアレンジを加える形で、オリジナルのキャラをうまく絡ませながら違和感のないシナリオに仕上がっていてとてもよかったと思う。

みだりが自分の気持ちに吹っ切れてから、みだりと主人公が腕を組んで歩いて帰るシーンがあるのだが、朝日を見て生命力を感じる主人公と裏腹に、目がくらみそうという感想になるみだりの対比がよかった。オタクは対比が好きなので。

3章はオシラサマの祟りを受けた一般生徒の悩みを解決するところから始まる。オシラサマとは東北地方で実際に信仰されている人形の屋敷神であり、定期的に遊ばせないと祟りで顔が曲がると言われている。主人公はどんどはれ(昔話)と方言に詳しかった、主人公の姉のような存在の小伯白(こはくしろ)と一緒に、オシラサマを遊ばせることで祟りを解決する。主人公は2章でのお礼として、花子から千早峰山(ちはやねざん、実際の地名は早池峰山(はやちねざん))の神域への入場チケット(本人曰くプール券)をもらう。また、ゴンゲサマからお礼として、神域に生える霊木の根を抜いて杖にしてもよい、との権利をもらう。弟子のための杖を必要としていた主人公は、神域に行くことを決意し、由岐奈、蒔奈、みだり、白、花子がついてくる。一行はまず神域の泉で泳ぐこととし、ここで誰の水着をほめるかでルート分岐が決まる。

その後主人公、由岐奈、蒔奈は山神様へ挨拶に行くことになり、山神様と邂逅したことで由岐奈は、魔法使いの御役目が、自らも含めた、世の中から外れた役目の無いもの同士を繋ぎ、縁を結ぶことだという事がわかる。さらに、霊木(木とヒトの娘が恋に落ち、2人が生まれ変わって1本のねじれた木となったもの。このままだと生育が悪くて枯れる)と対話し、由岐奈は自分が相手に踏み込むことを恐れていたが、霊木となった恋人たちが由岐奈を支え、助け合ってくれると約束したことで、1歩を踏み出す事ができた。由岐奈は杖を手に入れ、主人公は2人に魔法を学びたい理由について尋ねる。蒔奈は由岐奈を助けるためだと答え、由岐奈は自分を助けるためだと答えたことで、主人公は由岐奈を魔法使いの弟子として選んだ。魔法使いの役目である「調和をとる」ということは自己犠牲ではなく、お互いを救いあうことだと言うのが主人公の考えだったからである。

神域からの帰り、主人公と白は2人で夕暮れを歩きながら会話をする。主人公の周りに女の子がたくさんいて安心だという白の話を聞きながら、主人公は自分が白に執着していることを改めて自覚する。白は主人公の過去の過ちで命を失っており、その足元には影が無かった。主人公が白の姿を見つけてしまったため、白は成仏できずに現世に留まっているのだった。

ここで共通が終わり、OPが流れる。OPが終わるとすぐに個別ルートへ分岐する。

共通が大分長かったが、個別につながるヒロインの伏線を張り、ヒロインの本筋にあまり関係の無い妖異関係の話をオムニバス形式で挿入するという手法は、長さを感じさせず、世界観の構築、妖異という存在を活かした素晴らしいシナリオだったと思う。妖異を出すならこういう話がいいな、と想像していたことを外さない出来でよかったと思う。

 

 

・キャラ

 

 猫天宮 花子 ねこてんぐう はなこ

 

主人公の通う学校の女子トイレに住み着いているが、メイド服を着ているため「メイドの花子さん」と呼ばれている。その正体は中国から来た水妖「水虎」。日本のカッパたちがドMだったため、労せずしてカッパたちの主として上に立っている。昔は猫川の主として、覇権争いのために血みどろの争いを繰り広げていたが、媛神にケンカを売って返り討ちにされ、以降は媛神の従者として生きていくことになった。学校内のウワサに詳しいだけでなく、カッパたちを介したネットワークによって、主人公にとっての深野の情報屋としての側面も持つ。また、校長のテレビやパソコンを勝手に見ているため、現代の知識にも詳しい。不機嫌になるとデッキブラシで殴りかかってくる。

花子ルートでは、恋を知りたい、そのためにもっと自分を見てほしい、と言った花子に主人公が意識を向けるようになる。夏休みが明けて2学期になるが、花子が女子トイレを出て、学校中を主人公につきまとってアピールをしてくるようになる。しかし、主人公は白に対する未練から、花子の気持ちにまっすぐ向き合えない。そんなとき、校内で「恋踏み」という咒い(まじない)が広まっていることがわかる。これは想いを念じながら好きな人の影もしくは、その一部を入れた人形の影を踏むことで、恋が成就するというものだった。また、それを行う場所は卯子鳥神社が最も効果が高いという。主人公と花子はウワサを調査し、そこに呪術的な要素は何もないということがわかるが、何度も花子からの想いをぶつけられた主人公は、とうとう花子とまっすぐ向き合う覚悟を決め、花子と恋人になることにする。しかし、これはまだ形だけの関係で、恋を知らない花子に主人公が恋を教えるという体にする。

花子は自分の力を使って、自らの姿を他人にも見えるようにし、また主人公と同じクラスに転校してくる。しかし、主人公はどうしても白のことに踏ん切りがつけられず、花子を一番に見てあげる事ができない。それでも「恋を教える」と花子と約束した手前、主人公は花子とマクドナルドやネカフェでデートし、初めてのセックスを行う。また、花子は四六時中主人公とくっついていようとするので、主人公は離れている時間も恋には大切だと花子を説得する。その結果、花子は恥じらいを理解するようになる。

