みなさんこんにちは、shanです。
無題シリーズもこれが50回目ということでずいぶん遠くまで来た思いです。
今回は節目にふさわしい良作をプレイできたと思います。
チュアブルソフトより2014年9月26日に発売された「あの晴れわたる空より高く」です。略称は「はれたか」。本作はチュアブルソフトの10周年を記念して作られた作品で、萌えゲーアワード2014にて準大賞とシナリオ賞を受賞しています。おそらくチュアブルソフトで最も有名な作品ではないかと思います。
またチュアブルソフトは2017年に破産手続が開始されており、現在は消滅しています。しかし、近年解散した某メーカーとは違って、作品サイトを残してくれていたり、まだ販売も行ってくれていたりする点が良心的だと思いました。
本作は、日本がロケットの開発に力を入れており、学生がロケット開発技術を学ぶことをAXIP(宇宙航空研究開発学園都市計画 Aerospace eXploration Island Project)という独立行政法人(JAXAのオマージュ)が支援し、ロケット技術大国の地位を築いている世界線の話です。ロケット開発に伴う専門用語(物理学用語が多い)がふんだんに使われており、クリックで用語説明に飛べるものの、理系以外の人にはとっつきにくい面があります。しかし、細部までリアリティにこだわることにより、物語の現実度が上がって描写の説得力が増している面もあり、個人的には評価しています。
進次郎解説もある
また、本作の特徴として、シナリオライターとして範乃秋晴氏というガチの小説家を起用した点が挙げられます。調べたところ、氏は電撃文庫大賞を受賞しており、ラノベも書いていたようですが、一般小説も書いているようでした。サブとしてチュアブルソフト所属のライターが入っていたからか、エロシーンでのセリフ回しに違和感はありませんでした。また、エロゲの表現的に違和感を感じた点もなく、シナリオ面では満足のいく出来だったことを踏まえて、この試みは成功だったと言えると思います。
以下、常体。
・攻略
攻略可能ヒロインは4人。
推奨攻略順は(ほのか、夏帆)→那津奈→有佐
プレイ時間は共通が8~10時間、個別が6~8時間ほど。また、ヒロイン4人をクリアすると、約2時間ほどのグランドルートが解放される。
回想シーン数は
ほのか 3(1回は足コキのみ)+2(1回はフェラのみ)
夏帆 4(1回はフェラのみ)+1
那津奈 4+1
有佐 4(1回はシックスナインのみ)+1
※+以下はクリア後に解放
・シナリオ
舞台は種子島をモチーフにした、天ノ島(あまのしま)。
最初に主人公たちがロケットを打ち上げるシーケンスをカウントダウン1秒前まで流し、その後時間が巻き戻る形で本編が始まる。
この最初にある程度クライマックスのシーンを持ってくる演出は小説っぽいと感じた。ただ、個人的にはロケットを打ち上げる話でロケットを打ち上げるのは確定に決まっているのだから、この演出はいらないかな、と思った。
そして3月20日から物語が始まる。主人公、隼乙矢(はやぶさおとや)はやりたいことしかやらない、がモットーで、勉強を絶対にしたくないため高校2年生への進級が危ぶまれており、20回目の追試を明日に控えていた。主人公の母はすでに死去しており、漁師の父は遠方まで漁に出てなかなか帰ってこないことも多く、主人公は1つ下の妹、ゆいとほぼ2人で暮らしていた。ゆいに明日の勉強をしろ、とお説教をされながらも、主人公は懲りずに家を抜け出して釣りに行き、そこでETP(Engineering Test Pencil Rocket技術試験ペンシルロケット、オリジナル用語)の打ち上げ試験をしていた同級生の暁有佐(あかつきありさ)と出会う。
主人公の父は漁業組合長をしており、ロケットを打ち上げるときは近海での漁が禁止になることから、ロケット打ち上げには反対の立場を取っていた。そのせいで家でロケットの話をすると怒られることから、主人公は今までロケットに興味を持つことを無意識に避けるようになっていたが、有佐に間近でロケットの打ち上げを見せてもらって感動したこと、海に落ちたロケットを回収しようとして、有佐が泳げないのに海に飛び込んだことから、それを助けることになり、そんなにも人を夢中にさせるというロケットに興味を持つようになる。
4月に入り、主人公は無事2年生に進級することができた。主人公は自らの通う天ノ島学園でロケット部を探し、有佐の所属する「ビャッコ」を見つける。しかしビャッコは有佐の他に、学園理事長の娘である3年の伊吹那津奈(いぶきなづな、なつと呼ばれている)の2名しかいない弱小ロケット部で、学園には他にも20以上のロケット部があり、特に学園で最大の規模を誇り、毎年全国大会で上位の結果を残している「ARC(航空宇宙工学研究会 Aerospace engineering Research Club)」が有名だった。主人公はARCに勧誘されるが、有佐の情熱を見てそばで一緒にロケットを作りたいと考えたことから、ビャッコに入部する。ちなみにビャッコは「天ノ島ロケット倶楽部(あまのしまろけっとくらぶ)→しろとら→白虎」が由来である。
学園にはロケット部全体を取り仕切る宇宙委員会という学生組織があり、ロケット部の部員数が委員の数に比例することから、ARC部員がその委員会の過半数を占めることになっていた。そしてビャッコは、部員数の不足を理由に宇宙委員会から廃部を通告されていた。ビャッコは主人公が期限ギリギリで入部して最低部員数の3名を満たしたものの、書類の受理が間に合わず廃部を覆せないと宇宙委員会の委員であるARC副部長の2年、黎明夏帆(れいめいかほ)から言われてしまう。そこで有佐は、なつのコネを使って理事長へ直談判することを思いつき、本土にいる理事長を追いかけて、主人公の父の漁船で本土に向かう。なお、ロケットが嫌いな父のために、父には新しい釣り部の設立のためだとウソをついていた。しかし、理事長の予定が変わって入れ違いで理事長は島にいると連絡が入る。絶体絶命と思われたが、主人公の海流を読む力、有佐の流体力学を応用した計算、なづなの船のスクリューの力と角度の計算、で力を合わせて、時間に間に合わせる。有佐は理事長に対し、委員会で特定の部活の声が大きくなっている現状は不条理であり、ビャッコの廃部は不当なものであると訴えるが、理事長は社会に出れば多少の理不尽さは当たり前のことであり、ロケット部の活動を通じて学生のうちからそれを学ぶべきだ、ロケットが作りたければ別の部活でチームを作ればよいと言われて反論できなくなってしまう。そこで主人公が、ビャッコが大会で優勝するという実績を作ることを条件にそれまで廃部を免れさせる、という条件を出す。理事長はロケット開発推進派であり、主人公がロケット開発反対派の急先鋒である漁業組合長の息子だということが理事長の心を動かし、その提案は認められる。どうにかその場を免れた主人公たちだったが、今度は大会に出場するためには部員が5人必要だ、という風に今年から規定が変更になり、4月中に部員を後2人勧誘しなければいけなくなる。
