shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題33

 

 

みなさんこんにちは、shanです。

少し久しぶりの投稿となりますが、今回紹介する作品はこちら。

 

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失われた未来を求めて

 

2010年11月26日にTRUMPLEから発売された「失われた未来を求めて」です。略称は「われめて」。

「冴えカノ」で有名になった深崎暮人先生が原画を担当している数少ない作品のひとつであり、2014年10月にはアニメ版が放映されていたことからも、知名度のある作品だと思います。また本作は、同じ制作陣で2008年に作られた「水平線まで何マイル?」という作品と世界観を同じくするようです。

ちなみにこの作品を制作したTRUMPLEという会社は、この作品を処女作として、解散してしまっています。公式サイトを見に行くと2019年に復活したという告知がなされていましたが、2021年9月現在でそれ以上の情報は無いようです。

 

本作はタイトルからもなんとなくわかる通りタイムリープものであり、タイムリープものには傑作が多いという法則からも、気になっていた作品でした。

また、本作でヒロインの一人を担当している民安ともえさんが、今でもたまに声のオファーで本作で演じたヒロインのような演技をしてほしいと言われることがある、と自身のYoutubeチャンネルで言っていたことも印象に残っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・攻略

 

攻略対象ヒロインは4人だが、シナリオが一本道で攻略できる順番が決まっている。

具体的には、佳織→愛理→凪沙→ゆいの順。

あらすじに絡んでくるので細かくは後述するが、シナリオの流れはこんなかんじ。

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最終目的と真ヒロインが決まっており、それ以外のヒロインは途中下車していくタイプのシナリオで、上図でいう「another」エンドがそれにあたる。

 

総プレイ時間は15~20時間ほど。

回想数は

佳織 3

愛理 3+1(BAD)

凪沙 4

ゆい 4(+オナニー1)

 

・あらすじ

 

2008年10月1日に物語は始まる。内浜学園天文学会(文化部のことを部ではなく学会と呼ぶ)に所属する高校2年の主人公、秋山奏(あきやまそう)は10月17日に控えた総合学会(文化祭のこと)に向けて、学生会からの依頼を受け、頻発する運動部と文化部の争いを諫めるための校内の治安維持活動を行うことになった。その日の夜、校内に残っていた主人公と、高2の幼馴染で天文学会副会長の佐々木佳織(ささきかおり)は、謎の地震に見舞われ、安全のために校内を見回った結果、謎の全裸美少女を発見する。少女は古川ゆい(ふるかわゆい)と名乗り、自分は高校1年で最近転校してきたのだと説明する。ゆいは初対面の主人公を知っている素振りを見せるが、その気持ちを押し込める様子を見せる。また、自分が裸でそこにいた理由については語ろうとしない。翌日からゆいは天文学会に入部し、天文学会は治安維持の傍ら、部の活動として「校内に現れる幽霊」「眠り病」「事故多発地区」の3つのうわさについての調査を行っていくことになる。

どのうわさを調査することになるかは、各ヒロインのルートによって異なるため、後述する。どのルートでも主人公たちはうわさを調査しながら総合学会に向けての準備を進めていく。そして10月14日、佳織が事故に遭う。佳織は意識不明の植物状態となり、その生命の維持には莫大な費用が掛かることになった。また、時を同じくして、ゆいが主人公たちの前から姿を消す。絶望に落とされた主人公だったが、高2で、天文学会会長を務める支倉愛理(はせくらあいり)と、高3の先輩である華宮凪沙(はなみやなぎさ)が希望を持ってくる。それは、なぜか部室に置かれていた、オーパーツと言えるAIユニットを用いて佳織の記憶をその機械に移し、体の代替とするための研究を行う、というものだった。2022年、研究は失敗し、佳織の記憶を移すことはできなかったが、その代わり生体ユニットを生み出すことができた。研究を続けていた主人公と愛理は、その少女型ロボットを「古川ゆい」と名付け、佳織を助けるために彼女を過去へと送り込む。こうして佳織を事故という因果から救い出すための闘いが始まるのだった、という話。

