shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題29

 

 

みなさんこんにちは、shanです。

順調に積みゲー消化の進む今日この頃、紹介する作品はこちら。

 

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- PULLTOP - 『遥かに仰ぎ、麗しの』

 

2006年11月24日にPULLTOPより発売された「遥かに仰ぎ、麗しの」です。「かにしの」の略称で知られるこの作品は、「美少女ゲームアワード2007」で大賞を受賞した作品であり、また以前プレイした「こなたよりかなたまで」でシナリオを担当していた健速先生がシナリオを担当しているという事で興味のあった作品でした。

私は本作についての前知識はほとんどなく、「みやびちゃんぷりちー」と「シリアナード・レイ」というキーワードしか知らない状態でプレイしました。先に言っておくと、後者は確かにシナリオ中に登場しましたが、前者は本作が発売される前の販促の一貫として、公式サイト中でクリックできるカウンターを押した時に流れるボイスであり、本編中では一度も登場しないことがわかったことを申し添えます。なお当該カウンターが設置されたのは約2か月間で、その間に約270万回クリックされていたらしいです。

本作の上記キービジュアルにはヒロインが2人しか描かれていませんが、左側のみやびはともかくとして右側の栖香に関しては飛びぬけてスポットが当たっていたキャラという風にも思えなかったので、どうせならヒロインの6人を全員書いてあげればよかったのにと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・攻略

 

攻略可能ヒロインは6人。本作は「本校系」と「分校系」の2つにシナリオ序盤で分岐し、それぞれのルートの中に攻略ヒロインが3人ずついて、ライターも異なる。「本校系」を健速先生、「分校系」を丸谷秀人先生が担当され、細かい整合性がとれていない他、主人公の性格も異なる。そのため、どちらかのルートのヒロインを一気に攻略した方がわかりやすいと思われる。

本作はシナリオが話数仕立てになっており、ヒロイン1人のルートが11~14話+エピローグで終わる。そのため比較的シナリオとしての尺が長く、ヒロイン1人あたり4~7時間ほどかかる。またライターが異なる影響で演出にも違いがみられ、「本校系」ルートでは度々主人公以外の視点が本編中に入るが、「分校系」ルートでは話と話の間にヒロイン視点のモノローグが入り、本編中は主人公の視点で進む。

全ヒロインをクリアするとタイトル画面に全体(みやびルート)のエピローグが追加され、主人公がやってきてから数年後の学院の姿が10分程度描かれる。

回想数は

みやび 1

殿子 1

梓乃 2

栖香 8

美崎 6

邑那 2

と明らかに偏っている。このうち、栖香、美崎、邑那は分校系のヒロインである。分校系を担当された丸谷秀人先生が、今まで抜きゲーを主に書いてきたことから、これが分校系シナリオの特徴ではないかと思われる(代表作は「ティンクルくるせいだーず」、「太陽のプロミア」、「あぶのーまるらばーず」など)。しかしそのせいか、分校系ルートの主人公は言動が幼稚に見えてしまい、どうしても評価が下がってしまった。本校系ルートは逆に全体的にシナリオとしてはよかったものの、ヒロインとのイチャラブが足りないと感じたので、素直に等分しておけばよかったのにと思った。

これらを踏まえてのおすすめ攻略順は

栖香→美崎→邑那→殿子→梓乃→みやび

なお邑那は栖香と美崎クリア後にしか選択できない。

 

・あらすじ

 

教師を目指しながらも就職難にあえいでいた主人公、滝沢司(たきざわつかさ)は恩師の紹介で大学卒業後、一流のお嬢様だけが通う女子校、「凰華女学院(おうかじょがくいん)」へ就職が決まる。始業式初日、喜んで学院へ向かう主人公だったが、その場所は人里離れた半島の先、周りを海と山に囲まれ、外界から隔絶された場所だった。主人公が就職したのは「凰華女学院分校」で、そこは様々な事情を抱えたお嬢様たちが幽閉されるように暮らす学院だったのだ。こうして主人公の新しい生活が幕を開けた、という話。

ちなみに「本校系」とは、元々は都会にある「凰華女学院本校」に通っていたが、何らかの問題により転校してきた生徒で、「分校系」とは元から「凰華女学院分校」に入学してきた生徒を指す。この学院では生徒と教師が同じ寮に住むという規則になっており(主人公は倫理的におかしいと言うものの、理由は明かされない)、赴任初日の主人公が「本校系」と「分校系」どちらの寮に住むかを選ぶことで物語が分岐する。

さらに共通するイベントはあるものの、主人公は選択肢により選んだヒロインとかなりの割合で一緒にいることになるため、明確な共通ルートというものは存在せず、序盤から個別ルートに入っているかのような印象を受けた。