中学時代主人公と同じ釣り部に所属していた幼なじみであり、町工場の娘で天才的な工作技術を持っている1年の導木ほのか(みちびきほのか)が、主人公と一緒にいれて楽しそうだから、という理由でビャッコに入部してくれる。また、主人公の妹のゆいは、母の遺言によりロケットに関わることを許されており、中学ではロケット部のエースであった。主人公はゆいをビャッコに勧誘しようとするが、ゆいは一足早くARCに勧誘されており、手遅れだった。また、めぼしい新入生は皆ARCに取られており、部活の決まっていない1年生は少なくなっていた。そこで有佐の案で、帰宅部部員に名前だけ貸してもらって幽霊部員を増やそうと考える。部員の数はロケット開発の予算配分に関わるため、幽霊部員を在籍させることはかなり悪質な行為だったが、有佐はとりあえず大会出場申請だけできたら、本番までに本当の部員を探せばよいと主人公たちを説得する。しかし期限当日になって、幽霊部員でない、本当の部員になってくれそうだった最後の1年生をARCに取られたうえ、提出した幽霊部員のリストは、夏帆によって裏を取られており、潰されてしまう。夏帆は幽霊部員に関する会話を主人公たちがしていたのを聞いており、不正を許せない真面目な性格からそれを放置できなかったのだった。主人公は夏帆に偶然公園で出会い、逆上がりを教えることになったという個人的な関係があり、その中で夏帆が今年のARCの大会メンバーの選抜テストに落ちたことを聞いていた。夏帆はルールだからと、別の部に移って大会に出場するという、ズルにも見える手段をしたがらなかったが、主人公は夏帆を説得し、背中を押される形で夏帆が土壇場でビャッコに入部し、これで5人を集めることができた。ここでOPが流れる。
校則の穴をついて自分のやりたいことを通すというムーブは、自分が学生の時によく考えていたことだったので懐かしく思い、読んでいて楽しかった。また、ロケットに無知な主人公に説明する形で、ロケットの説明が行われるのは、プレイヤーへの説明を兼ねていて、主人公をバカで考えるより行動タイプにしたメリットが出ていると思った。
ロケットの大会には種類があり、有佐たちは「大会で優勝する」という条件のために、例年強豪校が出てこない小規模な大会「マックスファイブ」(全長5 m以下の小型ロケットで、到達高度を競うもの)に出場し、優勝実績を得ようと考える。そのためにまずは大会のための予算を確保する必要があり、部内に「AXIP技術生」が5人以上いれば追加予算がもらえるため、唯一技術生ではなかった主人公を「AXIP技術生試験」(通称A験)に合格させることにする。しかし、スケジュール的に1週間後に行われる試験に合格することが必須であり、主人公はそのために勉強をする。試験は最低限のロケットに関する知識を問うもので、即日結果が出るものなのだが、勉強が嫌いな主人公はうまくやる気を出すことができなかった。そこで、ゲーセンのロケットクイズゲーム(通称ロケアカ)をやらせてみたところ、ゲーセン好きの主人公のやる気に火が付き、ゲームを攻略するために参考書をどんどん勉強するようになり、主人公のロケットへのかかわり方がどんどん真剣になっていく。
ロケアカ筐体。あっ、ふーん...
主人公は一度集中すると周りが見えなくなるタイプのため、2徹して勉強し、試験当日の日は熱を出してしまう。しかし、心配をかけないようウソをついて試験を受け、何とか合格することができたのだった。
この風邪を引くくだりはさらっと流されてしまい、すぐ治る上に試験に落ちたりもしないので、いらない描写だと思った。しかしここで、試験会場まで同伴してもらうヒロインを選ぶのでフラグ立てには重要な他、1対1になったときだけの各ヒロインのかわいい描写が見られるのはよかった。まあ知恵熱だと考えれば納得できる。
予算を確保できた主人公たちは、大会に向けてロケットの試作と打ち上げ試験を行う。始めての打ち上げテストは失敗し、ロケットは海中へと墜落してしまう。原因解明のためにはロケットを引き上げて機体を検分する必要があるが、海に落ちた機体は大会終了後にAXIPが一括して引き上げる規定となっていた。そこで主人公は、海に強い漁師の息子という特性を活かして、素潜りで海中に沈んだロケットを見つけ、ロープを括り付けて皆で引っ張り上げることに成功する。
人力4人(全員女子高生、主人公は海の中で機体やロープの調節)で小型ロケットを引き上げられるのかということについては、想像できないため真偽は置いておく。
2、3回目のテストも失敗するが、その度に主人公の無知からくる素朴な質問(いわゆる俺バカだからわかんねぇけどよぉ~)から発想を得て、ヒロインたちが改善策を思いついていく。そして大会本番では、それまでの大会記録を上回る新記録を出すが、なぜか今年に限ってARCが参加しており、ビャッコのダブルスコア以上の記録を出されて負けてしまう。ビャッコを含む他の参加チームが一段階式の固体燃料エンジンを採用していたのに対し、ARCは2段階式の液体ハイブリッドエンジンを搭載しており、スペックが違うのは当然だった。また、ARCがマックスファイブに出場した理由は、この試作エンジンの性能テストをしたかったからで、優勝にも関わらず、想定より到達高度が低かったとARC部長は悔しさをあらわにした。なお、例年この時期は、マックスファイブ出場チームに優先的に射場の使用許可が下りるようになっており、それならば大会に参加した方がよいとのARC部長の判断だった。
これでビャッコ存続の道は、無謀だと考えていた夏の大型全国大会「フォーセクションズ」で優勝するしかなくなった。マックスファイブからの帰り道、ビャッコ部員たちは涙を流し、これまではどこかに妥協の気持ちがあったが、もう後悔しないために全てをロケットに捧げる覚悟を決めた、と皆で誓い合う。
ここからは、フォーセクションズに向けて誰を手伝うかで、シナリオが分岐する。
フォーセクションズには機体、電装、推進、PMの4部門があり、それぞれのヒロインが責任者になることになる。また、この期間は漁業組合との取り決めで、ロケット打ち上げ禁止期間に当たるため、ロケットは打ち上げずに部品の性能勝負をすることになる。
なお、部活時間は平日は6時~授業まで+放課後~22時、休日は9時~22時で休みは月1日とのことである。
以降はキャラ紹介欄で記載していく。
なお、ヒロインの苗字は全て衛星の名前からとられている。
・キャラ
導木 ほのか みちびき ほのか 155-85(E)-56-84
主人公の1つ下で普通科1年。主人公のことは「せんぱい」と呼ぶ。主人公の妹のゆいと昔から仲が良く、その関係で主人公とも幼なじみの関係。中学では主人公の作った釣り部に所属していた。人懐っこくいたずら好きな性格で、主人公に意味深なことを言ってからかうのが好き。実家は町工場で、現役の職人である父親が認めるほど、天才的な工作技術と目を持っている。中学の時に気まぐれに出場したロケット部品製作の大会で、ぶっちぎりの精度で優勝したことがある。しかし飽き性なため、本人はそれほど真面目にやる気はない。中学の時に同じ部活だったのも、主人公と一緒にいるのが楽しかったからであり、今回も主人公と一緒に楽しい学園生活がしたいと、ビャッコに入部してくれる。