 

以下物語は主人公がゆいと出会う10月1日から、佳織が事故に遭う10月14日までをループすることになる。タイムリープもののお約束として、過去の改変には「因果の鎖」という辻褄を合わせる力が働くため、ゆいはそれをなるべく発動させないように事故の瞬間までは前回と異なる行動をとらないことが求められる。そのため物語が非常に単調になり、同じことの繰り返しになってしまう点は退屈だったと思う。

天文学会での活動は会長の愛理が「楽しいこと」に向けて皆を振り回し、主人公と親友ポジである留学生の長船・KENNY・英太郎(おさふね・ケニー・えいたろう)がボケたり突っ込んだりし、凪沙先輩がそれを毒舌で刺し、ゆいが空気の読めない発言をして、佳織があたふたする、という一連の日常会話劇が繰り広げられるが、ワンパターンなのでだんだんと飽きてくるところもマイナスポイントだと思った。

ゆいが作られた過程については、最初のきっかけであるAIユニットはどこから出てきたのか、ということが明かされていない以外はそれなりに説明されていたが、愛理の開発した過去へと戻る装置については全く説明されておらず、ただその機能を使うだけになっていたのも、説明不足だと感じた。

 

・キャラ

 

公式サイトのAdobe Flashが終了していたので、立ち絵が小さいものしか入手できなかった。

 

f:id:shanxdl:20210927170912p:plain 佐々木 佳織 ささき かおり

 

主人公の幼馴染で高校2年生。天文学会では副会長を務め、みんなを引っ張っていく愛理の後ろで部の事務的な仕事を1人で回している。両親は研究者であり、同じく研究者である主人公の両親とは家ぐるみの付き合いがある。海外出張に行っている主人公の両親の頼みで自分の家に主人公を居候させており、自分、母、主人公の3人で暮らしている。父親は同じく海外出張中。主人公の事が好きだが、今の兄妹のような関係も気に入っており、積極的に告白しようとはしない。さらにお人好しな性格で主人公の気持ちが自分に向いていないと分かるや、身を引いて主人公の恋を応援するような一面も持つ。

シナリオは最初に佳織ルートから始まり、主人公たちは「幽霊」のうわさについて調査をすることになる。その中で、明らかに主人公のことばかり見ているゆいと、ゆいの様子を気に掛ける主人公を見て、佳織はその仲を誤解し、主人公と喧嘩する。そんなある日、柔道部が学生会に対して反乱を起こし、佳織を人質に取って学生会室に立てこもる。天文学会は佳織の救出に向かい、主人公が自らをサンドバッグにして時間を稼いでいる間に文武両道の愛理が柔道部員を倒し、佳織を助ける。主人公はその事件をきっかけに「自分にとって大切な人」は佳織だと自分の気持ちを伝え、佳織と仲直りする。また、主人公はゆいとも話をし、ゆいが自分に向ける好意に気付いていながらも、佳織を選び、ゆいを拒絶する。主人公は家に帰って正式に佳織に告白し、2人は付き合うことになり、デートする。そしてデートの翌日、佳織が事故に遭う。

事故の原因は柔道部に人質に取られたときの捻挫がもとで、暴走して突っ込んでくるバスをよけられなかったことである。

anotherルートでは、デートのときに主人公が佳織の身体を気遣い、2回目のセックスをしない選択をとる。そのため佳織の身体への負担が軽くなり、とっさにバスをよけることができた、という結末になる。そして2人は文化祭当日、幸せなデートをして終了。

 

メインヒロインでありながら、その存在をtrueへの布石として使われてしまったある意味かわいそうなヒロイン。このルートは最初固定で、以後主人公は佳織を助けるために試行錯誤を繰り返すので、どうしても佳織とつきあったことは影が薄くなりがち。また、佳織を助けるのが最終目的と言いながら、anotherルートでそれが達成されているのも、いまいち釈然としない理由なのだと思う。上記のシナリオチャートを見ればわかる通り、本作の真ヒロインはゆいであり、佳織を助けるためと言いながら、佳織が最終目標になっていないことも本作のちぐはぐ具合を表すポイントなのではないかと思う。