しばらく経ち、校内で新たなウワサが流れる。それは「カエセ」「オマエノセイカ」という声がどこからともなく聞こえる、というものだった。しかし花子はそのウワサに気付いておらず、主人公とセックスしたせいで媛神のように力が落ちてしまったのではないかと花子は悩むが、主人公は花子を慰める。ウワサの正体は、猫川でいまだ続いていた闘争から花子を頼ってきた妖異だった。しかし、花子の力が弱まっていたことから、主人公が花子を弱くしたのだと判断し、妖異たちは逆切れして主人公を襲ってきた。また、力の弱まった花子を食べて、その力を奪おうと花子も襲われてしまう。主人公は、猫川の問題を解決する案を出す事を約束して、一旦は妖異たちを追い返す。花子はこのまま主人公と恋をしていれば自分の妖異としてのアイデンティティを失うのではないかという気持ちで揺れるが、主人公が花子を安心させる。主人公は花子に恋の先である「愛」について教える。それはパートナーの喜びが自分もうれしいこと、そのうれしさを共有したいと思えることだと主人公は語った。主人公は策を用意して再び妖異たちと対峙するが、説得できずに再び戦闘になってしまう。主人公たちは押され、負傷してしまうが、主人公は由岐奈に頼んでゴンゲサマと経立をつれてきてもらっており、その力で妖異を威圧する。そこで、主人公は妖異たちに力だけでなく、知恵を使って作戦を練るという概念を教える。主人公と花子は2人で、猫川に対する愛と平和の気持ちが込められたルーンの水晶を、争いを終わらせる切り札として渡す。また、花子の力は弱まっていたのではなく、主人公に釣り合う普通の人間の女の子になりたい、という花子の無意識が作用して力を抑えていただけだった。しかし、愛を理解し、主人公からの気持ちを信用できるようになった今、花子は再び力を取り戻せたのだった、というところで終わり。

エピローグでは、より深く「恋」や「愛」について知るために、主人公との将来について楽しそうに語る花子が描かれる。

花子のキャラについての深掘りは共通2章で結構やってしまったので、個別ルートでは花子とのイチャラブに重点が置かれており、「恋」というものを理解していなかった花子が徐々に主人公に本当の恋をしていく過程が描かれているのがよかった。花子は人間ではないキャラのため、スレておらず、純粋で、健気で、一途であるということがよく描かれていてとてもかわいかった。

本編ラストについては、策を教えただけで猫川の問題は全く解決できていないというぶつ切りの終わりだが、それも花子が猫川で戦っていた過去とは決別した、という見方をとればまだ納得できる。まあ、猫川に対する愛もまだ残っている、という発言もあるのだが。

メカクレキャラとして設定されたからか、全てのCGの片目が隠れていたのは徹底していた。しかし貧乳キャラでありながら、一部CGでは乳の増量が見られたのは残念。

CVは杏花さん。個人的にはオトメドメイン以来の視聴。ラジオメイデンを聞いていたため、地声が全く異なっていることは知っているのだが、今回もどちらかというと風莉に近い声質だった。このキャラも風莉のように淡々としゃべる系のキャラなのだが、Hシーンのときに喘ぎ声でテンションが上がっているのにセリフで冷静にゆっくり目にしゃべるということで、テンションの高低が激しすぎて違和感があるところがあった。

 

 

 水晶石 みだり すいしょうせき みだり

 

魔界の淫魔(サキュバス)の貴族令嬢のお嬢様で、4人姉妹の3番目。淫魔なのに男性恐怖症で、Hなことが苦手で、搾精経験もない。淫魔なのでセックスはHなことではないが、キスや手をつないだりするのはHなのでNG。そのため一族の中では落ちこぼれで、人界への追放処分を受けた。長期間吸精を行わなかったことで飢餓状態に陥り、周りの生命から皮膚呼吸のように精気(=生命力)を奪う暴走状態になっていたところを、主人公が身を挺して助けてくれたことで、主人公に恋をする。しかし、淫魔にとって恋は禁忌である「死に至る病」であり、それは1人の人間からしか搾精しないことによりその人間を殺してしまうどころか、他の人間からの搾精を拒むようになるので自分も死んでしまうからだった。そこで、かなわぬ想いを抱えたまま、館に住んで主人公の秘書として身の回りのお世話をしたり、御役目の手伝いをしたりしている。主人公のことは「先生」と呼ぶ。一人称は「私(わたくし)」。夜の眷属(ナイトウォーカー)で日の光に弱いため、日中は日傘を差している。魔界での名は「ミランダ・リュスト」。

 

一人称をわたくしにして漢字表記(フリガナなし)すると、声優さんが読むときに1作を通して必ず少なくとも1回は私(わたし)になる問題は誰が悪いのか。自分は一人称わたくしが好きなので、これはフリガナを振ったほうが親切だと思う。大事なところで間違えて萎えるよりはいいので。

また、みだりは主人公に対して敬語で話すが、主人公からみだりへは敬語とタメ口が混じっていて違和感があったので、統一してほしかった。

 

閑話休題

 

ゴンゲサマと媛神の一件を通じて、自分も主人公との関係に積極的になろうと決めたみだりは、それを主人公にも伝え、主人公もみだりのことを意識するようになる。しかし、自分が主人公に恋をすることによる様々な問題が主人公に迷惑をかけることを考えて、まだ踏み出せない。2学期が始まり、主人公は妖異から相談を受ける。それは付喪牛村(つくもうしむら、実際の地名は附馬牛村(つきもうしむら))というところの淵に自らを「穢れた者」と称するナニカがいて、最近急に夜な夜な哭くようになったので、何とかしてほしい、というものだった。哭く、という行為には呪詛の側面がある可能性があるため、主人公は1人で調査に向かう事にした。その声の正体は、釜の付喪神で、昔付近にあった山寺にあり、徳の高い上人のお経をずっと聞いていた所、霊位を持つに至ったものであるとわかった。釜は妻と2つあり、2人が霊位を得てからは人に化け、上人たちと一緒に修行をしていたが、上人の死後、弟子たちの派閥争いによって妻の釜と離れ離れになってしまった。しかし最近、その山寺が廃寺になったというウワサを聞いたので、結局妻に会えなかった無念を憂いて哭いているのだということだった。このままだと穢れが溜まり、自らが祟り神になってしまうことがわかっているので、その前に祓ってほしいと釜に頼まれたが、主人公は自らを穢れた者だと思いながらも積年の想いを捨てられない釜の境遇がみだりと被ってしまい、祓う前に山寺の様子を見てからでも遅くはないと説得する。主人公たちが廃寺にたどり着くと、妻の釜も合流してきた。妻の釜は主人公と入れ違いに魔法使いの館に相談に来ていたが、みだりから主人公が受けた相談の内容を聞いて転がってきた、ということだった。妻に穢れを移すまいと、拒絶した夫の釜であったが、妻の釜は、一緒にいられるなら穢れてもよいと夫を説得する。妻の釜は、廃寺で夫の釜を何百年も待っていたが、廃寺の付近に溜まっていた霊位をため込んでおり、その力で夫の釜は少しずつ浄化されていった。よって、夫婦の釜は、浄化が終わるまで2つ一緒にどこかの寺に安置することに決まった。