ほのかは機体部門の担当になる。機体部門のレギュレーションはこちら。
フェアリングはロケットの先端の丸い部分であり、フィンは尾翼のこと。また、例年の記録から、優勝のためにはマッハ6~7の風速に耐えることが必要となる。
最初はほのかが扱い慣れている材料である高張力鋼(ハイテン)で試してみるが、うまくいかなかった。そこで妥協をしないため、ほのかが苦手としているCFRP(Carbon Fiber Rainforced Plastic 炭素繊維強化樹脂複合材料)を練習することにした。加工機械が借りれたのがほのかの実家の工場だったため、しばらくほのかと主人公はほのかの家の工場まで出て練習をする毎日を送っていた。ほのかは主人公と2人になって、いつも主人公をからかってイチャイチャしていたため、見かねた有佐がほのかに早く主人公とくっつくように後押しをすることになった。
ほのかは1年前に、主人公に告白したことがあった。しかし告白の返事をもらうタイミングで運悪く、ガンで入院していた主人公の母が亡くなったと病院から連絡があった。ほのかは主人公を元気づけるため、主人公と会うときは笑顔でいようと心に決めていた。しかし、葬儀や諸々の手続きが済んだ後、再び登校できるようになった主人公はほのかに「今まで通りでいてほしい」とお願いしたのだった。そしてほのかは、悲しさを押し殺して笑顔でそれを受け入れた、という過去があった。それ以降ほのかは、まだ主人公のことが好きだったが、関係を壊すことを恐れて告白できなくなってしまった。また主人公は、一度振った自分をほのかがまだ好きだとは考えておらず、ほのかのアピールもただからかっているだけだと鈍感ぶりを発揮していた。
そこで有佐の発案で、もう一度ほのかが主人公に告白することになった。しかし、今までからかいすぎた反動か、匂わせるだけではどんなに強く出ても主人公は察してくれなかった。そこで、主人公を公園に呼び出して告白することになった。ここでビャッコ部員4人が協力して、「HNK告白ロケット発射シーケンス」を開始するのが面白かった。しかし、土壇場でほのかは勇気を出せず、結局告白はできずに終わった。有佐はほのかが去った後公園にたたずむ主人公に会い、主人公の気持ちを聞きだす。すると、主人公もほのかの事が好きだとわかった。主人公は母が死んだとき、母の死に目にも漁に出ていて帰ってこなかった父を恨んでおり、父が家族より仕事を取ったように感じ、それまで父に感じていた尊敬の念が反転し、父のようになりたいと立ち上げた釣り部も退部することにした。自分が腐っていたそんな時期に、笑顔でそばにいてくれたほのかに救われ、感謝し、惹かれていたが、自分も父のようにほのかをないがしろにしてしまうのではないかと考えて怖くなり、恋人の関係になることができなかった。そして今でもほのかのことは好きだが、まだ自分が父に対する感情を整理できていない状態であることと、今告白すると大会に支障が出るため、まだ告白するつもりはない、と主人公は語った。しかし、有佐はおせっかいから主人公の気持ちをほのかに聞かせようとこっそり電話をつないでおり、「告白するつもりはない」という部分だけが切り抜かれてほのかに伝わってしまう。主人公は慌ててほのかを探しに行き、公園の高台で泣いていたのを隠して振り返るほのかを見つけて、これ以上関係を引き延ばすことに耐えられなくなり、ほのかに告白する。
しかし、ここからなぜか主人公が決定的なワードを使わないせいで、ほのかは主人公からセフレになれと言われていると思い込み、今は体だけの関係でもいずれは自分を恋人にしてもらおうと考えてこれを了承する。2人はキスをし、そのまま主人公の家に行って初Hをする。
ほのかが一途でかわいく、またセフレでもいいと考えてしまうのがチョロくてかわいかった。しかし、ほのかと主人公の過去がそこそこ重厚な話なのに、ここでアンジャッシュのコントみたいにする必要はあったのかと考えてしまった。
ほのかはゆいに主人公との関係を聞かれ、セフレだと答えてしまう。主人公に怒るゆいに対し、ほのかは友達よりずっといいし、告白まで1年待ったのだから、恋人にしてもらえるまで待つぐらいなんでもない、と答える。しかし、ゆいがほのかの兄(主人公の親友ポジ)に話をしてしまい、それがほのかの父にまで伝わって、主人公はほのかの父から呼び出しを受ける。そして父の前で、主人公はほのかを恋人と思っているがほのかはセフレだと思っている会話をして結局誤解が解け、2人は正式に恋人になる。2人はセックスから新しい発想を思いつき、また2人とも理論より直観タイプなので、ついに直感だけで、シミュレーターが計算した理論値とほぼ同じ形状を考えだす(シミュレーターに計算させるには数週間かかるため、先に試作を行っていた)。
そんなとき、ほのかの父の町工場が不況で従業員を他の工場へ引き取ってもらわざるを得なくなり、父が資金を融資してもらうためにほうぼうへ営業に出ていたが、ほのかとのお見合いを条件に資金を融資してくれる所が見つかった。しかし、ほのかは主人公のことが好きなため、例え出席するだけのお見合いでも出たくないと父に言い、その話は流れてしまった。そこでほのかの父は次にパラボラアンテナを100個受注してくるが、無理が祟って脳卒中で倒れてしまい、指先に軽度の麻痺が残ってしまう。それでも仕事を続けようとする父を見かねて、ほのかは父の代わりにパラボラアンテナを作ろうとする。しかしほのかの力ではパラボラアンテナの材料であるアルミ板を成型できず、失敗してしまうが、主人公が補佐することで父から合格ラインをもらえるものができるようになる。そして主人公とほのかは、ほのかの父のため、差し迫ったロケットの部品作りを一度ストップしてパラボラアンテナを作ることになる。有佐は事情を聞き、快く2人の作業を優先させてくれた他、何かあれば手伝うと申し出てくれる。2人は100個の小型パラボラアンテナの生産を終えるが、後1つ中型のパラボラアンテナを作らなければならなかった。しかし、発注していたアルミ板のサイズが合わず、また返品期間が過ぎていたため作り直してもらう事もできなかった。主人公は有佐に助けてもらおうと電話をかけるが、忙しくしている有佐の声を聞き、言いだせなかった。主人公は有佐抜きで島中を探すが、アルミ板を調達することはできなかった。しかし、有佐が主人公が困っていることを察し、ほのかの兄から事情を聞いてアルミ板を調達してくれた。お礼を言う主人公に対し、仲間が困っていたら助けるのは当たり前だと有佐は答える。主人公とほのかは、今度は自分たちが有佐を助ける番だと決意するのだった。