つまり、anotherルートでは佳織は救えているが、ゆいは救えていないのでハッピーエンドではないのだ。これは後2人のヒロインのanotherルートにも言える。

anotherルートに関しても、主人公がセックスをしなかった、というどうでもいいことで簡単に佳織を救えていいんですか、という感じがある。

 

CVは有栖川みや美さん。有名な人だが、ちゃんと声を聴くのはこれが初めて。佳織の優しい感じが声に現れていてとてもよかったと思う。

 

f:id:shanxdl:20210927173713p:plain 支倉 愛理 はせくら あいり

 

高校2年生で天文学会会長。文武両道で頭もいいが、トラブルメーカーで素行は悪く、「内浜の最終兵器」の異名を持つ。リーダーシップはピカイチで、いつも天文学会メンバーを率いて面白そうなことを探している。主人公の事が好きだが、佳織に遠慮して自分の気持ちは胸に秘めておくことを決めている。

愛理ルートでは「眠り病」についての調査を進めることになる。内浜の街で、突然意識を失って目覚めなくなってしまう奇病が発生した、といううわさである。その調査の中で主人公が愛理の事を気に掛けるため、愛理の主人公への想いが上がっていく。そんなある日、未来の愛理(愛理の親戚と名乗る)が部室にやってきて、「眠り病」についての仮説を主人公たちに助言する。愛理が最近疲れているように見えたのは、未来の愛理と交流していたからだった。理由は最後まで明らかにならないが、愛理だけが因果に邪魔されることなく、短期間だけ未来からこの時間軸に来訪できることがわかる。愛理は未来の自分から受けた、具体的でない使命や責任といった圧力に耐えられなくなり、つながりを求めて主人公とセックスをする。主人公はこれまでの部活動を通して愛理への好感度が上がっており、愛理に告白するが愛理は佳織に対する負い目からそれを拒絶する。それでもあきらめきれない主人公は自分を頼ってほしい、と愛理の心を動かし、2人は付き合うことになる。佳織は2人を祝福してくれ、さらにデートをすることになる。そして佳織が事故に遭い、主人公と愛理はゆいを作って過去へと送る。

anotherルートでは、主人公に頼れるようになったことで愛理の心の緊張がゆるんでしまい、事故当日に愛理が過労で倒れて入院してしまう。そのため部活動は中止になり、佳織がまっすぐ家に帰るため、事故は起きずに佳織は助かる。そして2人は文化祭当日、幸せなデートをして終了。

 

いきなり未来の愛理が来ることについてはまあいいとして、その理由が曖昧なのは設定としてガバだと思う。さらに来た目的については、この世界線がどのような流れで進んでいるかを確認するため、というどうでもいい理由で、来ても来なくてもゆいの手助けすらしていないという事実に変わりないのはどうかと思う。さらに天文学会が調査している3つのうわさについては、無関係ではないものの、その解決は佳織、愛理、凪沙ルートではしておらず途中でほったらかしになる、というのもどうかと思う。

 

CVはかわしまりのさん。最近は非攻略キャラの、しかも年上キャラばかり演じているイメージがあったので、攻略可能ヒロインでかわしまりのさんの声が聞けるのは新鮮だった。

 