この一件を経て、みだりも自分と釜を重ねていたので、主人公は、今のままの関係はみだりを緩やかに衰弱死させているのと変わらないとし、関係を変える決意をする。みだりは夫婦の釜を自分と主人公に重ねてしまい、館に帰ってからオナニーをしてしまう。そこにみだりとの関係性を進める相談をしに来た主人公が見てしまい、そのままなし崩し的に主人公はみだりに告白し、2人は恋人同士になる。

みだりには魔界にいる母から手紙が届いていた。その内容は、みだりの母も昔搾精を拒んで人界に放逐され、深野の1代目の魔法使いに助けられた経験があること、キスをしながら性交をすることで、淫魔は搾精できず、普通のヒトと同じようにセックスできること、が書かれていた。それからも2人は恋人として過ごすが、みだりは自分が禁忌を犯したせいで、これから先家族と会う事ができず、また祝福してもらえないのは寂しいという思いを抱えていた。主人公はそんなみだりを支えると誓い、みだりは家族に自分の事を打ち明けてみようと決意を固める。そんな時、みだりの母親から電話が入り、みだりの妹であるマリアンヌが家出をしたとの連絡が入る。みだりの母はみだりが恋をしてしまったことに感づいており、それを父と姉には話していた。それを聞いてしまったマリーが、大好きな姉に一目会いたいと家を飛び出してしまったのだ。しかし、許可なく魔界から人界に来ることは重罪であり、最悪の場合二度と来れなくなる可能性があった。主人公とみだりは魔法を使ってマリーを探すが、見つからなかった。しかし、マリーは魔界側の境界警備隊によって家に連れ戻されていた。主人公はみだりの抱える家族との問題を、由岐奈と白に相談することにした。白はみだりに対し、こう説得した。主人公を好きになった罪の意識から、家族に今までそのことを言えなかったのはみだりの罪である。人を好きになったことは罪ではなく、主人公を好きだから家族を切り捨てなければいけないのは間違っている。大切な人は1人でなくてもよい。そもそもみだりの自己評価が低すぎるのが原因の1つである。これによって、主人公からみだりの家族への挨拶と、みだりの近況報告を兼ねて、手紙を出すことにする。神様の書く手紙は、念が込められ、文字ではなく視覚イメージで物事を伝えられる動画のようになるため、ゴンゲサマに代筆を依頼し、由岐奈、蒔奈、白、花子も手伝ってくれて2人の思い出の地を巡る動画を撮影する。さらに卯子鳥神社では、主人公のサプライズで結婚式を挙げることになり、花子の頼みで山妖と水妖が集まってくれる。最後に手紙を家族の元に送るところで終わり。

エピローグでは、家族と仲直りできたみだりが、これからも2人で色々なことに支え合って対処していくことを誓いあうところが描かれる。

1人から吸精し続けると死んでしまうから、禁忌に設定されているはずなのに、キスをしていれば死なない(射精中ずっとという制限はある)というガバガバ救済だったり、フェラ中も吸精が働くが物理的にキスできないのに、何度もやっても主人公が割と平気であるという、程度の問題があったりしたが、みだりが可愛いのでセーフ。主人公の精力がヤバイのかもしれない。お嬢様キャラなのもイイネ。

巨乳でグラマラス担当なのに、お尻が小さいと表現されているところに時代を感じた。

結婚式でヒロインがヴェールを被っている構図は割と好きなので、それもよかった。神社なのに教会式で、ゴンゲサマがわざわざ主人公たちのために覚えた神父の誓いの言葉を読み上げてくれるのも胸熱ポイントかもしれない。

CVはくすはらゆいさん。特に語ることのないくらい、安定して素晴らしい。是非これからもゲームに出続けてください。

 

 神掛 由岐奈 かみかけ ゆきな

 

主人公さえ凌駕する桁外れの霊力を持つ一般人。また妖異の見える目を持つ(鬼見の力)せいで幼少期から疎まれ、世間から外れた人生を送ってきた少女。唯一妖異が見えることを共有できる親友の蒔奈以外には心を開いていない。しかしその内面は寂しがり屋で友情に篤い。同じく妖異の見える主人公と始めて出会ったことで魔法に興味を持ち、主人公の弟子となる。幼少期に深野に住んでいたことがあり、その時に無くしてしまった人形「オツキサマ」を探している。恋愛面には疎い。蒔奈と苗字が同じなのには理由がある様子。

魔法使いの衣装は、テンションの上がったみだりが自作したものであり、形から入った方が自分を暗示にかけて魔法が行使しやすいという主人公の考えに基づいたものである。杖はハリーポッターシリーズのようなワンド型の短いものを想像していたため、ロッド型の長いものがくるとは予想外だった。これはこれで可愛い。

 

 神掛 蒔奈 かみかけ まきな サブキャラ 由岐奈の親友

 

主人公は由岐奈のことを意識するようになり、由岐奈に対して思ったことを遠慮せずにいう事にする。主人公は由岐奈の魔法使いとしての修行に力を入れることにするが、由岐奈との霊的なパスをそのままにしていたため、ある日由岐奈と蒔奈とヤマウバの過去を夢で見てしまう。ヤマウバは山に住む人喰いの妖異だが、この作品に出てくるものは山神の関係者が崩れた姿であり、マヨヒガに住んでいて神通力も使う。幼少期、蒔奈が囚われていたマヨヒガの中に、同じくヤマウバに攫われた由岐奈がやってきた。由岐奈は幼いながらもヤマウバを約束で縛り、何とか食べられないようにしていたが、大人になったときにヤマウバに食べられる約束を結んでしまっていた。