全てのパラボラアンテナを作り終えたのは大会前日だった。これでは本番は間に合わないと弱音を吐く2人を、退院していたほのかの父が一喝し、自分が昔作ったことのあるフェアリングを作り方を、パラボラアンテナと同じ作り方で教えてくれる。2人はこれを徹夜で練習し、大会当日に3回作るチャンスがある機会に賭けようと考える。
大会当日、主人公たちは他チームが工作機械に巻き込まれそうになる事故を目撃し、とっさに助けた時に自分たちの工具を壊してしまう。しかもその工具はスペアを持ってきておらず、大会中にエリア外の工具を使う事は禁止されていた。しかし主人公は最後まであきらめず、工具を自作する所から始め、なんとか1回だけ製品を作る時間が残る。主人公たちはその1回で満足のいく製品を完成させ、耐久テストではARCと0.01秒差で優勝することができた。
これでビャッコの優勝は達成され、優勝インタビューで主人公は見に来てくれていたほのかの父に娘さんをくださいと叫んで終わり。
また、ARC部長は、過去に事故に遭って精密な作業ができなくなっており、それ故個人の技術ではなく計算と機械の精度のみを重視するようになったが、それはそれとして優れた職人の技術が存在することも認めている、と語る場面がある。
これまで悪者として描かれていたARC部長に勝ちを自慢するシーンがなかったのは残念だった。これはほのかルートだけでなく、全ルートに共通していることである。
エピローグでは、ほのかとほのかの父の協力したイタズラに騙され、婚姻届を書かされる主人公の一幕が描かれる。
昔から主人公のことが好きだったことと、付き合っていない理由に説得力がある、いい幼なじみヒロインだったと思う。別ルートだと主人公のことが好きだと態度に出すことは無く、主人公が別ヒロインと付き合っていることも祝福しているが、この過去があるとかわいそうだと思ってしまうので、やる順番については諸説。物語開始時点で主人公のことが好きなのはこのヒロインだけなこともあって余計にそう思った。
CVは秋野花さん。久しぶりに秋野花さんの王道ロリ系ボイスを聞いたが、やはりとてもよいものだと思った。
主人公と同学年で宇宙航行学科2年。主人公のことは付き合うまで二人称で呼んだことがなかったが、親睦を深める過程で「乙矢君」と呼ぶようになる。元々ARCの副部長で、前年度のフォーセクションズ電装部門優勝者だったが、主人公の熱意を受けてビャッコへ転部してきた。母親は宇宙飛行士、父親はロケットエンジン技術者というロケットサラブレッドであり、普段は無口で感情に乏しいが、ロケットのことになると饒舌になる。真面目な性格のため、有佐とは馬が合わずよく口論をしているが、お互いに本心では頼りにしている。過去にロケットの爆発事故に巻き込まれて母を亡くし、自身も目をケガして今では視力がほとんどない。また、父はその事故の原因が自らが開発に関わっていたロケットエンジンだったことで絶望してしまい、ロケット開発を辞めてしまっている。大事な場面では眼鏡をかけるが、目が疲れてしまうため長時間はかけられず、また目への負担が続くと失明の危険がある。人に頼る事を悪い事だと考えており、何でも1人で何とかしようとする癖がある。
夏帆は電装部門の担当になる。レギュレーションはこちら。
SPとはSemi-Packageの略で、AXIPの審査を通過した既製品をパーツとして使用してもよいということ。
夏帆は去年の優勝者なので、それを参考に改良したものを作ろうと考える。電装部門で最も重要で個人差がでるパーツはジャイロスコープ(傾きを検知してロケットの姿勢を制御する)であり、夏帆は今主流の形式ではなく、古い形式のものを作ろうと考える。理由は、去年自分が優勝したときと同じ形式であるということと、最新式のものは膨大なデータが必要であり、ビャッコでは手に入れられないからである。しかし、主人公と相談した結果、ARCは最新式の精度の高いものを作ってくるはずだと仮定し、それを越えられるようなジャイロを作らないと意味がないということになる。そこで主人公たちは2世代前の形式を作ることを考える。これなら理論上は去年よりも精度の高いものができるはずだったが、問題は古すぎて資料が現存していない、ということだった。臆病で新しいことへの挑戦をためらう夏帆を主人公が後押しし、2人は古い型のジャイロの開発に取り組む。
そんなある日、夏帆は部活中にうっかり捻挫してしまうが、それを言いだせずに部室から帰れなくなってしまった。主人公はそれに後から気づき、夏帆を夜の学校まで迎えに行く。主人公はそのままお姫様だっこで夏帆を家まで届け、誰もいない家で、自分にも母がいないのだと話をして、夏帆の心を開く。そしてこれからは誰かに頼ってもいいのだと話をし、流れで主人公が添い寝をすることになる。翌朝、主人公が目を覚ますと、2人は同じベッドで寝ており、夏帆は全裸だった。主人公は気まずくなって夏帆の家を飛び出してしまい、その日2人がぎこちないのを有佐に気付かれる。事情を説明した主人公は、有佐に背中を押されて、いつも逆上がりを2人で練習していた公園まで夏帆を探しに行く。そして2人でブランコに乗ることになり、夏帆の笑顔を見た時、主人公は自分が夏帆を好きなことに気付いて告白する。そして夏帆も、言葉では返事ができないと、キスをして主人公に答える。
ここでブランコに乗りながらキスをするシーン、夏帆が口下手なのでキスという行動で示させるシーンという演出がとてもよかった。
2人はそのまま初Hをし、翌日有佐に気付かれて皆にからかい兼祝福を受ける。そしてジャイロの改良を続けるが、夏帆の目の状態が日に日に悪くなっていき、手術をしないとよくならないが成功率が高くないこと、目を酷使するとすでに完全に見えくなる時があること、がわかる。夏帆は、今ロケット開発という夢を追うために、手術をしない決断をした、と主人公に語るが、それは建前であり、本当は手術を受けるのが怖いだけだった。
主人公たちは、海岸で実際に発射テストを行うが、強い浜風が吹くときがあり、ロケットが風にあおられて簡単に進路がずれてしまうこと、風によって発射時間を遅らせる規定はないこと、がわかる。しかし主人公はずっと漁の手伝いをして海に出てきたからか、海に吹く風向きと風量を読める能力を持っており、その時の風の状況に合わせてプログラムのパターンを用意する作戦が立てられるようになる。そしてまたセックスすることにより改善策を思いつくが、夏帆の目の状態がいよいよ悪化し、夏帆は迷惑をかけないために部活を大会後まで休む決断をする。有佐たち他の部員は、夏帆の想いを尊重し、優勝を夏帆に届けられるよう頑張ろうと言うが、主人公は夏帆が強がっているだけだと見抜き、公園に呼び出して夏帆の本音を聞く。主人公は夏帆に全ての質問にいいえで答えさせることで、夏帆の本音を聞きだし、大会に出たいこと、ロケットを完成させたいこと、手術を受けるのが怖いこと、目が見えなくなるのが怖いこと、を聞きだす。そして主人公は、大会で優勝したら手術を受けようと夏帆と約束する。