愛理については、ゆいルートに一つBAD ENDがあるので、それについても触れておく。

どのルートでも佳織を取り戻すために主人公と愛理が開発、凪沙が資金援助という形でゆいの開発を進めるのだが、ゆいルートでは主人公の目的がそれまでの佳織を救う、という1つだけではなく、佳織とゆいを救う、という2つになるため、ゆいを完成させることができなくなる。佳織の生命維持が限界を迎え、これ以上開発期間が延びれば佳織を失ってしまう、という段階になって主人公は両方をあきらめる、という選択の決断を迫られることになる。主人公はその重圧で壊れそうになってしまい、自暴自棄に陥るが、そこを開発パートナーの愛理が止める。この時点で愛理と主人公は31歳であり、愛理は高校の時からずっと胸に秘めていた気持ちを主人公に告白し、最初はゆいや佳織の代わりでもいいから自分を愛してほしいと告げる。主人公はそれを受け入れ、2人のことをあきらめて愛理とセックスをすることになる。そのセックスの最中、主人公は自分が世界から消えたはずのゆいの記憶を失っていない理由は、自分がまだゆいのことをあきらめていないからで、それはまだゆいを開発できる可能性が残っているということに気付く。しかし、愛理は主人公に対する気持ちをため込みすぎてヤンデレ化しており、これ以上主人公の気持ちを他にうつさないために主人公を監禁し、ゆいの事を忘れさせて自分の事だけを考えるように仕向けるのだった。

このルートでは15年近く主人公のそばにいながらその気持ちをため込みすぎて壊れてしまった愛理、という状況が結構よかった。

 

 

f:id:shanxdl:20210927180731p:plain 華宮 凪沙 はなみや なぎさ

 

天文学会唯一の高校3年生。地元の名家である華宮家の1人娘で、非常に金持ちだが本人は家柄を持ち出されることを毛嫌いしている。頭がよく、自らの知的好奇心を満たすものを探していつも本を読んでいる。ドSの毒舌家で、いつも主人公やケニーに辛辣な言葉を浴びせかけており、その性格から校内の誰もに恐れられている。一方で仲間に対しては本当に嫌がることはしなかったり、ゆいや愛理の隠し事に気付いていてもそれを詮索しないだけの優しさや信頼を持っている。

凪沙ルートでは「事故多発地区」について調査することになる。これは主人公が物語開始時にゆいを発見した場所の事を言い、その場所では窓ガラスが割れたり、積んであった段ボールが崩れたりなどの事故が起こっているとのこと。また、調査を進めていくうちに事故の被害者から、その場所で機械の駆動音のようなものを聞いた、という証言が得られる。元々その場所には「開かずのエレベータ」と呼ばれる壊れたエレベータがあり、それがうわさに関係しているのではないかと凪沙は考える。一方主人公は凪沙と行動を共にする機会が増え、その中で主人公と佳織が付き合っている、という凪沙の誤解を主人公が解く。それから凪沙は主人公に対して好意的なアプローチをするようになっていく。主人公と凪沙は距離を縮め、2人はデートをすることになる。最終的に凪沙は主人公をラブホテルに誘い、一緒にお風呂に入るが、セックスはさせてくれない。納得のいかない主人公だったが、押しかけていった凪沙の家で、主人公は凪沙の執事から、凪沙が政略結婚する予定であることを聞く。これは華宮家と相手の家の存続にかかわる問題であり、凪沙は断れなかった。そこで、凪沙は結婚の前に恋愛ごっこがしたくて主人公に近づいたのだった。しかし、凪沙も主人公と過ごしているうちに自分が主人公の事を本気で好きになっていたことに気付く。それでももうどうすることもできないまま、佳織が事故に遭う。凪沙は部活を去り、主人公と愛理はゆいを作って過去へ送る。

anotherルートでは凪沙が主人公を想う気持ちがより強くなり、お見合いの前に主人公に会って未練を残したくないと、事故当日に凪沙が学校を休む。心配した主人公と佳織は凪沙の家を訪れるため、事故は起こらない。主人公は執事と殴り合って親交を深め、翌日のお見合い会場に乱入する計画を立てる。お見合い当日、主人公は無事お見合い会場に乱入し、凪沙に告白する。会場には両家のボディーガード達がいるが、天文学会メンバーが助けに来てくれてなんとかなる。さらに主人公は凪沙と協力して、2つの家そして関連企業をよくし、みんなを幸せにすると約束してお見合い相手を引かせる。そして2人は文化祭当日、幸せなデートをする。さらに卒業後、主人公は華宮家に婿養子入りして凪沙の元で勉強し、華宮家の企業で働くことになった。