由岐奈は主人公と魔法の練習をするうちに、主人公に少し心を開くようになっていた。しかし、蒔奈から夢を通じて主人公にコンタクトがあり、由岐奈のことをよろしく頼むこと、あまり時間がないこと、が告げられる。転校生の名簿が1人分だけだったことや、蒔奈を巡る由岐奈の認識の相違から、蒔奈が妖異であることには主人公は気付いており、由岐奈の「オツキサマ」探しを手伝うことにした。しかし主人公は、時が来ればこの問題は自然と解決するはずだと考えていた。

2学期が始まり、主人公は由岐奈と一緒に過ごす中で徐々に親しくなっていき、やがて2人は白の妹である小伯紅(こはくこう)に見つかって、主人公の実家に行くことになった。主人公は紅と、夏休みが終わったら実家に帰る約束をしていたのに、それをすっぽかして魔法使いの館に入り浸っていた。主人公は2代目の魔法使いがいなくなった後、その住処に残されていた赤ん坊であり、それを紅が引き取って育てていたのだった。白の遺影があったりと思い出が色濃く残るこの家で、主人公は夢に見た由岐奈の過去の事を詳しく聞こうとするが、どうしても聞けなかった。他人の過去に踏み込むということは自分の過去にも踏み入られることであり、主人公もまた、他人に近づかれるのを怖がっていたのだった。

そこに経立がやってきて、主人公に頼まれていたヤマウバの住処を見つけたが、最近ナニカが住み着いているようだと報告に来る。それを聞いて、経立、由岐奈、主人公は3人で住処に向かい、ヤマウバと交戦して主人公は由岐奈をかばって共に吹っ飛ばされてしまう。2人はそのまま穴に落ち、主人公は気を失うが、由岐奈は主人公と触れた影響で主人公とのつながりから主人公の過去を覗き見てしまう。主人公は幼少期、妖異の声は聞こえるが、姿は見えないくらいの霊力しか持っていなかった。ある日、主人公は1代目の魔法使いが封印した悪魔、フェレスの封印された箱を開けてしまう。それ以降魔法使いの後継者として認知され、妖異たちから狙われるようになってしまった主人公は、ある時妖異によって山に攫われてしまう。主人公がいなくなったことに気付き、事情を知っていた白だけが主人公を探しに山に向かったが、そこで足を滑らせて死んでしまう。以降主人公は、白を死なせてしまったことを自分のせいだと悔やみ、相手に踏み込むことでまた相手を傷つけてしまうことを異様に怖がるようになったのだった。由岐奈も同様に、両親を亡くしていることで相手に踏み込むことを怖がっていたが、主人公を好きな気持ちがそれを上回り、穴の中で主人公に告白する。由岐奈が探していた「オツキサマ」とは、父母の魂が込められていると伝えられてきた人形だった。さらに、由岐奈に今までヤマウバが干渉してこなかった理由は、由岐奈に初潮が来ていない=大人になっていない、からだということを明かす。主人公も由岐奈が好きになっていたが、返事をできないまま再び気を失ってしまう。蒔奈はずっと昔に村を襲わない契約としてヤマウバに捧げられた生贄の少女で、由岐奈はヤマウバに虐げられていた蒔奈を助けるため、ヤマウバとの会話の流れで人形(オツキサマ)=自分ということになっていたため、人形と蒔奈を交換することで蒔奈を助けながらマヨヒガを脱出していた経緯があった。2人は再びヤマウバを探し出し、対策を考えながらも魔法の練習やデートをしていた。主人公は、由岐奈に黙ってフェレスに調べさせていた「オツキサマ」の正体について知る。「オツキサマ」は元々2体で1つの人形の形の屋敷神で、神掛家で代々祀られていたことがわかった。1体は由岐奈からヤマウバの手に渡ってしまったが、もう1体のありかは不明であった。また2体そろうとよくないことが起こるとも言われていた。元々神掛家は霊位の高い一族であり、不吉を呼ぶこともあったため、村八分にされていた。村に飢饉があったとき、神掛家の人間を村人が殺し、その肉を食べるという出来事があった。その時、「オツキサマ」が力を分け与えたことで、神掛家の人間がヤマウバになり、村人の弾圧を逃れたという事だった。

由岐奈は主人公のいない間に、館で白の事故についての新聞記事の切り抜きを見つける。しかし、その日付は昭和21年と、今より70年も前の記事だった。また、由岐奈はゴンゲサマから、50~60年前に旧校舎を整備し、1代目の遺した魔法の資料から独学で魔法を学んだのは2代目である、という話を聞く。主人公の話では、それらをしたのは3代目の自分のはずであり、それらについて主人公に問いただそうとした瞬間、由岐奈は気を失ってしまう。それは初潮が来たためであり、由岐奈が大人になってしまい、タイムリミットがきた瞬間であった。それによって蒔奈が抑えつけてきた力が解放され、蒔奈がヤマウバに変化してしまう。主人公は由岐奈を実家に運び、紅に看病をお願いする。ここで、由岐奈の視点からは紅がずっとおばあさんに見えていたことが判明する。紅は本当は80歳を超えており、主人公視点ではずっと中学生のときのような感覚で接し続けていたということだった。由岐奈は主人公のいない間に、白から主人公のことについて聞く。主人公は2代目の魔法使いと同一人物であり、悪魔であるフェレスと契約して白を生き返らせる方法を探究するため、人生をやり直すことにした。また、悪魔への願いに白の蘇生を願わなかったのは、自分の力でそれを成し遂げたかったからだ、ということがわかる。白が今まで成仏しなかったのは、主人公から白への執着とは別に、白から主人公への執着もあったのだ、と白は語る。そして由岐奈は白から、自分のために主人公を譲ってほしいと試されるが、自分の恋心を肯定し、全てを受け入れることができるようになっていた由岐奈は、70年間その想いを伝えられなかった方が悪い、ときっぱりと白を拒絶する。例え何があったとしても、由岐奈には主人公に自分を選んでもらう自信が生まれていたのだ。