 

分校系シナリオ

 

分校系のシナリオは、栖香の実家である仁礼グループを美崎の実家である陽道グループが買収するという出来事をそれぞれの視点で描いたものであり、主人公が誰に肩入れするかにより過程が異なるが、最終的な結末は似たようなところに落ち着く。詳しくはキャラ紹介欄で。

 

本校系シナリオ

 

前述の通り、本作には共通ルートというものが存在しないと言っても過言ではなく、以降のシナリオについては各キャラの欄で解説していく。

 

 

・キャラ

 

f:id:shanxdl:20210629144313p:plain 仁礼 栖香 にれ すみか

 

分校系。生真面目で几帳面な優等生タイプで一人称は「私(わたくし)」。主人公の呼び方は「先生」から「司さん」。模範的な院生であることを心がけており、教室では委員長、寮では寮母のような役割を進んで引き受けており、毎朝7時になると寮の窓を開けて回るという日課を持っていて「寮の標準時」というあだ名がついている。その性格のおかげで、学院に来たばかりの主人公のお世話を引き受け、主人公と親しくなる。本作では選んだ寮によって、担当するクラスも、同じ寮の生徒となるため、分校系シナリオを選ぶと、彼女といる時間が一番長くなる。実家は戦前に財を成した「仁礼グループ」のトップであるが、近年では新興である「陽道グループ」に傘下の企業を買収され、力はほとんど残っていない。美崎は、栖香の父親と愛人との間に産まれた子どもで栖香の姉に当たるが、愛人は美崎を産んですぐに病死し、世間体を気にした栖香の父親によって赤子の頃に美崎は養女に出されたため、2人の間に面識はない。また自由奔放な生き方をする美崎と、真面目な栖香は性格が合わず、主人公が赴任する前から度々衝突を繰り返してきた。

主人公は美崎と栖香の関係を知り、その仲を取り持とうと奮闘し、それに成功する。そんな時、面会日に栖香の両親が来校し、栖香は実家との縁を切られてしまう。本当は「実家の事は気にせず、好きに生きなさい。」と言われただけなのだが、今まで実家のために生きてきた栖香にはそれが受け入れられず、栖香と美崎の仲は以前より険悪になってしまう。実は栖香の実家は「桜屋敷」と呼ばれており、春になると満開の桜が咲くきれいな場所で、栖香はそれを誇りに思っていたのだが、都会の一等地にあるその場所を陽道グループが狙っており、買収されそうになっていた。法律スレスレのその買収工作を行っていたのは陽道グループ傘下の不動産会社である美崎の実家「AIZAWA」であり、それゆえ栖香は美崎の実家に対し深い憎悪を持っていた。実家に縁を切られ、美崎を拒絶し、頼れるものが何もなくなってしまった栖香は、唯一自分に優しくしてくれる主人公に依存していくようになる。主人公も栖香が気になり出し、2人はキスをし、主人公の部屋に泊まって手コキとフェラをする仲になる。しかし、真面目な栖香は建前以上を口にすることができず、また分校に転校してくる前の学校で教師にレイプされかけたという過去を持つため男性恐怖症になっており、最後まで進めずにいた。そうしている間にも2人の想いだけが募っていき、栖香は自分が実家に捨てられたという事を信じたくないため、自分の政略結婚の道具としての価値を残しておきたいがために純潔をとっておきたいと思っていることに気付く。主人公は栖香の気持ちを尊重し、栖香は代替措置としてアナルセックスを提案する。

この時の言葉が「私を尻穴奴隷にしてください」であり、それを聞き取れなかった主人公が「シリアナード・レイ?」と発言したことから冒頭のあだ名が生まれた。しかしいくらエロ担当キャラだと言われていても、回想数8回のうち手コキ2回、フェラ2回、オナニー2回、アナルセックス1回、セックス1回なので、ペッティングで水増しされているだけで、セックスとしてはそれほど多くないのだが。まあオナニーシーンがあるのはこのキャラともう1人(回想なし)だけなので、そういう意味ではエロ担当かもしれない。

そんな時に栖香に縁談の話が持ち上がる。大企業の社長である中国人と政略結婚すれば、その援助により「桜屋敷」を売却せずにすむと言う話で、栖香は仁礼家長女としての責務を果たすため、その縁談を受けてしまう。それに納得できない主人公は単身で栖香の両親の元へ向かい、栖香の思っている両親像が誤解であることを知る。栖香をこの学院へやったのは、世間体が悪くなった娘を捨てたのではなく、むしろ世間の眼から守るためで、縁を切ったのは、買収騒ぎのゴタゴタに巻き込まれずに幸せになってほしいためだった。両親は栖香のため、屋敷を売る決心をし、主人公と栖香との交際を認める。さらに一緒についてきた美崎が自分の両親に掛け合った結果、屋敷の買収は美崎の父親の独断で進められていたことで、白紙に戻る。