夏帆は少し目がよくなり、作業に参加しないながらも部活には参加するようにする。すると、夏帆は目がよくない代わりに触覚と聴覚が優れていることがわかる。そして今まで難航していた問題を、視覚ではなく触覚と聴覚に頼ることで簡単に解決してしまう。
そして迎えた本番、懸念していた通り強い浜風が吹いており、他チームが相次いで記録を残せない中で、ARCの番のときにだけピタッと風がやみ、ARCが大会新記録をたたき出す。夏帆の代わりにロケットを打ち上げることになった主人公は、再度吹き出した風の中、夏帆と自分が今までしてきた努力を信じ、心の眼で風を読んで優勝する。そして優勝インタビューで終わり。
エピローグでは、主人公、夏帆、有佐の3人の卒業式の日、夏帆の手術が成功して何とか卒業式に間に合った夏帆を、主人公が迎えに行ったところで終わり。
両親の話が出てくるが、結局父親は話に登場しないのが残念だった。また眼鏡をかける理由、かけられない理由それぞれがあるのもよかった。
CVはあじ秋刀魚さん。こういう無口クール系のキャラも演じられるのだと新鮮だった。エロゲーなので、クールキャラがHシーンではしっかり乱れるのもよき。
伊吹 那津奈 いぶき なづな 168-93(G)-57-91
主人公の1つ上、宇宙航行学科3年。主人公のことは「シュン君」と呼ぶ(隼→シュンと有佐が呼んでいるのに倣って)。本名はなづなだが、皆からは「なつ」か「なつ先輩」と呼ばれている。AXIP理事長の娘で、子どものころからロケット開発に携わって育った。そのおかげかロケットに関する知識や技術は高いが、本人が電波系で擬音や例え、擬人化が多く、前提知識をすっ飛ばして話すためよく考えて聞かないと何を言っているのかわからない。一人称が「わたくし」なのもグッド。すぐに泣くが、すぐに立ち直る所も長所である。1年前、部員が大量に退部してしまったビャッコに残った有佐を心配して、ただ1人一緒に残った。有佐とは小学生からの親友で、イジめられていたところを有佐に助けてもらったところから始まっている。物を燃やすのが好きで、ロケットの中でも特にエンジンに関する知識がすごいが、火薬貯蔵庫でアロマキャンドルを焚くヤバい女。
なつは推進部門の担当になる。レギュレーションはこちら。
今年から開発が指定された液体ロケットエンジンは、固体ロケットモータに比べて難易度が爆上がりするものであり、50秒の壁を越えて参加ができるチームはほとんどなかった(名言されているルートでは9組)。
ビャッコには昨年まで有佐、なつの他にも部員がいたが、昨年末に大型ロケットの爆発事故を起こしており、それが原因で部員は皆退部してしまっていた。そしてなつは、爆発してしまった液体ロケットエンジンの改良を密かに個人で続けており、今回の大会にはそれを使用することになった。なつの説明はかなりわかりにくいものだったが、主人公はできるだけなつのことを理解しようと努め、何とかなつの話がわかるようになってきた。すると同時に、主人公は自分がなつのことが好きであることに気付くが、なつはロケット一筋であり、ロケット以外の事に興味がなかった。そんな主人公の態度は有佐にすぐバレてしまい、有佐からは見込みがないから諦めるよう言われてしまう。
そんな中、天ノ島で「宇宙開発反対運動」が起こるようになり、そのPRとしてAXIPは、なつをイメージキャラクター「ロケットヴィーナス」として前に立たせることを考える。なつには、大衆の前でスピーチをするという任務が与えられるが、なつは自分の言葉が他人に伝わらないのをわかっていて、それを嫌がる。しかし、臨時の部費を出すと買収された有佐の命令で、なつはそれを引き受けざるを得なくなる。当日、スピーチを始めようとしたなつは反対派からのヤジで泣いてしまうが、主人公がなつのために本物のロケット(マックスファイブで使った機体を修理してもらったもの、燃料が入っていないと1人でも担げる)を担いでスピーチ会場に現れ、それに勇気づけられたなつは無事スピーチを終えられたのだった。スピーチからの帰り道、なつと有佐は2人で話していて、お互いに相手が主人公のことが好きだということに気付き、また相手がそれに気づいたことも知る。そして2人は親友のまま、正々堂々と主人公を巡って勝負することを誓うのだった。しかし、言葉とは裏腹に2人はお互いに相手を立てようとして譲り合うことになった。主人公はなつから、過去のビャッコの事故について聞く。昨年事故を起こした大型ロケットは、ビャッコの先輩たちが約2年半の高校生活の全てを費やして作ったものだった。そしてそのロケットが打ち上げに失敗して爆発し、発射台にも損害が出て他のロケット部の卒業ロケットが打ち上げられなくなって非難された他、あきらめずに2回目の打ち上げをしようとしたところ、書類不備で認められなかったというものだった。先輩たちは泣きながら自分たちで打ち上げられなかったロケットを解体するしかなかったのに加え、その書類不備には有佐も関わっていた。そして有佐はそれを1人で抱え込んでしまい、一番好きだったロケットの製造を辞めてプロジェクトマネージャー(PM)の勉強を始めたということだった。そしてなつは、当時の有佐をそばで支えていたのは自分だが、自分はもう卒業なのでこれからは主人公にその役目を引き継いでほしい、と想いを主人公に託して自分は身を引こうとするが、有佐がそれを感づいてその場にやってくる。結果的に3人が集まった場で、有佐から主人公に告白し、主人公に振ってもらうことにした。そしてなつに対し、主人公のことが好きじゃないならそう言って私に譲ってほしい、と言う。なつはどうしても主人公のことが好きじゃない、とは言えず、しかし有佐から主人公を取ることもできずに泣いてしまうが、有佐に背中を押される形で主人公からなつに告白し、有佐は身を引いた。
ほのかルート、夏帆ルートでも主人公を後押しし、なつルートではかませ役になってしまった有佐がかわいそうだが、親友と恋人のどっちをとるかという展開は王道だがよくできたものであると感じた。しかしこの展開ではいわゆる負けインの方に肩入れしたくなるのは人情か。また、なつルートでも告白しているということは、有佐は共通ルートの時点で主人公が好きだという事になり、かつ有佐のみ(ほのかも)個別ルートで主人公を好きになる明確なイベントがないが、有佐は共通イベントでも特にそんな素振りがないのが、描写不足で残念だと思った。有佐ルート中で特に幼少期の思い出シーン等もない(なつをイジめていたのは主人公だった(好きな子をイジめるノリで)と判明するシーンはなつルートであるので、過去の接点はある)ので、有佐がいつ主人公を好きになったのがわかればもっとよいと思った。有力なのは冒頭で溺れそうになった有佐を主人公が助けたときか。
気を利かせて有佐はいなくなってくれ、そのまま主人公となつは初Hをする。性的に無知なお嬢様を調教するシチュがよかった。
