shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題16-2

 

 

こんにちは、shanです。

先日「ものべの -happy end-」本編をクリアしたのですが、おまけとしてついてきた膨大なボイスドラマを聞き終えたので、印象に残った話をいくつか備忘録がてら紹介したいと思います。

 

無題16 - shanの落書き帳

本編の感想はこちら。

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

おまけとしてついてきたボイスドラマは全部で53本。

その内訳は前回の記事を見てもらうとして、さらに無印版、HE版それぞれのカウントダウンの連続ボイスドラマが収録されている。

ほとんどが追加Hシーンともいうべき、内容としては特筆すべきところのない話だが、いくつかとんでもなく重要な補完シナリオがあったので紹介する。

 

あとこれは蛇足だが、ソフマップなどの限定予約特典のボイスドラマも含まれているので、当時ボイスドラマのために何本もソフトを買った人は価値が暴落してかわいそうだと思った。あとは抱き枕3種についてきたボイスドラマも含まれている。買ってないユーザーとしてはありがたい限りで、できるだけ関連コンテンツを網羅したい私にとっては理想的だった。

 

 

 

〇夏葉、迷子になっちゃった!?

 

無印版のカウントダウン連続ボイスドラマ。一応公式サイトに全編無料公開されている。1話3~5分のパートが全部で31話あり、内容は本編で一番最初に茂伸のバス停に主人公と夏葉が到着したとき、すみと飛車角が迎えに来ておらず、夏葉が主人公とはぐれてしまった場合どうなるか、といった内容。

夏葉は一人で茂伸を動き回り、登場人物たちと会話を繰り広げていくことになるのだが、実は主人公の仕込んだサプライズであり、物語で毎回得られるキーワードのメモを集めて、最終回で主人公の待つ目的地にたどり着くというもの。

ちなみにキーワードは「こくどうといたらずをつなぐものべのがわにかかるあかいつりはし」30文字

「国道と不至をつなぐ茂伸川に架かる赤いつり橋」つまり新景橋のこと。

リアタイ時には視聴者抽選でプレゼントもあったらしい。

 

 

〇ものべのインタビュー

 

HE版のカウントダウン連続ボイスドラマ。1話1~2分のパートが全部で61話あり、夏葉が本編の登場人物にインタビューをしていく内容となっている。HE版なので、アフターにしか登場しない人物もほぼすべて出てくる。

夏葉がえみと出会い、直感的に主人公とすみの子どもだという事に気付いてしまったことで嫉妬心が芽生え、そのケガレがきっかけでつみと飛車角がいる昔の世界に引き寄せられてしまう。そこからいづものみこの力を借りて現代に戻してもらい、獏の夢の中に入るという名目で別ルートの世界線へと向かう。

そこではありすルート中の小さくなった人々や、夏葉ルート中の大きくなった自分自身に出会う。

しかし実際にはこれら一連の出来事は眠っている夏葉にご開祖ちゃんが見せた夢であり、夏葉の体が抱える病気によってこれから(本編開始後)夏葉が苦しむことになるため、その励ましのために見せたものだったことが判明する。

夏葉はどんな困難も主人公となら乗り越えていけると決意し、話は終わる。

発売前のボイスドラマにしては登場人物や夏葉に起こる問題についてネタバレしすぎなのでは、と思う内容だった。

 

 

〇えみの告白

 

えみが主人公のボイスドラマなので、すみルートアフター後のお話。

主人公がえみからプレゼントと言ってビーズの指輪をもらう。それは、本編序盤の夏祭りで主人公と夏葉のおそろいで買ったものだった。聞けば夏葉はその指輪は私には重すぎるので、えみにあげると話したという。夏葉からその指輪は好きな人に告白するときに渡すといいと言われたえみは、大好きな人である主人公に「こくはく」し、その指輪を渡したのだった。