エピローグでは、仁礼家が桜屋敷以外の財産をすべて手放して借金を整理し、栖香は屋敷に住みながら大学へ通うための勉強、主人公は栖香のそばにいるため学院を辞め、塾講師をしながら大学の研究職を目指している姿が描かれる。

栖香ルートでは一連の事件が仁礼家の視点で描かれ、その全貌を把握することはできない。また主人公の行き当たりばったり感や、簡単に教え子に手を出すその葛藤の無さが気になるが、私は個人的に一人称が「わたくし」の没落系お嬢様というキャラが大好きなので、それだけで満足だった。すべてを失った後、主人公と2人だけの貧乏生活を栖香が妄想するシーンがあるのもgood。庶民の一般常識とかけ離れた、言動の端々に高貴さが見え隠れするようなお嬢様に、貧乏生活をさせることほどときめくシチュはないと思う。なので、実際にその生活シーンがあればパーフェクトだった。後、実家から捨てられたお嬢様が主人公に依存するようになるのもかわいい。あと上目遣いの立ち絵もかわいい。

 

CVは井村屋ほのかさん。今まで「ぶるくす」のサブキャラのメイド役でしか知らなかったが、このキャラでは180度演技が変わり、とてもかわいらしくてよかった。特に主人公に甘えるときの声がかわいい。

 

f:id:shanxdl:20210629153243p:plain 相沢 美崎 あいざわ みさき

 

分校系。自由奔放で元気な性格。一人称は「アタシ」で主人公の呼び方は「センセ」。新聞部に所属しており、スクープを狙ってどこにでも出現し、いつも問題を引き起こすトラブルメーカーだが、学院生には愛されている。一方で学院の生活指導の先生には目の敵にされている。前述の通り、栖香の腹違いの姉に当たるが、引き取ってくれた両親は美崎を溺愛しており、2か月に一度の面会日には必ず両親がやってきて、仲睦まじい様子を見せる。それが両親とうまくいっていない栖香にはうらやましいようである。学院に転校してきた目的は、妹である栖香と仲良くなることだが、自身の性格からか、実家同士の問題からか、それはうまくいっていない。

美崎は無許可でこっそり学外のコンビニへと行き、そこで売っているスナックを買ってきて学院生に売るという商売をしていたが、学外に出ているところを主人公に現行犯で見つかってしまう。退学を覚悟する美崎だったが、主人公は美崎を信頼して見逃し、夜中に抜け出すのは危ないため、自分も手伝うように申し出る。そして2人は親友の誓いを結ぶ。それからは主人公の部屋でゲームをしたり、2人でスナックの買い出しに行ったりして好感度を稼ぐ。その後栖香ルートで起こった、栖香による美崎の拒絶事件が起こり、美崎は自分の父親に話を聞いて、父親が自分のために桜屋敷を手に入れようとしていることを知る。美崎はそんなものはいらないから、栖香と仲良くなるための邪魔をしないでほしいと頼み、買収計画は白紙に戻って、栖香との誤解も解ける。ここまでで栖香ルートの終わりまで来たが、美崎ルートはもう少し話が続く。主人公と美崎がスナックの密輸に使っていたのは地下道だったのだが、実はこのような地下道および打ち捨てられた軍事施設が半島のいたるところにあることが明らかとなったのだ。美崎は新聞部としてこれらの学院内施設の調査をすることに決め、主人公たちもそれを手伝うことになる。なおその間のどさくさで美崎が主人公に告白し、恋人になる。美崎の回想数が多いのは、一度Hをした後は元通り友達の関係に戻れないと思い込んだ美崎が、主人公に飽きられないようにするためHを繰り返したから。こちらはちゃんとフェラ2回、セックス4回なので、実はエロ担当はこちらなのでは?

その後半島の調査はダイジェストで進み、1月に調査発表会を行うが、内容はこれらの施設は、学院を創設した風祭家が戦火を逃れるために公的資金を用いて私的に建造したシェルターだという内容で、それを世間に知られることを恐れた風祭家によって調査データは全て没収されてしまう。そして美崎の卒院が近づいてくる。主人公は昔実の両親に捨てられており、それがトラウマとなって「自分が他人を愛すること」をひどく恐れていた。もし自分が捨てられたらと考えると、他人を愛し、無条件に信頼することができなかったのだ。美崎はそれを感づいており、主人公に一度も「好き」と言われたことがないことに気付いていたが、主人公は美崎と過ごしているうちにそれを克服し、美崎に改めて告白するとともに、美崎の卒院に合わせて主人公も退職する。