2人はヤマウバとの最終決戦に向かい、そこで蒔奈が神掛家の人間の肉を喰った側の人間であることがわかる。殺された神掛家の娘と蒔奈は親戚同士であり、自分がそれを拒絶したり、村人のすることに反対すれば、同じ目にあう事がわかっていたのだ。しかし、蒔奈が食べた、ヤマウバに変化した娘の肉は、蒔奈の中にとどまり続け、蒔奈が死んで霊体となった後、蒔奈の身体を乗っ取って復活を企んでいた。そしてヤマウバの力が強まるにつれて、蒔奈本体の器はヤマウバに乗っ取られ、由岐奈から取り上げた「オツキサマ」が、蒔奈自身の器となっていた。蒔奈=ヤマウバが由岐奈とした約束は2つあり、1つは蒔奈がした、ずっと由岐奈と一緒にいるということ、そしてもう1つはヤマウバが幼少期の由岐奈とした、大人になった時に由岐奈を食べること、である。蒔奈は、その2つの約束を同時に守るため、由岐奈の初潮が来ないように力を使ってきたが、蒔奈の力がヤマウバに乗っ取られつつある今、由岐奈は大人になってしまい、由岐奈を食べて永遠に1つになるという方法で約束を守ろうとしていた。

主人公たちは、2体で力を発揮するという「オツキサマ」の片方をヤマウバから奪い、2つを離す事で力を削ぐという作戦を立てた。由岐奈はヤマウバと対峙し、ルーン魔法を行使してヤマウバを撃退する。これによってヤマウバは一時的に蒔奈の人格を取り戻し、由岐奈はこれから何度だって襲ってくる蒔奈を撃退し続ければ、約束を破ったことにはならず、その間に蒔奈を救う方法を見つければよいと提案する。

これは由岐奈が始めて関わった妖異絡みの事件である1章と同じ方法であり、由岐奈がこれまでのことから学んでいることがわかって胸熱だった。

しかし、蒔奈は自分がこれ以上由岐奈の人生を縛ってしまうことを許すことができず、由岐奈を食べないと宣言することで自分から約束を破った。由岐奈が幼少期にヤマウバから蒔奈を人形と交換して逃げることができた理由は、前述のとおり由岐奈が「オツキサマ」を自分と同じようなもの、だと発言したからだったが、今回の会話の流れで由岐奈はそれを撤回する。すると由岐奈から取り上げた、蒔奈が宿っている「オツキサマ」と由岐奈とのつながりが消えて力が失われ、蒔奈は完全に本来の身体をヤマウバに乗っ取られることになり、消滅してしまった。

由岐奈とヤマウバが対峙している間に、主人公は別行動をとってヤマウバの住処に忍び込み、ヤマウバが元々持っていた2つ目の「オツキサマ」を盗もうと試みた。そして、住処に隠されていた人形を見つけて脱出しようとするが、蒔奈が消えて完全に復活したヤマウバが戻ってきてしまう。ヤマウバとの戦闘の中で、ヤマウバが主人公を「お前も人形として飼ってやる」という発言をしたことで、主人公が身代わりに用意していた自分の名前をルーンで刻んだ人形と主人公の区別がヤマウバにつかなくなり、主人公はそれをあげる代わりに永遠に住処から出てこないこと、を約束させた。

館に帰ってきた主人公と由岐奈は、ヤマウバから奪ってきた「オツキサマ」について調べることにする。「オツキサマ」とは、1代目の魔法使いが作った魔道具であり、意思を持っていた。元々は神掛家を守護する存在として作られ、その家族をヤマウバに変えたのは、村人に襲われて死にかけていた娘を回復させるための力を与えようという善意からだった。「オツキサマ」には、人間を食べて力を回復させることと、人間が他の動物や植物を食べていることの区別がついていなかったが、ヤマウバになっても人を食べたくないと苦悩する娘の姿を見て、それが間違いであったことに気付くようになった。今の「オツキサマ」の願いは、自分がヤマウバにしてしまった娘を元に戻す事であり、主人公は、ヤマウバが持っている主人公の人形に「オツキサマ」の思念を移し、ヤマウバが持っている元々は由岐奈のものだった「オツキサマ」と合わせて2体で神掛家の記憶を見せ続ける事で、ヒトであったころの思い出を取り戻し、元に戻るかもしれない、という仮説を立てる。「オツキサマ」は主人公に説得され、思念だけをヤマウバの元に送り、後には魔道具である「オツキサマ」の器だけが主人公の手元に残ることになった。主人公は、白を生き返らせるためには、白の霊体を移すことのできる霊力を持った器が必要だと考えていたが、主人公の力ではどうしてもそれを用意することができなかった。しかし、「オツキサマ」ならその条件を満たす事ができ、主人公はとうとう白を復活させることができる、という結論に達することができた。しかし主人公は、白を復活させようとはしなかった。輪廻の理を捻じ曲げる事が禁忌であることは主人公も理解しており、自らの手で白が復活させられることを納得することで、白を死なせてしまった責任を果たすことが主人公の目的だった。主人公は、白という過去に縛られるのをやめ、由岐奈との新しい未来に向けて、ようやく一歩を踏み出す事ができた。

由岐奈は、蒔奈を救えなかったことを後悔していたが、主人公は由岐奈に、由岐奈の中にある蒔奈のカケラを、主人公が白を生き返らせるために研究していた人形の中に移し、由岐奈の膨大な霊力を注ぎ続けることで、いつか蒔奈を復活させられるかもしれない、という選択肢を与えられる。主人公は白を復活させない、という選択をしたが、由岐奈がどういう選択をしても、自分はその結果を尊重するし、これからも2人で支え合って生きていきたいと語る2人のシーンで終わり。

エピローグでは、蒔奈の事件から1年後、蒔奈のカケラを人形の中に入れて使い魔とする選択をした由岐奈が、主人公と2人で魔法使いとして日々御役目を果たしている姿が描かれる。

蒔奈が妖異であることは共通ルートからずっと示唆されていたことだが、その結末を個別ルートラストまで引っ張るのは予想外だった。由岐奈と蒔奈とヤマウバの設定は複雑だったので、正確に理解していないことは容赦してほしい。

