shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題10

 

みなさんこんにちは、shanです。

この「無題」シリーズも今回で10作目を迎えました。特に意識していたわけではないのですが、10作目という節目にふさわしいような作品をプレイできたと思うので、よければお読みいただければと思います。

 

 

 

今回紹介するのは、OVERDRIVEが2019年12月20日にブランドの引退を公表して作られた最終作である「MUSICUS!」です。

シナリオが複雑で、完璧に理解しているわけではないので、文章が支離滅裂でうまく伝わらないかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。

 

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MUSICUS! Official Web Site

 

本作は、同ブランドで一番知名度が高い(であろう)「キラ☆キラ」を意識して作られており、シナリオライターも同じ瀬戸口廉也を起用しています。またプロデューサーがmilktubのbambooさんということもあってバンドの描写に力を入れていることで有名です。

本作はクラウドファンディングを用いて制作資金を集めたことでも有名であり、クラウドファンディングの支援金額がサイトの最高額を達成したことでも話題になりました。

私は「キラ☆キラ」からOVERDRIVEのファンになり、本作のCFでの支援も行っていました。ゲーム本編の感想に移る前に、まずはCF面で思うことについて述べたいと思います。

 

 

・CFについて

 

「キラ☆キラ」を書いた瀬戸口廉也氏の文章が気に入った私は、彼がシナリオを書いた他の作品もやりたいと思い、「無題5」でも書いた「CARNIVAL」をプレイしてみました。「CARNIVAL」はかなり古い作品という事もあったのですが、後日談が小説として販売されており、またその本は今では入手困難で、手に入れることは大金を積まない限り不可能となっていました。作品をプレイするにあたってはアフターストーリーや特典のドラマCDなどの補足にこだわる私としては、関係するシナリオはすべて読んでおきたいものでした。「MUSICUS!」もCFの特典として後日談を描いた瀬戸口廉也の書き下ろし小説がつくことが分かっており、ここで逃すとプレミアがついてしまうことを予想した私はCFの支援を決めました。

私はCFの支援をするのは初めてだったので、比較することはできないのですがまず前述した特典小説を手に入れるためには最低でも6960円のコースを支援する必要がありました。当時の私にとってはかなりの大金です。さらにCFサイトを隅々まで読んでも、CFのリターンにゲーム本体がついてくることが書いておらず(そのはず)、当時の私は小説一つに7000円弱を支払う事にかなりの決断を要しました。リターンが帰ってきてみると、ゲーム本編も付属していたわけですが、それならそのことをリターンのところに明言しておいてほしかったです。

(今になって見直すと、「パッケージ」が付属すると書いてあり、私はCF版限定の外箱のみがついてくると考えていました。どちらにせよ書き方がわかりにくい)

しかしそのCF版の本編も問題で、標準として付属した本編はE15版で、R18版へのアップデートには10696円以上の支援コースで手に入る「不思議なTシャツ」に付属するシリアルコードが必要でした。そのことに対する言及もなく、主人公やヒロインの心情の理解のために、特にシナリオゲーにおいてはR18シーンは必要であると考えている私にとってこれは大きな問題で、結果的にR18版を正規の値段で買い、小説を6960円で買ったことになりました。またOVERDRIVEといえば劇中に出てくる楽曲が素晴らしく、できれば手に入れたかったのですが、本作は劇中歌のアルバムをリターンとして手に入れるためには15696円以上の支援が必要であり、さすがに大金過ぎて買えませんでした。

本作を買いたい大多数の人が一番欲しいのは小説とアルバムであるのはわかりきっており、Tシャツやらステッカーやらでリターンを量増しするのではなく、この二つを下から二つのコースにおいてほしかったです。

 

あとこれはシステム面の問題なのですが、ゲームプレイ中に場面転換や登場人物の表情が変わるたびに頻繁にフリーズして再起動を要求され、非常にストレスがたまりました。こういうゲーム以外のところでストレスがたまるのは、プロとしてお金をとって発売されたものである以上好ましくなく、その一点において他人に薦めづらくなっているところが残念だと考えました。

 

それでは長くなりましたが、本編に移ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

 

 

・攻略

 

攻略可能ヒロイン(エンド数)は4つ。

プレイ時間は、共通が各エンドによって異なるので全体として15~20時間ほどだろうか。

シーン数はメインヒロインが2つで、あとは1つずつ、計5回。シーン数が少ないのはこのブランドの特徴であり、またシナリオゲーで重要な場面ではないため特に問題なし。

私の攻略順は、弥子→めぐる→澄(BAD)→三日月であり、これでいいのではないかと考える一方、特にこのルートは最後の方が、とは思わなかった。

 

・シナリオ

 

前に少し触れたが、今作のライターは瀬戸口廉也氏。エロゲとしてのシナリオは「CARNIVAL」、「SWAN SONG」、「キラ☆キラ」に続く4作目(多分)であり、小説家としては唐辺葉介名義でいくつか出版している。私が読んだことがあるのは「Psyche」と「電機サーカス」。陰鬱で、人間としてどこかが欠けている主人公の描写に定評がある(と思っている)。

本作のシナリオは、とある事情で高校を中退し、定時制高校に通っていた主人公、対馬馨(つしまけい)が市の懸賞に応募した小説をきっかけに、インディーズバンドの遠征ツアーレポートを書くことになり、そこで同行したバンド『花鳥風月』の演奏に感動してしまう。数日後、初めてのライブの感動を忘れられない馨の元に届いたのは『花鳥風月解散』のニュース。突然の解散に納得いかない馨はリーダーの花井是清(はないこれきよ)を説得に向かうものの、議論は平行線でらちが明かない。その後も顔を合わせるたびにバンド再開を求める馨に、花井はこう言う。『馨君、きみがおれのかわりにロックをやらないか?』