しかし「こくはく」の意味がよくわからないえみに、主人公は「こくはく」が漢字で書けるようになったらもう一度渡してほしいと頼む。

夏葉ルートではこの指輪は本編ラストで婚約指輪として使われるが、それ以外のルートでは明示されていなかったので、結構重要な話だと思った。

主人公との大切な思い出である指輪をえみにあげたときの夏葉の気持ちや、えみが主人公に渡すことを夏葉は見越していたのだろうかと考えると、なんだかせつない気持ちになる話。

 

 

〇夏葉からのラブレター

 

夏葉が主人公だが、えみルートアフター後の夏葉のお話。

えみアフターで主人公たちが目覚めた夏葉を連れて家に帰り、祝宴をあげていたとき、夏葉は途中で宴を抜け出して、自分の部屋で手紙を書いていた。

それは主人公への想い。本編では夢の中に迎えに来た主人公に夏葉が告白してフラれ、主人公への未練を捨て去って目覚めたことになっていたが、そう簡単に割り切れるものではなく、今でも夏葉は主人公に未練たっぷりだった。

自分が主人公の事を好きで居続けることで主人公が苦しむことが嫌だから、失恋したことにするが、好きだという気持ちは消えず、これから主人公の事を好きではなくなったフリをしながら一緒に暮らしていく覚悟を決める夏葉。

自分の想いを綴った手紙をきっと同じ気持ちでいるだろうありすに託し、10年後の自分に渡すように頼む。

10年後、自分が手紙の事を忘れていたり、他に好きな人ができていればそれでよし。しかし、まだ忘れられていなければ、そのときはもう一度主人公に告白することを決める。

めちゃくちゃに重たい話。メインヒロインの3人が主人公のことを好きすぎるし、あきらめが悪すぎる。唯一すみだけは、主人公の幸せを願っているので、他のヒロインとくっついても何も言わないが。

 

 

〇夏葉のけっこん式リハーサル!

 

夏葉が主人公でタイトル通りの話だが、ウエディングケーキの代わりの夏葉の誕生日ケーキに刺すろうそくが、本当は18本貰おうと思っていたが在庫の関係で12本しかもらえなかったという言い訳が入るところは面白かった。()

あと夏葉ルートの夏葉からの、すみとありすが夏葉に嫉妬した場合の想像の描写がかなりリアルだった。こういうのすき。

 

 

〇すみと一緒に模様替え

 

特に言うところのない話だが、えみが産まれる前に子供部屋を作るため、すみとふたりで模様替えをする話。こういう本編のストーリーの補完となる話はいいと思った。

 

 

十二単と折り鶴と

 

新婚旅行をしていなかったすみと主人公が、えみを有島家に預けて2人で桂浜まで新婚旅行に行く話。これは本編での、一度でいいから桂浜でクジラを見てみたいというすみの発言を汲んだもの。旅館でくつろいでいた2人だったが、飛車角が逝ってしまったことに責任を感じていたいづものみこのはからいで旅館の内装が変化し、すみには結婚の祝いとして十二単が贈られる。また枕元には折り鶴があり、2人はこの折り鶴が飛車角への想いを根の国まで届けてくれることを願う。

これも日常の補完となる話で、またすみルートの雰囲気が好きなのでよかった。

 

 

〇ななは。子供を。つくって。みたい。

 

すみルートアフター後の、なな様が主人公の話。主人公ととおことの間に男の子が生まれたことがなな様の口から語られる。本編ではもう二度と会わないと言っていたなな様だが、土地神としてえみやとおこの息子の加護をしているうちに子供に興味がわき、主人公とセックスをしたいと思ったという話。

とおこと主人公との間の子どもという重要な情報を一行で流してしまったのはもったいないと思った。まだ話作れそう。

 

 

この他にもメインヒロインの3人はそれぞれ主人公への7分程度の告白ボイスがあったり、夏葉のみ告白ボイスが大中小の3種類あったりする。

 

 

 

あやかし郷愁譚について

 

前回少しだけ説明したが、Loseの同人音声部門であるWhispは、2018年12月から「ものべの」のスピンオフ作品群である「あやかし郷愁譚」シリーズを月1回ペースで刊行している。