エピローグでは、主人公が美崎のそばにいて、美崎とともに生きていくことを決意して終わり。またなんやかんやで調査データも戻ってくる。

 

この主人公のトラウマについては、物語全体を通してのキーとなっており、その特性上、すべてのシナリオに関わってくることになる、はずだが栖香、邑那、殿子ルートではあまり現れてこない。まあ、全てのシナリオにこれを絡ませていけば、シナリオが似たようなものになってしまうからかもしれないが。

美崎ルートに関しては、栖香との和解以降のシナリオが蛇足に思え、ラストでも美崎の両親にまだ挨拶に行っていない上、学院を辞めた後の事も考えられていないため、少々粗末に見えた。

 

CVは安玖深音さん。このキャラは後輩キャラではないが、年下キャラであり、また元気で明るい演技がよくあっていた。

 

 

f:id:shanxdl:20210629160857p:plain 榛葉 邑那 はしば ゆうな

 

分校系。いつも温室で植物の世話をしており、紅茶を入れるのがうまい。柔和な性格だが、たまに鋭い意見をいう事もある。一人称は「わたし」で主人公の呼び方は「先生」から「司さん」。栖香と美崎のルートをクリアしないと、ルートに入ることができない。積極的に他人と関わらず、温室に来た生徒や主人公に紅茶を振舞うが、特定の人物に肩入れすることはない。その正体は何らかの理由で学院を卒院できない、「ゲスト」と呼ばれる生徒の1人で、授業料を払っている限り授業や試験など学院生としての義務を全て免除されている。邑那は陽道グループの総帥である蘆部源八郎(あしべげんぱちろう)の直系の孫であり、祖父が存命の間はお家騒動に巻き込まれないようにこの学院から出られないのだった。そのため、実は年齢が主人公よりも少し上という描写があり、25歳前後だと思われる。初めて立ち絵やCGを見た時、老けて描きすぎだと思ったが、それは正しかったのだ。しかも他の学院生と10歳近く離れていながら、同じ制服を着ているのも悪くない。

邑那ルートを選ぶと、主人公が温室に入り浸るようになり、また美崎のはからいで2人で遊園地に出かけたりして好感度を稼ぐ。そして栖香の両親との面会日の事件が起こり、邑那に来ていた面会者が栖香に知られてしまう。その人は李燕玲(リー・イェンレイ)といい、邑那にとっては実家にいた時に家庭教師をしてくれていた女性だったが、栖香にとっては桜屋敷の買収計画を立てた張本人だった。そのため栖香は邑那も拒絶するようになるが、一連の問題は主人公が邑那に心惹かれている間に美崎が1人で解決してしまう。主人公は邑那との仲を深めようとしてキスするが、それ以上は邑那に拒絶される。そして邑那が何か秘密を抱えていることに気付いた主人公は、それを探るために温室に忍び込み、そこで祖父を想ってオナニーをする動画を撮らされる邑那と燕玲を目撃してしまう。邑那は祖母と瓜二つの外見をしており、祖母を亡くした祖父が実家にいた邑那を愛人として囲っていたのだった。そのため、邑那は実家では忌み嫌われており、唯一燕玲だけが優しくしてくれた相手であり、邑那は燕玲に深い感謝を抱いていた。また邑那は祖父のために、純潔を残しておくことを厳命されており、それゆえ主人公との行為を拒絶したのだった。邑那が学院にいる理由は、実家での祖父との関係が何者かにリークされた結果、その噂を消すための処置だった。そんなとき主人公の元に、陽道グループを潰し、邑那を救おうと持ち掛ける協力者、鹿野上渉(かのうえわたる)が現れる。彼は邑那の腹違いの兄にあたり、祖父の強引な経営手腕に憎悪を抱いていた。主人公は彼を信頼し、グループをのっとり、邑那を傀儡として祭り上げようとする(と渉に言われた)燕玲の魔の手から邑那を救うために行動を開始する。タイムリミットは祖父の寿命が尽きる半年後だったが、主人公のミスにより、温室でオナニーシーンを見ていたことが邑那にばれてしまい、別れを切り出されてしまう。それでも主人公はあきらめず、どうにか燕玲から、邑那を学院にいる間は好きにしていい権利を得、クリスマスイブに初Hをする。主人公は完全に燕玲を悪役として動いていたが、実は燕玲は本当に邑那のことを考えて動いており、2人は本当に親友で、今まで燕玲がなしてきた行動の数々は、邑那が立案した計画だったことを主人公に明かす。燕玲は邑那に対する主人公の気持ちを知り、邑那と行った法律スレスレの行いを全て自分が引き受けるため、悪役を演じていただけだったのだ。しかし邑那は、燕玲が悪者になることに耐えられず、真実を主人公にうち明けてしまう。それでも主人公の邑那を好きな気持ちは変わらず、3人は結束して、本当の敵が渉であることを燕玲と邑那から聞く。彼は陽道グループに対して恨みを持っており、そのすべてを破壊するためだけに生きていたのだった。主人公と邑那は祖父の危篤の報を受けて病院に向かい、最後に渉と対峙して勝負に勝つ。そして邑那がグループ総帥を襲名して終わり。