ツンデレキャラのテンプレとして、「べ、別に」とか「ち、ちょっと」、「あ、あのね」等語頭を繰り返す話し方をするのだが、その頻度が高すぎて吃音に見えるレベルだった。やり過ぎは逆効果だということを理解してほしかった。

由岐奈が魔法について興味を持ち、魔法使いの弟子になり、主人公の教えた魔法を思い出してヤマウバと闘うという成長がみられるのはよかった。

せっかく魔女っ娘の衣装があるのに、その服でのシーンがないのは本当にもったいないと思った。

CVは八ッ橋しなもんさん。始めて聞いた人だったが、Hシーンでの喘ぎ声が叫び声でギャグに聞こえるのと、Hシーン中の間の取り方、セリフの話す速度、に違和感があった。声を張らないときは可愛く聞こえるのと、ロリ由岐奈の演技がとても上手かったので、そっち方面の役でもう一度聞いてみたいと思った。

ちなみに蒔奈のCVは飴川紫乃さんだった。

 

 小伯 白 こはく しろ

 

主人公の姉のような存在。主人公には「白姉ちゃん」と呼ばれている。主人公のことは「むっくん」と呼ぶ。前述のとおりすでに死亡しており、幽霊(オマク)となって、主人公が1周目の人生で老化からガンになって死にかけ、悪魔と契約して2周目の人生を送ることになってから今までをずっと見守ってきた。幽霊も年月が経つと体が成長することもままあるが、白はなぜか70年間ずっと生前の姿を保ち続けている。よく方言の混ざった話し方をする。幽霊となっているが、生前も妖異の姿を視る事ができなかったので、今も妖異を視ることはできない。

 

 小伯 紅 こはく こう サブキャラ 白の異母妹

 

主人公視点で語られる時はこの姿だが、他の人の視点で語られる時は、80歳を越えた腰の曲がったおばあちゃんである。主人公のことは「お兄ちゃん」と呼ぶ。霊力はなく、妖異のことは信じていない。公式サイトの人物紹介では「本来学園へ通う年齢ではないが、特別に吹奏楽部へ参加することを認められている」とあり、共通1章で主人公が学園で会った時は、中学生だが吹奏楽の腕がいいので特別生として扱われているのか、と誤認させるような描写がある。実際は学園の元教師であり、OGとして特別コーチ扱いで吹奏楽部の指導をしているということだった。

 

白ルートは、由岐奈と蒔奈の問題を解決したが、由岐奈が主人公の恋人になっていない世界線で始まる。主人公の元には「オツキサマ」の器があり、由岐奈は主人公に頼れないので、蒔奈を復活させるかで悩み、主人公と疎遠になってしまっていた。

いつものように、町を歩いていた主人公の所へ白がやってくる。すると、白が陸に打ち上げられている所を助けた鯉の妖異が、恩返しにやってくる。妖異は「サダトウノハハ」と名乗り、子孫が心配で成仏できず、鯉になってしまった母親の妖異だと言う。この妖異はこの作品オリジナルの妖異であるようだが、「サダトウ」というのは遠野物語にも名前の出てくる平安時代の武将「安倍貞任」のことである。鯉は、天に昇って龍神に進化する前の格の高い妖異であり、おいそれと頼みができないため、用があるときに頼みを聞いてもらう約束をして、一旦は追い返す。

主人公は、「オツキサマ」を手に入れたことで白を生き返らせるかどうかを未だ決めかねたまま、白の未練を無くすために白とデートをすることになる。主人公は、白を生き返らせてしまうと、フェレスとした契約が達成されたことになり、魂を持っていかれてしまう。つまり、白と主人公が一緒になる未来はなく、自らの心にケジメをつけるためのデートでもあった。デートが終わり、白は主人公が白を自分の手で生き返らせる手段を見つける、という目的を達成したことに気付き、自ら主人公の元を離れて成仏しようとする。しかし、ここにきてまだ白に未練が残っていた主人公は、「白を幸せにする」という幼少期にした原初の願いを思いだし、その願いを叶えてからでないと成仏させられない、と白を説得する。そして、白を幸せにし、未練の無い状態で輪廻に還すために、2人は付き合うことにする。

2人はデートを重ねるが、白の一番の願いが「主人公を幸せにする」であることに気付く。そして、目的を達成し、白に対する執着が無意識下で薄れてきてしまった主人公を反映して、白の存在が不安定になっていく。由岐奈は蒔奈のことで悩んでいたが、主人公が自分との契約を破るのではないか、と危惧していたフェレスから、対立を煽るために、主人公が「オツキサマ」を白の復活に使おうとしているのではないか、と吹き込まれる。

白の存在は日に日に薄れていき、もうすぐ消えてしまうことが白と主人公にはなんとなくわかったが、このままでは白の未練が残っているので、白は輪廻に戻ることができず、消滅してしまうこともわかっていた。白の未練とは主人公をずっと見守っていたかった、ということで、「オツキサマ」に入って器を持った妖異になることは、主人公の死後に1人になってしまうので嫌だ、ということだった。主人公は、白が消えるまでの時間を何とかして伸ばすために、霊力を吸われ続けることを許容して白を自分へと取り憑かせる。また、主人公は今まで幽霊となった白の処遇を決断できず、唯一の家族である紅へ背を向け続けてきた人生であることを始めて思い返し、紅に対してどうして自分に2代目と同じ名前をつけたのか、どうして自分を2代目と同じ「お兄ちゃん」と呼ぶのか、ということについて尋ねる。紅は、1つは主人公の母(実際には2代目と主人公は同一人物なので存在しない)が主人公を見つけやすくするため、そしてもう1つは、主人公のことを2代目の生まれ変わりだと信じているから、だと語る。今まで主人公から聞かれるのを待っているうちに意地になって言いだせなくなっていたことをやっと口に出せた紅は、その安堵からか倒れてしまい、緊急入院をすることになる。

次にフェレスの過去が語られる。フェレスは1代目魔法使いに召喚され、共に過ごしてきた。1代目がフェレスとした契約は「このときがずっと続けばいい、こんなにも世界は美しいのだから」と思い、それを口に出すことで、フェレスはそう思わせるために1代目に永遠の命を与え、2人で世界中を100年ほどかけて旅をしてきた。旅の途中立ち寄った深野で、1代目はその地のヒトに恋をしてしまい、それが神掛家の始まりとなった。やがて1代目は、妻と一緒に老いていきたい、人生を共に歩みたい、という願いを持つようになり、永遠の命を破棄するためにフェレスを封印した。フェレスは主人公に封印を解かれ、次は契約を破棄されないように主人公の魂を狙っているということだった。