ストーリーはすみルートアフター後の世界線で、なぜか現世に顕現したご開祖ちゃんが、ひめみや博師の主人公の助けを借りて各地の忘れ去られた妖怪たちを茂伸に招待していく、というもの。なぜ忘れ去られた妖怪なのかというと、妖怪は人から認識されることでその存在を保っているため、人から忘れ去られた妖怪は消えてしまうからである。このあたりのことは私の前々回の記事で少し語っていたりする。

「ものべの」から見る妖怪についての持論とその他雑感 - shanの落書き帳

 

音声作品中では主人公は本編主人公の沢井透ではなく、通りすがりの旅人の「あなた」であり、たまたま出会った、その作品のヒロインの妖怪との交流を通じて絆を深めあっていくというもの。音声作品なので基本的には耳かきや添い寝などがメイン。

 

なお全国47都道府県の妖怪を網羅していく予定とLoseのci-en上で語られているので、最終的には膨大な数になることが予想される。

 

 

 

ここで音声作品とは?となった人もいるかもしれないので、簡単ではあるが音声作品について紹介しようと思う。

音声作品とは一般的には耳かきなどのASMR音声、睡眠導入音声、また催眠音声などを指す言葉で、バイノーラル録音という、左右や三次元を感じられる音声が特徴である。DLsiteなどの販売サイトで発売されている。

全年齢から18禁まで様々なものがあり、同人作品が主流で界隈で有名な声優さんも多数存在している。

個人的には情報が音のみなのでエロゲとは似ているが別物だととらえており、実際出演している声優さんも同人声優さんがメインだが、最近はエロゲにも出演されている声優さんが逆に音声作品に声を当てることも増えている。

ちなみにASMRとは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、人が聴覚への刺激によって感じる、心地良かったり、脳がゾワゾワしたりといった感覚のこと。日本でこの言葉が流行りだしたのは大体2014年頃だと思っており、実際私もそのぐらいからASMRをはじめとした同人音声を聞くようになった。

音声作品は、特殊なものを除き行為を受ける相手の反応が存在しないので、どうしても女性側が男性を攻めるといったシチュエーションになりがちで、実際M向けの作品も多いが、私は音声作品に特徴的な、耳舐めという音声が非常に好きである。

ちゅぱ音をさらに進化させたような、文字通り耳を舐める音は、高性能マイクと合わさって、演じる声優さんごとに舌の使い方といった特徴が色濃く出て、さらに至近距離での録音に伴うリップノイズなどにフェチズムが介在している。

またエロゲではセックスでのフィニッシュ時にヒロインが叫ぶことが多いが、音声作品ではヒロインがイクときには息づかいで表現することが多く、その引き算の表現方法というのも好感が持てる。

 

全年齢での音声作品のメインは耳かき音声になると思っているのだが、この耳かき音もピンキリであり、耳を削られているように感じるものからリアルに近いものまで様々である。黎明期の耳かき音は本当にひどいもので、うるさすぎて聞いていられなかったが、最近ではリアルに近いものが増えてきている。

 

この耳かき音の発展にはストーリーがある。話が脱線するが、伊ヶ崎綾香さんという同人声優の方がいる。この人は2012年頃からニコニコで「二声の人妻」という名前で耳かき音声を投稿していた人である。私も耳かき音声を漁っていてたどり着き、よく聞かせてもらっていた。彼女は昔、東京にある耳かき専門店で働いていたことがあり、耳垢をコレクションしているぐらい、耳かきに造詣の深い変態人である。よりリアルな耳かき音を追求した彼女は、研究を重ねて耳かき音声業界に一石を投じるようなクオリティの高い耳かき音声を完成させ、それを配布した。耳かき音声に自信のないサークルは、この音を使う事で耳かき音のクオリティを上げ、作品全体のクオリティを上げることにつながった(個人の意見)。