 

このルートだけ明らかに毛色が違うと思わせるルート。お嬢様キャラだとどうしてもこういう話になるよね、という感じ。せっかく頭がいい、という設定なのに全体を通して凪沙の貢献が資金援助だけになるのももったいなく感じた。

普段はドSだが、頭を撫でられるなどの甘やかしに弱く、付き合ってからは主人公の前でだけドMになるという設定はよし。

 

CVは民安ともえさん。多くの人が思い浮かべるあのイメージとは違った低めの声だが、小悪魔系の先輩という演技が結構あっていたと思う。

 

f:id:shanxdl:20210927184215p:plain 古川 ゆい ふるかわ ゆい

 

高校1年生の転校生で、天文学会の新メンバー。しかしその正体は主人公と愛理によって作られたロボットである。最初は佳織の意識を移すために作られたが、神経の同期がうまくいかなかったため、独自の人格がインストールされた。そのため、最初は感情のないようなしゃべり方をするが、徐々に冗談やノリが理解できるようになっていく。ちなみにゆいの感情の成長は愛理→凪沙→ゆい(=佳織)ルートの順に進んでいく。

その使命は佳織を事故の運命から救い出すことで、ゆいが過去に送られた2008年10月1日から佳織が事故に遭う2008年10月14日の間は存在できるが、それを過ぎると本来ゆいが作り出される2022年まで、因果の力によって消えてしまう。

ゆいルートでは、ゆいが3つのうわさは根底でつながっている、と主張し、佳織が「眠り病」を、凪沙が「幽霊」を、ゆいが「事故多発地区」をそれぞれ調べることになる。そんなある日、寝坊してしまった主人公は通学路でしゃがみこんでいるゆいを見つける。ゆいは体調不良を起こしており、主人公はゆいを部屋まで送り届けて看病するが、ゆいの部屋にはベッド以外のものがカーテンすらなく、ここでゆいが人間でないことが示唆される。さらに翌日、学校に来ないゆいを心配して主人公がゆいの部屋を訪れると、ゆいは日光に当たりながらケーブルを足に刺して充電を行っていた。ここで主人公はゆいがロボットであることを知るが、主人公はそれを受け入れられなかった。また、ゆいは自分がとある使命のために作られ、それが生きる目的で、自分の意志でもその目的を遂行したいと考えていると主人公に語るが、主人公はそれを曲解し、それは植え付けられた意志で、ゆい自身が生きる目的を持っていないと考えてゆいの開発者を恨む。その後も主人公はゆいに関心を抱き、主人公に心を開いたゆいは、14日に佳織が事故に遭う事を主人公に明かし、助けを求める。また、主人公と共に過ごすうちに、ゆいは主人公ともっと一緒に過ごしたい、という目的を持つようになり、ゆいがその想いを主人公に伝え、2人は付き合うことになる。13日、2人はゆいが目的を果たして消える前に、街をデートし、主人公との思い出を作る。そして14日の事故当日、主人公とゆいは事故を回避するために行動を開始する。佳織が外出するのを事前に止めないのは、それによって因果律が変化して、交通事故という因果が変わって予測不能になるのを避けるためだった。しかし、ゆいの知っている場合とは事象が変化しており、結局佳織を助けることはできなかった。ゆいは14日を過ぎて消滅し、1回目は上述の愛理BADにたどり着く。

予測可能な交通事故という事象を変化させないため、という理由があるとはいえ、佳織の事故に対する対策を立てるシーンが存在せずにただイチャイチャシーンだけが流れるため、場違い感がすごかった。後、主人公は頑なにゆいを人間として扱うが、私自身はゆいをロボットだと認識しており、また特に佳織の記憶が入っているわけでもなく、ゆいのオリジナルの人格なため、どうしてもそこまでゆいに執着する気持ちが理解できなかった。このあたりはロボットをヒロインにするときの見せ方の問題なのかもしれない。

 