紅の容態は今晩が峠となり、主人公と白は病院に向かおうとするが、そこにゴンゲサマと花子がやってくる。その内容は、外来の新参者の妖異「ジャイアント」が川の魚を食い荒らして困っており、また知能が低いので話し合いができない、というものだった。また元々山に住んでいたジャイアントが川に向かった理由は、白と約束をして、白に呼ばれるのを待って川で待機しているサダトウノハハが持つ力に引き寄せられているからであった。以前の話で、主人公は白にサダトウノハハの生き血には心臓病を治す力がある、という話をしてしまっており、白は紅に対して生き血を分けてもらうことを考えており、サダトウノハハを助けに主人公から離れて単独で川に向かってしまった。ジャイアントは周りの生命力を吸う形で食事をするので、器のない白の身が危険であり、主人公たちも川へ向かう。ジャイアントと対峙した主人公は、魔法を行使してジャイアントを鎮めようとするが、フェレスの妨害にあって負傷してしまう。見えないながらも必死に負傷した主人公を守ろうとする白の声を聞き、サダトウノハハがジャイアントに川の魚を食べてはいけないことを魂に刻んでくれたおかげで問題は解決する。これで借りは返したというサダトウノハハを何とか説得し、自分と白の境遇が似ているから、という理由で生き血を分けてもらい、白はゴンゲサマと共に病院へ向かい、紅を生き返らせることができた。一方重傷を負った主人公は、フェレスの妨害に気付いており、フェレスと話をするために1人で館へ戻る。

白は三途の川まで紅を迎えに行き、そこで紅と話をする。白は、紅を自分と主人公に縛り付けてしまい、独身のまま人生を終わらせてしまったことに負い目を感じていたが、紅は自分の人生を後悔などしていない、と白を赦す。紅も主人公のことが好きだったことに白も気づいており、死んでからも主人公の気持ちを自分が奪ってしまっていたことにも白は罪の意識を感じていたが、紅はそれも赦してくれる。紅は白の持ってきた生き血によって一命をとりとめ、また話をしたことで、紅から白に対する未練や、白から紅に対する未練が解決され、白は未練を1つなくすことができた。

一方主人公は、館でフェレスと対峙し、自分より白との愛をとったのだ、と早とちりして攻撃してくるフェレスの攻撃をわざと受ける。主人公はフェレスに、自分は白を成仏させてあげたいだけで、白と一緒になる気はなく、また正当な報酬としてフェレスに自らの魂を渡すつもりだったと語る。フェレスの攻撃で主人公は致命傷を負ってしまったが、フェレスはまた1人になるのが嫌で、主人公に消えてほしくなかったので、自ら契約を破る宣言をすることで、主人公の傷を治そうとする。そこに由岐奈が現れ、新たにフェレスと契約を結ぶことでフェレスの消滅を防ぎ、代々の魔法使いがフェレスと契約を結ぶことにすれば、フェレスは永遠に1人にはならない、とフェレスを説得する。フェレスは魂を回収できないので、力を取り戻すことができず、魔法使い側にも力の失った悪魔を使い魔にするメリットがない、という双方損をする契約を、フェレスを助けるために由岐奈は結ぶことにした。さらにフェレスから、主人公が自分の封印を解けた理由は、主人公の魂が輪廻を経て戻ってきた1代目の魂と同一だからだ、と明かされる。

主人公は、白の未練を無くすために動いていた日々の中で、密かに書き上げていた魔法の教科書を由岐奈に託し、傷の治癒を拒んで白と旅立つことを決める。主人公はフェレスから魔法の言葉を聞く。1代目との契約だったその言葉は、同じ魂である主人公にも有効で、それを唱えればフェレスとの契約は破棄され、主人公にかかっていた魔法が解け、主人公は一瞬にして年をとって消滅するだろうということだった。白は紅との会話を通して、また紅がたどってきた人生をずっとそばで見守っていたことにより、自分も限りある生を生きてみたいという欲が生まれた。また主人公も、白と一緒に人生を過ごしたい、という気持ちが強くなり、白に対する未練は完全になくなった。2人は卯子鳥となり、魂を浄化する輪廻の旅に出ることにする。最後は精霊たちに祝福されながら、2人で文言を唱えて消えるところで終わり。

エピローグでは、1年が経ち、新米魔法使いとしてゴンゲサマやみだり、花子、フェレスの助けを受けながら御役目を頑張っている由岐奈の元に一対の卯子鳥がやってきて、由岐奈はそれが主人公と白であることに漠然とした確信を抱き、2人に思いをはせるところで終わり。最後に主人公と白らしき2人の赤ん坊が寝かされているCGが流れる。

白にとってはこれしかないような綺麗な終わり方だが、完全に由岐奈ルートが前座のような扱いになってしまったところが残念だった。また、主人公と白の生まれ変わりの赤ん坊が並んで寝ているところは、姉弟として生まれてきてしまったので結婚できないのではないかと考えてしまった(実際には多分そこまで考えられていない)。

幽霊になってしまったことで、紅に対する想いを伝えられなかった白と、白の仏壇で祈りながら心の中で白に想いを伝えており、実際には白に届いていなかった紅が、紅の死に際になって邂逅を果たし、想いを伝えることのできたシーンはよかった。また、紅は白の存在を何となく感じることがあったと明かし、また主人公の存在も生まれ変わりだと直感で理解していたことから、今まで生きてきた人生の積み重ねもあって、妖異と老人の組み合わせはやはり最高だと思った。

主人公の1度目の人生で、段々年老いていく主人公に対して小さいころと変わらず接し続けたり、心配しつつも決して主人公がやることを止めないところが、ずっと主人公を見守り続けている感じが出ていてとてもよかった。