その後、またセックスで問題を解決したりしているうち、なつがAXIP技術特待生の権利を辞退したことを聞く。AXIPの技術特待生になれば、AXIPへの就職に有利であり、なつの夢である「火星まで有人ロケットを打ち上げる」という目標に近づくことができた。しかし特待生になるためには、今から2週間の研修を本土で受けなければならず、大会への準備ができなくなることがわかっていた。有佐はなつを説得し、昔はなつが自分のためにビャッコに残ってくれたから、今度は自分がなつのために何かする番だとして、なつを送り出す。また主人公も、夏帆とほのかにエンジンの改良を手伝ってもらうようにお願いしたから、優勝をあきらめたわけではないとなつを説得し、なつは特待生の研修に行く決心をした。そしてなつの研修中に主人公は、船に乗っていた時にスクリューが壊れた経験から、エンジンの失敗原因を特定し、ついになつの帰島に間に合うように改善を間に合わせることができた。
そして迎えた本番、主人公たちは、唯一プロの水準である2,000秒の燃焼試験を満たし、ぶっちぎりで優勝することができたのだった。そして優勝インタビューで、なつと付き合っていることがばれた主人公が、理事長に詰められたところで終わり。
エピローグでは、なつの卒業式と、ビャッコのロケット打ち上げ日が被ってしまい、1人で寂しく卒業式に出席したなつを、主人公が迎えに来て一緒にロケットを打ち上げに行くところで終わり。
普段はほんわかしていながらも、有佐のために自分の夢を遠回りさせてビャッコに残るという芯の強さがあったり、何も考えていないようでいて、周りのことをよく見ていたりと、思ったよりギャップがあるのがよかった。
CVは香澄りょうさん。ベテランの方だが、演技を聞くのはこれが始めてだった。今回の役にはよくあっていると感じた。
暁 有佐 あかつき ありさ 160-88(F)-58-85
主人公と同学年で宇宙航行学科2年(主人公は普通科)。ビャッコの現部長。主人公のことは「シュン」と呼ぶ。これは初対面で、「隼」だと、人工衛星と音が同じで、宇宙に無知な主人公にふさわしくないと考えたから。親しくない人の前では猫を被っており、優等生として接するが、親しい人、特に主人公の前ではキツい態度を取る。裏を返せば、キツい態度を取るのはそれだけ相手を好きな証ではあるのだが、この素直でない性格のせいで色々と割りを食っている。いわゆるツン:9、デレ:1のツンデレヒロイン。昔懐かしい王道のツンデレヒロインがちょうど摂取したかったのでとてもよかった。
昨年のビャッコでの事故のせいで、「ビャッコで大型ロケットを打ち上げる」ことにこだわっており、座右の銘は「死んでもロケットを打ち上げる!」。自分がやりたいことに付き合ってもらっているのだから、自分が一番キツい仕事をするのは当然、という考え方をしており、一番地味でしんどいプロジェクトマネージャー(PM)を率先して引き受けている。しかしスペックは高く、マルチタスクを平然とこなしている。ロケットを打ち上げるためなら、ルールの穴をついたり、法律に触れないレベルの悪いことでもなんでもやろうとするため、よく夏帆と口論になっている。
有佐はPM部門の担当になる。レギュレーションはこちら。
この通り、PM部門はほぼ出来レースであり、実績のほとんどないビャッコが優勝することは事実上ほぼ不可能である。
主人公は有佐の下についてPMの補佐をやることになり、雑用を死ぬほど押しつけられる。また、ほのかのために工場を貸してもらうことになるので、ほのかの家の町工場へ挨拶に行くよう言われ、そこで明里光(あかりひかる、ビャッコのOG)と出会う。明里先輩はビャッコが事故を起こしたときの部長であり、ビャッコを辞めた1人だった。そして今はほのかの家の工場で働いており、ロケットはもう見たくないと複雑な感情を抱いていた。有佐は自分たちのロケットをまた見に来てほしいと言うが、それは受け入れられなかった。
有佐はフォーセクションズへの参加にあたって「妥協禁止」「弱音禁止」「恋愛禁止」の3つを自分に課す。なおこれは他人が守らなくてはならないものではなく、あくまでも自分への所信表明だった。そんな時、有佐の母(宇宙飛行士で天文学者)が急にフィリピンへ出張になり、鍵がないため有佐は家を締め出されてしまう。ここで他ルートだと有佐はなつの家に泊まりに行くが、有佐ルートだと主人公の家に泊まることになる。有佐は主人公の父にバレないようにこっそり窓から入るが、結局見つかってしまう。仕方ないので、有佐が主人公と付き合っていることにし、なんとかなる。
有佐は急にフォーセクションズと並行して年度内に大型ロケットの打ち上げ計画を進めると言いだし、最初は建前で話すため皆が反対してケンカになってしまう。そして有佐が部室を出て行ってしまったため、主人公が追いかけて話を聞く。有佐は昨年のビャッコのロケットの打ち上げ失敗を自分のせいだと考えており、なつが卒業してしまう前の今年度中にどうしても大型ロケットを打ち上げる事で、自分の後悔に決着をつけたいのだ、と主人公に語る。その話は、有佐を追いかけてきたビャッコ部員たちも聞いており、今度は「力を貸してほしい」と有佐が本音でお願いしたことで、皆は快くそれを引き受けてくれることになった。また、有佐は明里先輩にもまたロケットに関わって欲しいと思っていることに主人公は気付いた。ビャッコに入部したての有佐にロケットについて教えてくれたのは明里先輩であり、それからもずっと有佐の面倒を見てくれていた。そこで主人公は、有佐のために明里先輩の本音を聞きだせないかと考える。そして主人公は、明里先輩を釣りに誘い、その後ゲーセンへ行き、夕陽の見える公園へ連れていくという無意識のデートをしてしまう。主人公は、もう一度有佐と一緒にロケットを作ってくれるよう明里先輩に頼む(電装部門の機体をほのか父に作ってもらうことになったので、それを明里先輩にも手伝ってもらう)。明里先輩は、本心ではロケットを諦めきれておらず、有佐がビャッコでロケットを作り続けてくれている限り、自分たちがやってきたことは無駄にはなっていないと考えられていた。また、有佐も同じように思い、何とか明里先輩たちの想いを継ぐためにビャッコを残そうと奮闘していた。明里先輩は主人公に告白し、付き合ってくれるならまたロケットと向き合えるかもしれない、と返事をする。主人公はその返事を保留にするが、部活をさぼって明里先輩と会っていたため、その事実を怪しんだ有佐にストーキングされていた。主人公は明里先輩とした話を有佐に説明する中で、自分が好きなのは有佐だと気づき、明里先輩への告白を断る練習をするフリをして有佐に告白する。有佐も自分が立てた恋愛禁止の所信表明を破るわけにはいかないため、恋人になるとは言わず、ただ主人公が食べていたアイスをもらうという建前で主人公にキスをする。
このあたりの流れは天才的で、有佐のツン具合と、意地でも恋人とは言わないところがとてもかわいかった。有佐の「馬鹿」は「好き」って意味なんだな、というセリフがとてもよいと思った。