未来で愛理からの告白を受け入れないと、別のルートに入る。主人公は愛理から過去へ飛ぶ装置の起動キーを奪い、自分が過去に飛ぶことを決意する。主人公が過去に飛ぶことになるリスクは語られるものの、愛理はなぜ今までリスクなしで過去に飛べていたかの説明はないため、そこがよくわからなかった。主人公が装置を起動したところで2回目のOP(映像と曲に違いはなし)が流れる。せっかく2回目のOPを流すという演出はいいのに、少し変化が欲しかったところ。

主人公は2008年10月10日に帰ってくる。本来は装置の出口は「開かずのエレベータ」に設定されているが、主人公はその設定を無視したため、主人公の部屋のベッドで目覚めつことになる。その代償として本来いた過去の主人公の身体に、未来の主人公の記憶が入ることになり、過去主人公の記憶と未来主人公の身体は消滅してしまった。しかし過去主人公の身体を手に入れたことで、因果(タイムパラドクス)に邪魔されずに活動ができると考えた主人公は、ゆいと佳織両方を救うための活動を開始する。まずはゆいと接触し、自分の正体を明かして協力を要請する。しかし主人公はやっとゆいに会えたことで感情が抑えきれず、そのままゆいとイチャイチャして過ごす。ゆいルートの世界線のまま過去に戻ったので、この過去のゆいも主人公のことが好きだったが、主人公は記憶の中のゆいと目の前のゆいのささいな違いに苛立ったりするので見ててイライラした。

そんなこんなで14日になり、主人公は佳織を救うための行動を開始する。まず佳織が部室から出かけたことを確認してから佳織の乗るバス停の1つ前のバス停まで猛ダッシュで行き、そこでバスに乗る。バスは因果に従ってブレーキのトラブルを起こし、カーブを曲がり切れずにバス停で待つ佳織に直撃するはずだったが、主人公が運転手を殴って運転席から引きずり出し、ハンドルを切って壁に激突させてバスを止めたことで佳織は助かる。一方主人公は奇跡的にバス車内から助かるが、自らの命を危険にさらした行動にゆいは怒る。そして佳織を助けられたので役目を果たし、消えゆくゆいと主人公は最後にセックスをする。このセックスは、ゆいが消えないうちに行うため、まだ濡れ切っていない中に痛みをこらえながら挿入を願うシーンがあり、結構考えられていてよかった。セックスが終わり、後は消えるのを待つだけになったが、主人公はまだあきらめきれず、過去へ戻る装置の出口である「開かずのエレベータ」内にあるコントロールパネルを、未来の知識とゆいのCPUで動かし、プログラムを弄って入口へと変換する。主人公はそれを使ってゆいを10月1日へと送り、ゆいが助かる世界線を探すようにゆいに頼む。ゆいは主人公の願いを受けて、さらなる終わりのない旅を受け入れ、過去へと飛ぶ。ここで一旦終わり。

 

最後にtrueルート。ここだけはゆい視点で話が進む。

ゆいの記憶はシナリオ最初の佳織ルートの10月1日に戻る。ゆいが裸で現れた理由は、主人公とのセックス直後だったからだ。ゆいは主人公に再開できたことに喜ぶが、この世界線の主人公はゆいと過ごした記憶はなく、ゆいのこともなんとも思っていなかった。そのことを頭では理解しているものの、感情の整理ができないゆいは天文学会に入部してうわさを調査するという展開をなぞりながらも、主人公のことばかり見つめてしまっていた。そのことが佳織にばれてしまい、ゆいは呼び出しを受け、主人公への気持ちを問いただされる。ゆいは自分の気持ちを胸にしまっておくつもりだったが、佳織はゆいを殴ってまで悪役になり、ゆいの気持ちに喝を入れてくれる。また愛理にゆいの正体がばれてしまう。愛理は未来の自分を通じて断片的な情報を持っており、そこからゆいの正体にたどり着いていた。また、この段階で3つのうわさの真実が明らかになる。