エピローグでは主人公が邑那の秘書となり、毎日を過ごしている描写で終わる。

 

スケールの大きい話であまり実感がなかったこと、主人公が終始蚊帳の外だったこと、主人公の行動が突発的で幼稚すぎることなど、このルートが一番不満点が多かったと思う。こういう名家のお家騒動系の話をするときに何の後ろ盾もない主人公が情熱だけで何とかする系のシナリオはご都合過ぎて、というかあまりにも痛々しくて好きではない。個人的に邑那に魅力を感じないこともマイナス。祖父に祖母が使っていたのと同じシャンプーや化粧品しか使えないように改造されていたり、媚薬を飲まされており、毎日オナニーしないと眠れないというすごく凌辱ゲーっぽい設定があるが、特に活かされない。

 

 

CVは風華さん。今まで聞いたことがなく、本間ゆかり名義でも聞いたことがなかった。演技について特筆すべきことはなかった。

 

 

f:id:shanxdl:20210629165125p:plain 鷹月 殿子 たかつき とのこ

 

本校系。サボり癖があり、度々授業に出ずに学院を徘徊している。他人に興味がなく、対応も素っ気ないが、主人公には徐々に心を開いていく。一人称は「わたし」で主人公の呼び方は「せんせ」から「司」。授業をさぼっていた殿子を探していた主人公は半島の先にある岬で海を見ていた殿子と出会い、仲良くなる。それ以降、殿子の中で主人公は背景の一部から人物に格上げされ、自分の事を「殿子」と呼んでほしいと言うようになる。彼女は伝統と格式を重んじる名家、鷹月家の一人娘であり、彼女に後を継ぐことだけを求め、家族としての愛情は一切与えてこなかった。殿子はそんな両親に反発した結果分校に転校させられ、従順になるまで分校で飼い殺されることが決定していた。したがって卒院できない以上授業に出る意味もまたないということだった。主人公はそんな殿子の気持ちに寄り添って、無理に授業に出ることを勧めず、殿子と一緒に学院を探検するようになり、ある時格納庫とぼろぼろの戦闘機を見つける。軍事オタクのケがある主人公は、その戦闘機をもう一度組み立てて飛ばしてみたいと思うようになり、1人でこっそり戦闘機の修復を始める。殿子は今まで与えられてこなかった家族の愛情、とりわけ父性を求めて主人公のそばにいるようになる。そんな中、美崎が発案した海水浴の引率を主人公が行うことになり、そこで主人公はおぼれて(カナヅチ)心肺停止状態になり、殿子に助けてもらう。以降殿子が主人公に対して過保護になり、そばを離れなくなり、戦闘機を隠れて作っていることもばれてしまう。それも危ないからとやめさせられそうになるが、主人公は殿子が見ている間だけ、という条件で作業の継続を承認させる。以降殿子も戦闘機の組み立てに参加し、殿子は飛べない戦闘機を、学園から飛び立てない自分と重ね合わせて考えるようになる。さらに殿子は主人公の事を異性として意識するようになるが、主人公を鷹月家のお家騒動に巻き込まないように、その気持ちを封印することにする。そんな中、殿子の両親は殿子をお見合いさせて子供を産ませ、その子を鷹月家の後継者として育てることに決めたと殿子に通達する。殿子はそれに応じる気はなかったが、このままでは主人公が自分の弱みとなり、自分に言う事を聞かせるために主人公に被害が及ぶことを懸念し、主人公を遠ざけることを決意する。しかし、主人公のことがどうしてもあきらめきれない殿子は、主人公と付き合う事にする。しかし殿子はあきらめてしまっており、せめて実家によって自分たちが引き裂かれてしまうまでの「今」を大切にしたいと考えていた。そんな中、主人公たちはついに戦闘機を完成させ、それを飛ばすことにする。結果は失敗し、主人公は海に墜落してしまい、殿子は半狂乱になるが、主人公はこっそり練習して泳げるようになっており、そのまま殿子の元に帰ってくる。失敗は想定内で、できるまで何度もやればいいのだと語る主人公に、殿子は「今」だけでなく「未来」を見ることに気付き、自由のために実家と抗ってみようと始めて決意する。