それから2人は、友達と休日に出かけるという建前でデートしたり、有佐が主人公を起こしに来ておはようのキスをしたりするが、有佐は決して自分たちの関係性について口に出すことはなかった。そのようにして、3週間くらい明里先輩への返事をほっぽったまま有佐とイチャついた後、ようやく断りの返事をするが、ロケット製作については粘った結果引き受けてもらえることになった。
その後「宇宙開発反対運動」が起こり、このルートではなつが駄々をこねたために有佐が代わりにPRイメージキャラをやることになる。そして有佐は、AXIP理事長も聞くのであれば、フォーセクションズでのスピーチの手掛かりになるかもしれない、と考える。スピーチ当日、有佐は反対派のヤジを正論で殴って黙らせるが、理事長からは「自分が思ってもいないことは他人に決して響かない」と批判されてしまう。しかし主人公は、それをフォーセクションズへのヒントだと前向きにとらえ、有佐を励ます。
しばらくして、2月に打ち上げを予約していた大型ロケット用の射場がAXIPの上役(天下りしてきた官僚)の鶴の一声によって奪われてしまう。また、AXIPとしても、予算を減らされてしまう可能性があるため、それに逆らう事はできなかった。そこで主人公と有佐は、1月のほとんどの日に射場の予約を入れていたARCに、枠の交渉に行く。ARC部長はアポがないと会ってくれなかったが、部長がゆいを好きらしいという情報を活用し、ゆいを通してアポなしの面会を取りつける。さらにゆいから1月の枠はほとんどが予備日であるという情報も聞きつけ、ゆいに事情を説明して同情してもらうことで、ゆいから部長に対し枠を譲ってあげるよう頼んでもらった結果、枠を譲ってもらえることになった。ただし、有佐が務めているロケットヴィーナスの役をARC副部長に譲ること(ロケットヴィーナスの実績はAXIPへの就職に有利なため)という条件が出された。しかし、有佐がPR会場でしたスピーチは、多くのロケット推進派に好評であり、有佐のためにフォーセクションズへの予算の投資を行ってくれる会社が現れていた。有佐がロケットヴィーナスを辞退するということは、これらの予算がなくなるという事であり、また有佐に寄せられた期待を裏切るという事でもあった。有佐はそれでも、大型ロケットを打ち上げるという当初の目的のためにロケットヴィーナスを辞退しようとするが、理事長に逆に説得されてしまい、有佐の中でロケットヴィーナスを続けたいという気持ちが芽生えてくる。そこで主人公は、3月にロケットを打ちあげる案を考える。3月は漁業組合との取り決めで発射禁止期間にあたり、これを覆すには漁業組合長である父との話し合いが必要だった。主人公と有佐は父に頼みに行くが、当然断られ、また主人公がケンカ腰だったために殴り合いになってしまう。また有佐も、PR活動でスピーチをしたことで、プロローグのときについたウソがばれて釣り部ではなくロケット部であることが知られてしまい、二度と家に来ないように言われてしまう。2人は一度頭を冷やすことになり、主人公は有佐が、父はゆいが話を聞く。
主人公がいつも明るくて前向きな性格になったのは、母が死んだあと、父の代わりとして家族であるゆいを悲しませないようにするためだった。主人公は、母の葬式にも帰ってこない父の代わりに喪主をやり、死亡届を出し、全ての手続きを父の代わりにして、また母の遺言のせいで父を憎むこともできなかった。主人公の中にあったのは、もう少し頑張れば父が帰ってきて、自分の代わりに残された家族を守ってくれるんだという思いであり、主人公はそれまでの間の代わりとして父をじっと待っていた。しかし帰ってきた父は、すぐにロケット打ち上げの反対運動をすると言って家を出て行ってしまい、主人公の中ではまだ父は家に帰ってきていないままだった。主人公は有佐に、父の代わりに頑張っていることを見抜かれ、もう頑張らなくていいのだと肯定されたせいで、有佐の胸で泣いてしまう。また父にもゆいが話をし、何も言わなくても考えていることをわかってくれたのは母だけで、母はもういないのだから父の考えは父にしかわからないのだと言ってくれる。また主人公は幼少期に興味を持ったロケットを、漁師になれと奪われ、中学で憧れていた漁師を父との関係のせいで踏みにじられ、今また興味を持ったロケットをまた奪われかけている、そんな思いをさせていいのか、と父を説得してくれる。そして「俺は馬鹿だから親父とどうやって話したらいいかわからないんだ」という主人公に、「私がずっと一緒にいて代わりに考えてあげる」と答える有佐がとてもすごく最高によかった。
翌日、主人公は有佐の提案で、一緒に漁の手伝いをすることにする。そこで父から、母の手術代を稼ぐために必死に仕事をしていたことを語られる。日本では手術は断られたが、海外では可能性があったため、その費用を稼ぐことに必死だった、と。しかしロケット打ち上げのために近海での漁が禁止される時期であり、遠洋漁業の船に乗るしかなかったため、母の死に目に会えなかった。それが父がロケットを憎むようになったきっかけだった。主人公は父の本音を聞いたことで、やっと父と仲直りができた。また、ゆいの話により、主人公がロケット部に入っていることは認めてくれた。さらに、主人公が新しく好きなことを見つけ、ロケットという船で宇宙という海への船出をしたいという新しい夢を持ったことで、息子の応援をしてやりたいと、3月のロケット打ち上げを漁業組合に通してくれる。有佐はこの話を通して、人を動かすにはまず感情を動かさないといけないのだということがわかった。
そして迎えたフォーセクションズ本番、機体、電装、推進いずれも1位をとれず、優勝は有佐のスピーチに委ねられることになった。有佐はスピーチでビャッコの歴史、受け継がれてきた情熱、そしてそれを継承していきたいため、ビャッコの存続に力を貸してほしい、と聴衆に訴えた。また、主人公、ほのか、夏帆、なつは有佐のスピーチ中に演出として、漁業組合に許可を取ったうえでロケットを一本打ち上げていた。スピーチ終了後、ビャッコの存続を求める声がAXIP理事会に殺到し、その中にはPR活動時にヤジを飛ばした反対派の漁師の姿もあった。このように、反対派を納得させたこと、漁業組合から正式な許可を得て、打ち上げ禁止のフォーセクションズ開催時期にロケットを打ち上げたこと、という前代未聞の「実績」を加味して、有佐がPM部門で優勝することができた。
そして大会が終わり、やっと有佐が主人公に告白し、正式に恋人になったところで終わり。エピローグはなし。
主人公の問題を解決したのは有佐ルートのみで、有佐が正ヒロインだと思わせてくれるような濃い内容だった。主人公と2人きりになったときだけに見せる有佐のデレがとにかくよかった。上でも書いたが、有佐が主人公を好きになったのがいつなのかが明確に書かれていないのがとても残念だった。
CVは結衣菜さん。棒に近いのだが、キャラ造形がいいと、自分の中では演技が悪くても加点されないだけで減点はされないのだな、という気づきを得た。声質はキャラに合っていると思う。また、棒具合がいい感じにクセになる感じもあった。
・Lift off!!