「校内に現れる幽霊」

タイムリープを行ったことにより、空間が乱れてゆいの未来の姿が先にぼんやりと空間に投影されてしまう現象。

「眠り病」

タイムリープを行う際に発生した波が、波長の近い人の脳波と共鳴して、その人の意識を別の時間軸に連れて行ってしまう現象。

「事故多発地区」

タイムリープを行う際に因果が不安定になり、それを安定化させるために起こった一連の現象群。

このように、物語と関係なくはないのだが、大きく関わってくるかと言われると微妙で、またこの謎が解かれることによって物語が大きく動くこともないため、微妙な要素。あと雰囲気でしか説明できない。

 

10月13日、ゆいは主人公との再会の約束を信じて、部室にあったAIユニットに自らの記憶のバックアップを取る。その後、事故当日前夜、ゆいは1人で運命と戦う恐怖に耐えられなくなり、自分と恋人だった主人公の事を思いだしてオナニーをする。

ロボットなのにオナニーをして、さらにやり方がわからないので主人公が以前愛撫してくれた手順をそのままなぞる、というシーンは斬新でかなりよかった。

事故当日、ゆいは自分の身を犠牲にして佳織を助けるが、そのまま誰に発見されることもなく消えてしまう。

 

それから(多分)また何ループかが過ぎた後の10月17日、主人公は未来の愛理に会い、忘れていることを思いだせ、という謎の助言を受ける。また天文学会メンバーは事故現場に落ちていた、という天文学会メンバーのピンバッジを届けられる。それは消える前に、愛理がゆいに渡していたものだった。メンバーたちは全員何か忘れていることがある、という漠然とした違和感を持っていたが、それとピンバッジのことを考えていた主人公は、ゆいのことを思いだす。また、愛理、凪沙もゆいのことを思いだしていた。ゆいはAIユニットに記憶を移すときに部室のPCを介しており、凪沙はPCに見慣れないファイルがあるとの違和感から、その記憶を閲覧可能にする。主人公はゆいの記憶を見て、未来で再びゆいに会う決意を固める。また、佳織ルートと違って佳織の告白を断っていたことが明らかになる。

タイムリープものにおける未来の分岐の解釈については分かれるが、本作では未来は統合されており、一番大きな影響を持つ未来、この場合は佳織が助かってゆいが消滅している世界線に統合され、それ以外の可能性の未来はなくなっていることが愛理の考察から伝えられる。

エピローグでは2022年に完成したゆいを天文学会メンバーが目覚めを待っており、主人公と2人であのときはいけなかった文化祭にデートに行って終了。

 

ちなみに古川の名前の由来は佳織の母方の旧姓であること、ゆいという名前は主人公と佳織→主人公とゆいの心を結うもの、という由来が明かされる。

 

全体を通して主人公のゆいへのこだわり具合に引いた印象。また、未来が統合されたのなら、ゆい以外のヒロインは負けヒロイン確定であり、そこは可能性を残してもよかったのでは、と思った。オチであるゆいの記憶ファイルを見られるようにする過程もガバガバだし、詰めが甘い印象。というか、ゆいルートだけでエンドが4つあるのだが、多すぎだし結局佳織を救えるか救えないか、ゆいを救えるか救えないか、しか話の違いがないのでもっと削って、その分説明描写とかをいれてほしかった。

 

CVは青山ゆかり先生。ロボットっぽい演技から人間らしい演技までの演じ分けが素晴らしく、またお声を聞けて嬉しく思った。

 

・その他

 

本作はサブキャラ(立ち絵はある)の声優が豪華であり、主人公の親友は山口勝平だし、他にも桐谷華、成瀬未亜緒方賢一広瀬正志と豪華メンツがそろっていた。

桐谷華さんのモブ演技を聞けるのは結構レアではないかと思う。

また、曲も素晴らしく、すべて橋本みゆきさんの楽曲で特にOPの「∞未来」と、挿入歌の「ray of memories」が最高だった。

 

・終わりに

 

タイムリープものを神聖視する一つの反例となったのではないかと思う作品であった。

 

。。。