また伊ヶ崎さんは近年では音泉冠番組を持っていたり、エロゲやアニメへの出演、また自らエロゲをプロデュースしたりと大出世しているので興味のある方は是非彼女の音声作品を覗いてみてほしい。個人的には耳元でねっとりと囁くお姉さん系の声が好き。

 

話を戻す。

この「あやかし郷愁譚」シリーズは全年齢対象で、フォーカスされた妖怪に特有の、音と関連した事柄を伝えるのがメインだと考えているが、それだけではなく、音声作品には珍しくできれば台本を読みたくなるほどのストーリー性があるのが特徴だと考えている。例を挙げれば前回紹介した、人に忘れ去られて消えてしまいそうだった「送り雀」のひよ、などである。2020年6月現在、全ての作品を聞くことはできていないが、番外編としてものべの本編に登場した6キャラの分は視聴したので、感想を書いていきたいと思う。

なお何度も書くが、この「あやかし郷愁譚」シリーズは全てすみルートアフター後の世界線となっている。またこの番外編のみ、明言されていないが主人公が「あなた」ではなく「沢井透」となっている。

 

 

〇第一弾 ~あかしゃぐま すみ~

 

えみがお泊り保育(えみは送り雀のひよが経営する保育園に通っている)に向かい、その付き添いとしていくはずだったすみの代わりを夏葉が申し出た結果、主人公と久しぶりに2人きりでゆっくり過ごせることとなった休日の1日を描いた作品。

ご開祖ちゃんの手伝いで全国を飛び回り、一筋縄ではいかない妖怪たちを茂伸に招くために悪戦苦闘して疲労困憊し、家に帰ってきた主人公を癒すため、すみは料理を作り、蒸しタオルと足踏みマッサージ、耳かきと添い寝でお世話してくれる。

ASMR要素としては料理中の包丁や鍋の音、またマッサージと耳かきの音ということになるが、この作品の真骨頂はシナリオにあると思う。

主人公に耳かきをしてあげながらこれまでのことを振り返るすみが、飛車角を失ったときの事を思い出して静かに泣くシーンは鳥肌が立った。佐倉江美さんの演技が本当にうまくて、泣いているときのわずかに声を震わせた話し方や間の取り方から臨場感がビシビシ伝わってきた。特に間をとる、というのはテキストがあるエロゲでは十分にできないことかもしれないと考えた。

本編では飛車角が逝ってしまったことに関して特に深くコメントはしなかったすみだが、ここですみの気持ちが聞けたのは最高で、本編にいれるべきなぐらいだと思った。

またすみから主人公への愛が、主人公への近づき方、声の出し方から伝わってきたし、自分は無声音での囁きが死ぬほど好きなので、それが好みに近くて本当に良かった。

 

無声音で特に「k」の音を繰り返す「カリカリ」などの音が耳にクると思うんですが、どうですか。

 

最後に添い寝しながら、えみの弟か妹を作ってやろうと思ったが、疲れているのならば焦らなくともよい、と言ってくれるすみが最高に可愛くてよかった。

 

これはすみだけに限った話ではないのだが、このサークルはせっかく高級なバイノーラルマイクを使用しているのに(作品サイトにバイノーラルマイクのスペックが書いてある)、収録環境が悪いのか、終始テレビの砂嵐のようなノイズが裏に聞こえるのがマイナスポイントだった。情報が音しかないので集中している分余計にうるさく聞こえ、話に集中できないのでそこだけが非常に残念だった。

 

 

〇第二弾 ~七面頬 なな~

 

主人公の疲労が魂レベルまで及んでいることを心配したなな様が、主人公を癒すため自らの住処であるオオトメ釜の洞窟に主人公を招待して主人公をもてなす話。音声作品の主人公は癒しのサービスを受けるために、疲れていがちである。

洞窟の中ということで時折水の音が反響する環境音の中、主人公に対して神域の泥を使った泥マッサージ、耳かき、そして添い寝しながら耳元で早口言葉を言ってくれる。

早口言葉というのは、なな様の短編で主人公となな様が行った遊びで、なな様は自分の言葉で話す時には考えながら話すためにゆっくりとした話し方になってしまうが、書いてある文字を読む分にはいくらでも早く読めるということを聞いた主人公がなな様を試すために行ったものである。なな様はその時のことを覚えていて、主人公とする唯一の遊びとしてそのことをとても大事にしていたのだった。