4人のヒロインをクリアすると、タイトル画面から行けるようになる。
フォーセクションズが終わり、3/9に打ち上げ日が決まっている中の2/17から始まる。このルートの主人公は誰とも付き合っていないが、全員が主人公の事が好きである。また、フォーセクションズではすべての部門で優勝している。
機体 | 電装 | 推進 | PM | |
有佐 | 2 | 3 | 9 | 1 |
夏帆 | 3 | 1 | 9 | 11 |
ほのか | 1 | 3 | 9 | 7 |
なつ | 9 | 失格 | 1 | 29 |
Grand | 1 | 1 | 1 | 1 |
参考までに各ルートでの順位を乗せておく。
機体部門は安定して高順位にいるが、ほのかが天才でも1人では優勝は難しい事がわかる(なつルート9位は、補助者の夏帆の目が急に見えなくなって手元が狂ったため)。電装部門も安定志向のままだと3位が限界だったことがわかる(なつルート失格は夏帆の目が急に見えなくなって発射できなかったため)。推進部門はほとんどが9位(参加チーム中最下位)で、逆に1位をとれたのが奇跡だったとわかる。PM部門は普通は無理なため割愛。夏帆が、自分のルート以外だと目のケガのことを隠している影響が露骨に出ていると、表をみると改めて感じた。
閑話休題。
ロケットの製作は順調に進んでおり、有佐の提案で一緒に人工衛星を打ち上げることにする。ひょんなことからビャッコの過去の活動日誌が見つかり、その中にあった地図の場所を掘り返すとタイムカプセルが出てきた。それは人工衛星の基盤であり、録音データが残っていた。中身はビャッコOGが打ち上げられずに部室に残した人工衛星「ながれぼし」を託したいというものであり、主人公たちは学園中を探してそれを見つけ、一緒に打ち上げることにする。「ながれぼし」の役割は、太陽光を反射させながら大気圏に突入して人工的な流星を作り出すことであり、また日本上空を通過するときにあらかじめ録音しておいたメッセージを送信するというものであった。主人公たちはこれを5機作り、それぞれが願いをメッセージに込めることにする。ここでの願いは
ほのか→工場に人が戻ってきて、また皆で楽しく過ごしたい
なつ→火星を往復できるロケットエンジンを作りたい
夏帆→手術が成功してほしい
主人公→宇宙人に会いたい
有佐→死んでもロケットを打ち上げたい
というものであった。この中で有佐の願いに関しては、メッセージを聞いているときには叶っているということで、有佐のみ考え直しになった。
そして打ち上げ当日になり、カウントダウン x-1秒まで来た段階で、射場に人影が見え、有佐は緊急停止をかける。しかしエンジン停止が間に合わず、点火したエンジンは燃料が燃え尽きるまで止まらないため、90秒ほどエンジンを動かすことになった。これによりロケットが倒れないよう、主人公は必死にロケットの制御をおこなった。なんとかロケットは倒れないで済んだが、有佐が人影を探してエンジンの熱波が吹き荒れる中外に飛び出しており、エンジンが止まって探しに出た主人公が見つけたものは、飛んできた破片が当たって心肺停止状態になった有佐と、泣き叫ぶ女の子だった。主人公は冷静に蘇生処置を行い、有佐の心臓は再び動き出したが、意識が戻らなかった。
ここで侵入していた女の子はARC部長の妹(幼稚園児)で、共通ルートでも何度か出てきていたキャラで、マックスファイブの打ち上げ試験が見たいと言った時には、危ないから本番まで待っていてほしいと有佐が言い、それを理解できるほどには知能があり、実際マックスファイブの本番時には大会を見に来ており、また遠慮を知っていて敬語で話す等、年の割にしっかりしているというキャラとして作られていたので、このルートだけこんな蛮行を犯すとは考えにくく、キャラ崩壊しているように感じられた。また侵入ルートも、有佐が x-12時間前に怪しいゴムボートを沖で発見しているぐらいしか描写がないため、少なくとも12時間前からそこにいたことになるが、幼稚園児に12時間も待てる体力があるとは考えづらいのも整合性がとれていないように感じた。別のモブキャラとかでよかったのではないかと思う。有佐が発射前に「打ち上げを中止する覚悟」について語るなど、フラグが立っている感はあった。
主人公たちは意識の戻らない有佐の意志を継いで、3月中に再打ち上げを行おうとするが、AXIPからビャッコの無期限活動停止処分とロケットの解体処分が下る。これは、ロケットの打ち上げには事故がつきものだが、教育としてロケットを打ち上げている都合上、ロケットは安全だということにしないと世間体が保てないためAXIPが責任を取ることはできず、発射した部に問題があったと発表しないと1つの部ではなく全国のロケット部が廃部に追い込まれてしまうから、という建前の問題だった。主人公は一時はAXIPを恨むものの、冷静になってその真意に気付く。そしてAXIPを介さないで打ち上げができる方法について考えようとし出した時、なんと有佐からメールが届いた。それは有佐が自動送信に設定しておいたメールで、「自分が死んだ場合」のロケットの再打ち上げ計画について書かれていた。有佐はいつも「死んでもロケットを打ち上げる」と言っていたが、それは比喩や心構えの問題ではなく、100%本気で言っていたことを主人公たちは始めて知ることになった。
有佐の計画から、SPを一切使わないロケットであればAXIPの許可がいらないことがわかり、主人公たちはARCに足りない部品(全体の約70%)を融通してもらい、世界初の純学産ロケットとして打ち上げ準備を進める。しかし、ロケットの射場はAXIP技術生でないと使用許可が下りず、AXIPの手を借りないことは不可能に思えた。主人公たちはARC部長(企業の御曹司)に頼んで株式会社ビャッコを子会社として設立してもらい、ARC部員とビャッコ部員を全員社員として登録した。そしてAXIPが一般企業に射場をレンタルしているルートを使って、学生ではなく会社員として射場の使用許可を得ることに成功した。これらのことはARC部長が、妹を助けてくれたことのお礼、及び素晴らしいロケットを打ち上げるために協力してくれたものであり、ARC部長はビャッコが嫌いなのではなく、完璧なロケットを打ち上げるためにビャッコが非効率的だから解体しようとしていたに過ぎなかった。
主人公たちは再打ち上げが近づく中、目を覚まさない有佐に順番に毎朝話しかけに行く。そして他のヒロインが皆、目を覚まさないなら主人公をとってしまうと発言するのだった。そして10日後、改めてロケットの打ち上げに成功し、射場まで連れてこられていた有佐も意識を取り戻した。「ながれぼし」に録音されていた4人の願いごとは、有佐が目を覚ましますように、であり、有佐が意識を失う事前に録音していたメッセージには、4人への感謝の想いと、みんなの夢が叶いますように、という願いが込められていた。最後は5人で夜空を見上げ、「ながれぼし」が作った流星を見るところで終わり。
流れとしてはとてもよいのだが、唐突に有佐を半殺しにするのは本当に必要だったのかという疑問が残る展開となった。特に「ながれぼし」に関する設定がとてもよかっただけに余計にそう感じた。
また、ARC部長兄妹を最後にそこそこの重要キャラとして出すなら、もう少し意味深な部長の過去や妹との関係などについて掘り下げるべきだったのではと思った。
・終わりに
かなり出来の良いシナリオで満足度の高い作品だったと思う。ヒロインも皆かわいく、ロケットの打ち上げというあまり知らないテーマでありながら、説明もわかりやすく、部活と青春と絡めることでとっつきやすい形に仕上がっていたと思う。ただ扱いが雑なキャラがいたことも事実で、特にARC部長兄妹と明里先輩は、特定ルートで重要な役割を果たすため、もう少し掘り下げがあってもよかったのではないかと思った。
古いゲームだからか、物語が1日ごとにアイキャッチが入り、その度にスキップが解除されるというシステム面の荒さと、用語集に直接飛べず、一度コンフィグ画面を経由する必要があるのが煩わしかった。
しかし、そんなことは気にならないぐらい面白い作品で久々に大当たりを引いたと思うので、本当によかったと思う。