エピローグでは主人公が冗談で渡した数学の未解決の命題を殿子が解いてしまい、殿子が数学者として有名になってしまった結果、世間体を気にした両親が殿子を卒院させ、鷹月家は遠縁から養子をとって存続し、殿子と主人公は結婚して主人公は飛行機の開発を続けることになる。空を制覇したら次は宇宙へと語る主人公に、殿子が「Fly me to the moon」を口ずさんで終わり、という何とも文学的な終わりとなっている。

 

普段他人に興味のない子が自分の事を特別に見てくれるギャップ、付き合う前に呼んでくれる「おとうさん」という呼び方、今まで誰にも頼ることのなかった子が自分の事を頼ってくれる嬉しさ、とこのキャラはすごくかわいかった。主人公に何か欲しいものはないかと言われて、かっこいい帽子を買ってもらうのも性格が出ていてよかったし、それをはじめて着て主人公と初Hをしに来るのもとてもかわいい。また自分の事は二の次で主人公のためだけに献身してくれるのも実によかった。さすが人気投票1位。

 

CVは遠山枝里子さん。千早や紅莉栖をやっているだけあって場慣れしており、特に主人公に甘えてくるときの声は最高に可愛かったが、評判通りにH時の演技が下手すぎる。殿子をはじめとした本校系ルートは、ちゅぱ音が地の文で表現されており、そもそも聞けないのだが、他二人がきちんとしたエロゲ声優である以上、十中八九この人のせいだろう。それだけが大きなマイナスポイント。

 

 

f:id:shanxdl:20210629173552p:plain 八乙女 梓乃 やおとめ しの

 

本校系。内気な性格でいつも幼馴染である殿子の後ろに隠れている。一人称は「わたくし」で主人公の呼び方は「先生」。旧華族のお嬢様で、社会勉強の名目で公立の中学に行った結果、今まで箱入りだったことによる周囲との価値観の違いによっていじめられ、対人恐怖症になってしまったという経緯を持つ。最初は凰華女学院本校にいたが、そこでも対人恐怖症のせいでなじめず、より人数の少ない分校に転校してきた。実家からは対人恐怖症の治療のため、できるだけ多くの人と接するように言われており、それが治るまで当分学院にいるように言われている。そのため正規の年数で卒業する気はなく、殿子の後を追ってよく授業をさぼっている。また、「ダンテ」という小型犬を飼っており、学院ではペットの持ち込みは禁止だが院生全員が暗黙の了解を得ている。梓乃ルートに入るためには、一度目の面会日で両親から価値観を押しつけられている殿子を無視する選択肢を取らなけらばならず、それが少し心苦しい。殿子が主人公に心を開いていくのを見続け、殿子が主人公に取られてしまう事を恐れた梓乃は、主人公を学院から排除することに決める。今まで殿子が梓乃の全てであり、それを奪われることは梓乃にとって何よりも許せないことだったからだ。梓乃は主人公を憎むようになり、主人公に嫌がらせを始めるが、それらは世間知らずと運動神経のなさからことごとく失敗してしまう。それどころか失敗してピンチに陥った自分を主人公が助け続けたことで学院全体そして殿子の中で主人公の株がどんどんあがっていってしまう。また梓乃自身も、動機が何であれ積極的に他人と関わる姿勢を見せたことで、対人恐怖症がわずかに改善し、また主人公に対しての認識を改めつつあった。そんなとき、殿子の両親が事故に遭って意識不明になり、実家に呼び戻されることを危惧した殿子は梓乃のことを唯一信頼できる主人公に託す。実際には殿子が学院を離れることはなかったが、それを偶然立ち聞きしてしまった梓乃は、殿子が自分を捨てたように感じ、再び主人公への憎悪が募る。梓乃は主人公に強姦の冤罪を着せ、学院から追い出すために主人公を深夜に人気のない場所に呼び出すが、そこに本物の不審者が現れ、梓乃が強姦されそうになる。主人公がそれを助けたことで、梓乃は主人公に好意を抱き、また自分だけでなく他人の事も考えられるようになる。梓乃は主人公を文化祭のフォークダンスの相手に誘うが、対人恐怖症はまだ治っておらず、主人公に触れることができなかった。主人公は手袋をつける作戦でこれを克服し、また続くマラソン大会も2人で完走し、主人公は梓乃を下の名前で呼ぶようになる。2人は告白し、付き合うようになるが梓乃は恐怖症のせいで、また主人公はトラウマのせいで相手を本当に受け入れることができなかった。しかし梓乃は対人恐怖症を治すことを決意し、バレンタインに主人公にチョコを渡そうと深夜に外で待ち合わせるが、そこで再び不審者に襲われてしまう。かけつけた主人公に捕まえられた不審者は、生活指導主任の中年教師であり、彼の部屋には梓乃の隠し撮り写真が大量に見つかった。ちなみにこいつは他ルートだとメイドに手を出して解雇される。主人公は梓乃を助けるが、梓乃に自分が他人を愛せないトラウマを持っていることがばれてしまう。梓乃は主人公を受け入れる覚悟を決め、体を張って主人公を愛していることを伝えるために、対人恐怖症で反応する体をロープで縛り、主人公にその身をささげる。それは早く主人公に、自分を捨てない血のつながった「家族」を作ってあげたいと考えての行動だった。これにより主人公と梓乃は本当に結ばれて終わり。