ストーリーでは、主人公がご開祖ちゃんにやらされている各地の妖怪集めによって、茂伸の調和が乱れ、土地神としてそれらを調整するのが大変だという事が語られる。しかしなな様もご開祖ちゃんのやろうとしていることを理解しており、ご開祖ちゃんに賛同している主人公のことも応援しているといった話。

早口言葉を言わされる声優さんが大変だなと思った(小並感)。

「海軍機関学校機械科今学期学科科目各教官協議の結果、下記の如く確定、科学、幾何学、機械学、国語、語学、絵画、国家学、撃剣」

長すぎィ!けどカ行が多くて満足。

 

なな様が時折主人公のことを遠見の術を使って観察していたことや、その中ですみにしてもらっていた耳かきを自分もしたいと思い、耳かき棒の代わりに固くした自分の髪の毛でそれを行うところ、また主人公が寝入った後にすきと囁くところが可愛かった。

 

 

〇第三弾 ~妹 夏葉~

 

今度はすみとえみが2人でお泊り保育に向かい、また隣の有島家も家族旅行に出かけて主人公と2人きりになった夏葉が、妖怪の誘致に疲れた主人公を癒す話。

2人で山で草ぞりで遊び、縁側に帰ってきてスイカを食べ、耳かきをしてあげて、添い寝する。主人公を癒すのではなく、夏葉の元気を分けてあげるようなおもてなしをする前半がすごく夏葉らしい。

ストーリーとしては山遊び中に風が吹いたことで飛車角の事を思い出し、耳かき中に夕立が降ってきたことで、飛車角への想いが溢れるシーンがある。

最近は雨が降っても飛車角のことを思い出さなくなってきたことが怖くて悲しいと語る夏葉。主人公は晴れの日には傘のことは忘れていいんだと話す。主人公の声はないので夏葉が聞き返す形になっている。この「晴れ」というのは天気の事ではなく、気持ちの事であり、夏葉の心が前を向いて進みだしているから、心が晴れている日が多くなっているのだと。だから今は忘れてもいい、きっと最後に振る雨でまた飛車角のことを思いだすし、その時には飛車角が傘としてきっと自分を守ってくれるだろう、と。

2人きりの夕立の降る縁側でこんな会話をされたらエモが溢れすぎて爆発してしまった。

ここでも、泣きそうになる夏葉の、涙をこらえて最後には笑う表情の表現の仕方と息の使い方がうまいし、誰かの死を乗り越えるための傘をうまく使った考え方に感動した。

 

最後に添い寝しながら、最近は主人公に頭をなでられてもドキドキしない、ただ安心するだけだ、という言い方で主人公への恋心を捨てたことを暗に伝える夏葉が大人だと思った。

というか、夏葉がメインの話なのにすみルートアフター後の世界線という設定のせいで夏葉が主人公と付き合っていないのは夏葉ファンからすれば納得いかないのでは?

私はすみが好きなので別に構わないが。

 

 

〇第四弾 ~幼馴染 ありす~

 

問題の話。先ほども話したが、これはすみルートアフター後の話なので、ありすはすでに主人公にフラれている。その上で主人公の面倒を見てくれるという何とも業の深い内容になっている。

遂に過労で倒れてしまった主人公は有島診療所に運ばれてありすの父の診察を受ける。たまたま次の日が休診日だったことと、ご開祖ちゃんに頼まれたことから、ありすは診療所を貸し切って、主人公の疲れを癒してあげることにする、という話。

身長体重、聴診、採血の健診を行い、耳ツボマッサージ、耳かき、添い寝を行う。

 

ここで公式からのありすのプロフィールを引用する。

 

 

 

【一人称】わたし

【年齢】女性に聞くことじゃないと思いますよ?