物語の序盤で出てきた卯子鳥や、ルート序盤で出てきたサダトウノハハの伏線を回収し、きれいにまとめているところもよかった。

CVは杏子御津さん。「あんず」姓の声優さんが同一作品に2人出ているのは珍しいのでは?そもそもこの2人以外いなさそう。

ロリキャラとして定評のある通り、安定感があってとてもよかった。

ちなみに紅のCVは鈴谷まやさん。

 

・おまけ

 

本編発売から約1年半後の、2020年11月27日に花子とみだり、2020年12月25日に由岐奈と白の音声作品が発売されている。

本編をやっていなくても、基本的なキャラ設定は説明されるようになっているが、もちろん本編攻略後を推奨。個人的には本編を攻略後の、アフター的な会話がもう少しあるとよかった。また、この手の音声にありがちな、主人公のセリフをヒロインにオウム返しさせることで表現する手法はリアル感が損なわれて好きではないのだが、意図的に抑えられている(ゼロではない)印象があって、よかった。1本あたりの長さはそれぞれ80~90分程度。

 

〇花子

薬で眠らされ、妖異のための温泉宿に拉致される話。主人公が起きると横で花子も寝ている。そこから足湯に行って膝枕で耳かき。その後お風呂に行って、花子は服を着たままご奉仕という事で主人公を洗ってくれる。ASMR要素はシャンプーの音。最後に部屋に戻ってフェラからのH。

花子が400年前に深野に来たことが話される。具体的な年数については本編では言っていなかったように思う。また花子がメイド服を着ている理由については、自分は水神の御使いで、それは侍女のようなものだから、ということと、男の子はメイド服と制服が好きなので、主人公の気を惹きたかったから、ということが語られる。

主人公の呼び方は「ダーリン」。音声作品では視聴者=主人公という構図になるため、本編中とは異なり、二人称に固有名詞を使わないことが多い。個人的には、本編の延長で聞いているのだから、主人公の名前で呼んでもらっても気にしない。

 

〇みだり

御役目を終えて館に帰ってきた主人公を、みだりが制服エプロンで出迎えてくれる話。おかえりのキスをして、それから膝枕で耳かき。疲れた主人公に添い寝と子守唄。最後に耳舐め手コキからのH。

子守唄では「ゆりかごのうた」が歌われるが、子守唄の中では個人的に一番好きなので、よかった。みだりは、いつか主人公と自分の子どもに唄ってあげるために、日本語の歌を覚えたのだと語る。また、添い寝パートはヒロインの寝息のみが聞こえるものが多いが、寝言パートが多いのは意外だった。寝ぼけたみだりが主人公を胸に抱くのが本編中と同じ展開なのも、本編の補完のようでよかった。みだりは普段は一人称が「私(わたくし)」だが、主人公に甘えるときにたまに「みだり」になるのが可愛かった。

主人公の呼び方は「先生」。くすはらゆいさんの声は最高だが、耳ふーがへたくそのなのもそれはそれでかわいいからヨシ。

 

〇由岐奈

主人公との恋人1周年記念で、川でピクニックデートをする話。主人公の希望で、メイド服を着てご奉仕してくれる。お弁当をあーんして食べさせてもらった後、膝枕で耳かき。館に帰ってきてマッサージからのキスをしてH。

お弁当を食べさせてあげるとき、主人公が言った「おいしくなーれ♡」の魔法を、本当の魔法だと勘違いしてしまう由岐奈が可愛かった。膝枕から誤って川に落ちてしまい、腰を痛めてソファで寝ている主人公に、由岐奈が湿布を調合してくれるシーンがあるのだが、薬研の音が入っており、音声作品的にはレア音源ではないかと思った。イチャイチャシーン中に、意識して抑えていないと好きが口から溢れてきてしまう、という由岐奈のセリフが可愛かった。

主人公の呼び方は「あなた」から「旦那様」。特にHシーンでは、エロゲ本編をプレイしているかのようにセリフがブツ切りで、音声作品用のシナリオになっていないか、つなぎの演技が上手くないのだと思われた。そもそもHシーンの演技が上手くないのだが、H抜きでイチャイチャしているときの演技は本当に可愛かったので、諸説。

 

〇白

ゴンゲサマに頼んで衣装を用意してもらい、主人公と1日ウエディングから新婚さんごっこをする話。誓いのキスから、新居(小伯家の地下室)に移って膝枕で耳かき。お風呂で主人公を洗ってからのヘアブロー。最後にパイズリからのH。

お互いのやりたいことをするということで、主人公は耳かき、白は一緒にお風呂をお願いする。なお、お風呂に入るとき、白はスク水着用。主人公に膝枕をしてあげているとき、白は生きているときも、小さかった主人公によくしてあげていたこと、白の耳かき技術はその時主人公相手に培われたものであることを話す。また、本編中では明確に言葉にしていなかったが、昔からずっと主人公のお嫁さんにしてほしかったことが語られる。

主人公の呼び方は「あなた」。由岐奈と被るが、由岐奈は単なる二人称としての「あなた(you)」という意味合いだったのに対して、白は夫を呼称する日本語としての「あなた」を使っており、言い方が違うのがわかって面白かった。

 

 

・音楽

 

本作はOPと通常ED、グランドEDの3曲がある豪華なものとなっている。またBGMとOPと通常EDは私の好きなボカロPであるデッドボールP(槇タケポン名義)が作曲しており、とてもよかった(年がばれる)

3曲とも素晴らしい出来だと思うので、是非聞いてみてほしい。また、OPは由岐奈の声優の八ッ橋しなもんさんが歌ってみたverを自身のYouTubeチャンネルにアップしていた。

 

・終わりに

 

妖怪をテーマとした作品という触れ込みの中、ヒロイン4人中妖異は2人(1人は幽霊なので実質人間)という、当初思っていたものとは違うものだったが、特に共通ルートでの妖異との話が素晴らしく、話し合いで解決するということで私の好きな夏目友人帳みを感じるところもあった。また、経立と人狼、ゴンゲサマはその章にしか登場しないキャラではなく、全編を通して主人公の味方として登場してくれるキャラであったこともよかった。

妖怪をテーマとして今まで私がプレイしてきた他の作品に引けを取らない、満足できる作品であったように感じた。