エピローグでは、梓乃の強姦未遂事件を受けて、梓乃を連れ戻しにやってきた祖父母に対し、梓乃が主人公と手をつないで見せることで、梓乃の家族と和解し、主人公は八乙女エンタープライズのトップに立つことが決まってしまったのだった。

 

恐怖症を抑え込むため、ロープで縛るのはいいとして、それを外でやらなくてもいいんじゃないかと思った。梓乃の性格的にも。このキャラも一人称が「わたくし」でかわいいのだが、もっと世間知らずエピソードを出せばもっとかわいいのにと思った。あと、頭に巻いてる謎のリボン?は必要なのか?もっと頭頂部を通るのであればわかるが、額の近くを通るので鉢巻にしか見えなかった。

シナリオの内容としては中身はほとんどなく、ぽっと出の強姦魔などの設定もいまいちだと思った。

 

CVは佐本二厘さん。さすがの演技力だと思った。ふわふわとしたお嬢様らしさが良く出ていたと思う。

 

 

f:id:shanxdl:20210629181203p:plain 風祭 みやび かざまつり みやび

 

本校系。わがままで、かつ権力を笠に着るような性格。しかし本当は泣き虫で甘えん坊。学院生でありながら、同時に凰華女学院分校の理事長代理を務めている。一人称は「あたし」で主人公の呼び方は「労働者」または「馬鹿」から「つかさ」。年の離れた優秀な兄と姉がおり、幼少期は2人の陰に隠れて誰にも褒めてもらえない生活を送っていたが、両親から学院の理事長代理を任されたことで、初めて両親に期待してもらったと信じ、その仕事に一所懸命取り組んでいる。しかし、仕事をこなすことに全力で取り組んでいるため周りが見えておらず、度々学院生や教職員と衝突を起こした結果、彼女の評価はすこぶる悪いものとなっている。身の回りの世話をするため実家から派遣されてきたリーダというメイドがおり、お互いに姉妹のように接している。本当は年相応に生徒としてはしゃぎたいのだが、理事長代理としての責務と、風祭家としてのプライドのせいでそれができずにいる。物語序盤ではソフトボール大会があり、これは人類ならみな野球が好きに違いないと考えるみやびが学院生を楽しませるために作ったイベントなのだが、実際は風祭の権力に逆らえない学院生や教職員がしぶしぶチームを作って参加するだけの悲しいイベントになっていた。分校系シナリオであれば、普段権力を振りかざすみやびを倒すために、フィールディングがへたくそなピッチャーのみやびにひたすらバント処理をさせてエラーを誘う作戦をとり、みやびが泣いてしまうのだが、みやびルートでは主人公の入れ知恵で優勝賞品を出し、その結果参加チームが他ルートに比べて倍増し、普通に試合をして大成功を収めることとなる。その結果みやびは主人公のおかげで大会が成功したことにより、自らの力の無力さを痛感し、落ち込んでしまう。主人公は、今までわがままに見えていたみやびがただ両親から褒めてもらいたいために一所懸命だったことに気付き、みやびの味方になることを決める。主人公は強引な手段を使って無理やりみやびの秘書に納まり、みやびを手助けすることにする。秘書としての給与は、みやびのメイドであるリーダを通して、学院に寄付という形で返還することにする。夏休みが明け、新人教師として志藤由が赴任してくる。彼は海外の大学を飛び級で卒業したエリートで、いずれは志藤財閥の後を継ぐ人間だったが、その前に夢だった教師になるためにここに赴任してきたのだった。主人公は由とすぐに親しくなり、一緒に過ごすことになるが、みやびは自分でも気づかないままそれに嫉妬してしまう。また、主人公が秘書給与を返還していたことを知り、主人公がお金のためではなく、善意で自分を助けてくれていたことを知る。みやびは主人公が好きだという自分の気持ちに気付く。今まで家族に居場所がなかったみやび、そしてリーダにとって、主人公は初めてできた居場所だったのだ。しかし、みやびは地位、権力、そして財産といった主人公にとって価値のないものしか持っておらず、自分たちよりも助けを必要としている人間が現れた場合、主人公がそちらにいってしまう可能性をみやびは危惧する。そしてみやびは、自分が理事長代理になったのは、両親から期待されているからではなく、両親に捨てられ、遠く離れたこの場所でただ問題を起こさず過ごしていてほしかったからだということを、リーダと主人公の会話を聞いて知ってしまう。泣きじゃくるみやびに主人公はこれからずっとそばにいることを誓う。呼び方も「理事長」から「みやび」に改め、何の肩書きもなく、みやび個人を見ることを誓ったのだった。しかし、主人公は自分に力がなく、いざというときにみやびを守れるかが不安だった。そこであからさまなみやびからの好意からは逃げ続けていた。そんなとき、みやびの政略結婚の話が浮上する。相手は志藤由で、主人公は由にならみやびを守る力があると思い、みやびと由の結婚を後押しすることを決める。しかし、主人公をあきらめられないみやびは主人公に付きまとい、ついにバレンタインの日に手作りチョコをもって主人公の元を訪れるが、主人公は断腸の思いでみやびを拒絶する。みやびは主人公に裏切られたと感じて去り、主人公は後悔が押し寄せて酒におぼれていた所を、リーダに殴られて目を覚ます。リーダは主人公の過去について調べており、主人公がみやびを受け入れない原因を守る力がないからではなく、他人に愛されるのが怖いからだということを指摘する。それで自分の本当の気持ちに気付いた主人公はみやびを探して学院中を走り回る。由も2人の気持ちに気付いており、自分を悪役にしてみやびとの婚約を破棄してくれるつもりでいた。主人公はみやびを見つけて告白し、2人は正式に恋人になったのだった。