【外観】

村一番のおしゃれさんで、少女たちと一部あやかしたちのファッションリーダーでありつづけた有島さんちのありすちゃんも、
目が溶け出すんじゃないかとご両親が心配になるほどに泣き暮らした大失恋を経て――母、有島菜穂子のおもかげを色濃く感じさせる、
超正統派の美人さんへと成長した。

しかも職業は看護師、ナース。

結婚適齢期に達したこともあり、モテにモテいるのだが、いまだに男性との交際経験はゼロ。

両親をはじめとするまわりをものすごくやきもきさせている。

が、本人はいたって気楽に(なふりをし続け)過ごしており、
今日も今日とて軽率なきやすさでお隣さんに
「ねぇ見てください、このネイル! わざわざ高知市内までいってやってもらったんですよ~」等々、遊びにいってはおしゃべりをして、
のんきな(ものに見えて未練にどっぷり満ち満ちた)毎日を送っている。

 

【性格】
一見すると明るく軽い女の子。
接してみれば、気安いうえに気遣いができる女の子。
その実、恐ろしく一途で重い恋心を抱え続けている有島ありすちゃんの本質は――
おとなりさんが結婚しても、一人娘を設けても、お仕事続きで全国を飛び回られてしまい、ほとんど接点がなくなっても――
いまだまったく……いいえ、ほとんど、変化を遂げておりません。

あきらめなくちゃと思っていて。わかっていて。
それでもやっぱりあきらめきれずに。

すみちゃんの不幸を願うわけでは1ミクロンもないのだけれど――
それでもいつか、どこかでなにかの行き違いかなんかが発生したら、そのときにはわたしもワンちゃんあるかも、とは思ってしまい――
そうなったときにお隣さんの一番近くにいられるようにと、自然自然にふるまってしまい――
結果、無数の恋のチャンスをどぶどぶドブに捨て続けている……
ありすちゃんは、やっぱりそんな女の子――というか、女性です。

それでもやっぱり、変化はしてます。
その恋心を、変質させてはいるのです。

お隣さんと恋したい。結ばれたい。結婚したい。
そんな鮮やかな欲望は、いまはほとんど枯れ果ててます。

かわりに今は……ただ、見守りたい。
幸せになる姿をみたい。
もしもわたしの手が必要なそのときは、どうか支えにならせてほしい――。

そんな、切ない恋心へと、ありすちゃんの恋は変化していっているのです。

 

 

これだけでもうエモさが天元突破している。

まず、主人公が倒れる前に作品の導入をする場面があるのだが(どの作品にもある)、ありすは主人公の家の前で焚火をして焼き芋を焼いている。これは主人公の顔色が悪いことに気付き、そのことを面と向かって言ってもはぐらかされてしまうため、焚火で主人公の目を惹いてそれとなくそのことを伝えるためである。主人公の性格を知り尽くしており、なおかつ控え目なアプローチでもうすでにヤバい。

 

話が進むと、主人公が耳かきで寝入ってしまい、布団へ移動するために肩を貸していたありすもろとも倒れこんでしまって2人が添い寝することになる。

完全に寝てしまった主人公に対してありすは想いを吐露していく。

本編で初めて主人公とすみが結ばれた次の日、ありすは2人の関係性が変わったことに気付き、それまで大事にしていた主人公からの贈り物、山で見つけた蛇の抜け殻や雑誌の付録のポストカードなどをすべて燃やして想いを断ち切ろうとした。しかし、あきらめきれず、コレクションを再開させてしまう。

ここで、主人公からの贈り物がほかの人から見ればガラクタ同然なところがポイントが高いと思う。

すみとの結婚式に出席した夜、またコレクションを燃やし、距離をとるために東京の大学に行こうと考えたが、夏葉の病気を言い訳にしてできなかった。

ありすが恋を完全にあきらめられたのは、飛車角がいなくなった後、夢に飛車角が出てきたときだった。飛車角は「頑張った分、ありすお嬢は誰より幸せになれる、ありすお嬢の空には、必ず鮮やかな虹がかかる」と励ましてくれる。