エピローグでは、翌年の春に学院の改革を進め、主人公からもらった恩を学院生に返そうと、学院をよりよくするために活動するみやびの姿が描かれる。

 

主人公のトラウマが一番描かれたルートだと思うが、その分主人公の優柔不断さが目立ってしまい、若干イライラした。シナリオとしては権力を持つお嬢様との恋愛としてはこれ以上ないくらいテンプレだったと思う。それでいいのだ。

それはそれとして、主人公にたいして冷たく当たっていたみやびが徐々に主人公に甘えてくる姿はとてもかわいかった。やっぱりツンデレキャラが最高だってはっきりわかんだね。

あと主人公のために作ったチョコを拒絶されるシーンが迫真で、とても心に来た。

 

CVは北都南さん。さすがレジェンドだけあってその演技はピカイチ。今まで何人か演じたキャラを見てきたが、このキャラが一番かわいかった。それだけにちゅぱ音がなかったのが残念。

 

f:id:shanxdl:20210629185857p:plain リーダ (リーリア・イリーニチナ・メジューエワ

 

みやびに仕えるメイド。風祭の執事の家に育つが、出自はロシア人の孤児。実家では家族の中で孤立するみやびを唯一気にかけている存在で、主人公がくるまではたった2人で世の悪意を戦っていた。10年ほどみやび個人に仕えているが、まだ10代の少女。学院では本校系の寮生の世話、およびみやび個人の世話を焼いており、主人公も本校系ルートだとお世話になる。またみやびルートでは自分にも優しくしてくれる主人公に対して好意を抱き、はじめはみやびの好意に気付いて遠慮していたが、のちに自分も主人公の事が好きだとみやびに打ち明ける。主人公がずっと自分たちのそばにいてくれると約束してからは主人公を「マイロード」と呼び、主人公にも生涯仕えることを誓う。

主人公の事が好きなことは主人公とみやびも知っており、みやびもリーダを抱くのは浮気に入らないと言っているので、是非みやびルートの主人公にリーダも抱いてほしいところだが、主人公の性格からそれは実現しなかった。3Pかリーダルートの実装があればよかったのに...。

両手を口に当てる立ち絵がかわいい。

 

CVは天川みるくさん。調べたところ、本作がデビュー作で現在は主に同人活動をやっているみたいだった。Hシーンがないのが残念だが、声は普通にかわいいと思った。

 

・その他

 

本作は発売2か月後に人気投票が行われており、その順位は

 

1位 鷹月 殿子 4,102票

2位 風祭 みやび 4,087票

3位 仁礼 栖香 1,780票

4位 八乙女 梓乃 1,423票

5位 リーダ 1,171票

6位 相沢 美綺 928票

8位 榛葉 邑那 342票

となっている。その順位にはおおむね同意するところで、殿子とみやびがダントツのツートップとなっている。というかモブキャラに負ける邑那...

 

・終わりに

 

思っていたよりもボリュームがあって満足し、かつ本校系シナリオは期待にふさわしい出来だったと感じた。ただ本校系シナリオでももう少しイチャラブシーンがあればもっとよかったと思う。古いゲームだが、アワード大賞にふさわしい、良作だったと感じた。