ありすは恋をあきらめたが、何度あきらめても、恋を押しつぶしても、愛は形を変えられない。今でも主人公の事を愛しているのだとありすは言う。

主人公と過ごした日々が、思い出が、どうしようもなく甘くて苦しくて大切で、他の何にも代えられない。だから今では主人公の幸せを願っているのだと。

最後は「おやすみなさい、だいすきなあなた」で締められる。

 

なんだこれは...。愛が重すぎて潰されそうでヤバい。書ききれなかったが、ありすのセリフの一語一句から主人公への愛情が伝わってくるし、恋をあきらめたと言っていてもまだ未練が残っているのがすごい。

添い寝時には天井にいるちまに向かって、今聞いたことは忘れて、これからいう事は聞かないで、というのも設定が凝っていてポイントが高い。

 

とにかく作者の性癖を煮詰めて固めたような作品。ポツポツと語るようなヒマリさんの演技もgood。

 

 

〇第五弾 ~牛鬼 とおこ~

 

主人公の2人目の妻として、家が嫌いなとおこのために主人公が1日山でとおこと一緒に過ごす話。えみたちの稲刈り体験のために主人公の家の倉に眠っていた千歯扱きをとおこに牛車を引いてもらって運ぶところから始まる。その後戻ってきてとおこの蹄を削り、耳かきをしてもらい、添い寝をする。

個人的には牛車を引いているときの音が好きだった。

寝るのは星の天井、干し草の布団で、リアルだと蚊が大変そうだなどと考えてしまった。

また主人公が寝入ったあと、とおこは子どもを孕んだことを報告してくれる。よって時系列的には子どもができる前の話となる。

とおこのゆっくりとした話し方はゲーム本編だと遅く感じることもあったが、音声作品だと適度な癒し感があってちょうどよかった。

 

 

〇第六弾 ~星辰姫宮 ご開祖ちゃん~

 

なな様から主人公が魂レベルで疲れていることを知らされたご開祖ちゃんが、主人公を癒すために姫宮の本社に主人公を招く話。

2人で本社の掃除を行い、その後主人公の疲れを払うカミゴト(祝詞)のようなものを行う。そして耳かきからの添い寝という流れ。

これだけやると耳かきにもバリエーションが出てきて、ご開祖ちゃんはジェル状の耳かき棒+鐘の音付きの耳かきをしてくれるのだが、何だか凝りすぎていて普通のでよかったように思う。

添い寝では神という存在を活かして別ルートを見てきた話をしてくれる。特にありすルートアフターで自分がした活躍や、根の国で主人公とご開祖ちゃんが2人きりで過ごす世界線について触れる。またこの「あやかし郷愁譚」シリーズでご開祖ちゃんが顕現した理由は、消えそうな妖怪たちを救うためであるという考えを告げられる。

自分はもともとこの世界線においては力を持っていなかったが、同じく別の世界線を見る力を持っていたなな様によって、主人公がつけたご開祖ちゃんという名前を教えられ、その名前が茂伸中に広がったことによって認識され、力を得たのだと。

この話で、すみルートアフター後の平和になった茂伸にご開祖ちゃんが顕現した理由づけがなされたので、今後の展開がやりやすくなるのではないかと考えた。

 

また、作品終了後に、演じた声優名義で5分程度のインタビューがあるのだが、この作品だけ上原あおい名義ではなく、ご開祖ちゃんに対してのインタビューになっていた。

上原あおいさんは以前ツイッターで、諸事情により声が出せない旨の発言をされていたので、事務所の規約の問題なのではと考えた。

 

個人的には上原あおいさんの無声音での囁きが聞きたかったのだが、この作品では囁きがすべて有声音だったのが残念。

 

 

 

・終わりに

 

本編登場キャラの話はなんとか聞き終えたので、時間とお金の許す限りこれからもこのシリーズを追っていければと思う。

えみの作品も出してください。