この花井是清という人物がかなりの変わり者で、ツアー中馨に音楽の無意味さを滾々と説く。曰く「音楽は単なる音の振動の集まりである」とか「音楽で他人が感動するのは、歌い手のバックボーンやストーリーに感動しているだけだ」とか「魂を込めた演奏なんて言うけれど、それは誰にもわからない」とかなんとか。その中でも是清が言った「音楽の神様はいるかどうか」という問いを考えていくのが、物語全体のテーマとしてあると思う。

その後主人公は、是清の妹である花井三日月(はないみかづき)と共に是清の曲を練習し、初めてのライブを行うことになるのだが、そのための新曲を書いた後是清が自殺してしまう。それでライブは立ち消えになってしまうのだが、すでに音楽にはまってしまった主人公は別のバンドに入れてもらったり、自分でバンドを組んだりしてバンド活動を続けていく。以降の主人公の音楽に対する考え方の違いによってルートが分岐していく。

 

・キャラ

 

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主人公が音楽の道をあきらめ、親の跡を継いで医者になるという本来の道に戻ると弥子ルートに入る。

弥子は主人公の一つ下(18歳)で同じ中学に通っていた。父親は売れない画家でアル中をこじらせて死亡。残された母親も体を壊しており、生活費を稼ぐために昼はスーパーでレジ打ちのパートをこなし、夜は定時制高校に通っている。このような境遇でありながら毎日が楽しいと語り、両親の事を誇りに思っているという絵にかいたような善良な少女。

ゲーム全体を通して人の心がないと語られている主人公が唯一好きだと明言するのがこのルートであり、このルートでは主人公は『NIGHT SCHOOLERS』というバンドを定時制のクラスメイトと結成し、全日制の昼の文化祭で披露することになる。文化祭でバンドをやるというのは前作「キラ☆キラ」と同じなのだが、「キラ☆キラ」の主人公は楽器初心者で、バンドメンバー全体で練習する雰囲気が良かったのに対し、本作では主人公はすでにインディーズバンドのサポートメンバーをこなしている経験者であり、指導する立場にあったのが、いまいち文化祭の雰囲気に乗り切れなかったのが残念である。まあ主人公の非人間エピソードとして一日16時間ギターを練習していたというのが語られたりするのだが。

このルートでは主人公はバンドにのめりこむと、音楽を辞める決心が鈍るという理由でドラムを練習することになる。しかし、メンバーとやる気の違いからけんかになったりと、最後まで音楽に対する未練を残したまま文化祭のステージを成功させたところでルートは終わる。

このルートでの主人公の考えは以下のセリフに表れており

 

何より一度きりの人生なのだ。一度きりだから全てを失うような失敗はできないという考えと、一度きりだからやりたいことをやらなくてはいけないという考えのどちらが正しいのか?

 

という考えから、今回は主人公は安定を選択したということになる。

実際大多数の人が人生でこの主人公のような選択をするのではないかと考えさせられるルートだった。少なくとも私は絶対に安定択をとってしまうし、選択に対して後付けの理由を用意して生きていかなければならないのだと考えた。

 

それはそれとして、定時制に出てくるクラスメートが素晴らしい。

4人の弟妹をもつ長女で、その世話のために定時制を選択した19歳のギャルの佐藤さんや、17歳で子供を作り、今では建築現場で働く21歳の龍さんや、対人恐怖症で引きこもっていた18歳の小川さんなど個性的なキャラがそろっている。

私は人生を一度ドロップアウトした奴らが頑張る感じの王道展開が好きなので、キャラ的にはこのルートが一番よかった。あともう一人、物語全体にかかせない金田というキャラがいるのだが、彼の事は後で述べようと思う。

『NIGHT SCHOOLERS』として発表されている楽曲は三曲あるのだが、どれもポップな感じで好みだった。特に校歌アレンジは、「キラ☆キラ」から続いており、またジャンルは変わるが「けいおん!」でもあり、既存のおカタい曲をアレンジするという点において私の気に入っているジャンル?である。

 

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主人公が音楽をあきらめないと、定時制高校を中退することになる。そして花井さんの妹である三日月をもう一度呼び戻し、『Dr.FLOWER』というバンドを結成して音楽活動を行っていくことになるのだが、彼女も主人公にスカウトされた、元『花鳥風月』のベーシストである。

ライブさえできればあとは何もいらないと考えるタイプで、主人公がバンドの方向性を考えていく中で彼女よりの考え方を持つようになると、めぐるルートに入る。

母子家庭であり、母親の勧めで小さいときからアイドル活動をしていた彼女は、成長するにつれて人生に意味を見出せなくなっていく。母親は再婚して自分に興味を向けなくなり、アイドルも辞めることになる。そして自殺しようと考えていたとき、アイドル時代曲を提供してくれたとあるプロデューサーと出会い、その人がベースを教えてくれたことで、音楽に生きる意味を見出す。その時のプロデューサーの言葉である、辛いとき、苦しいときこそ音楽をやるんだ。音楽は空気の振動だ。その中には人間なんて言う存在は一人も存在しない。というセリフには感動してしまった。めぐるルートではそのプロデューサーが末期ガンで入院しており、過去の浮気や不祥事のせいで家族との縁も切られ、さらに痴呆症により唯一会いに来てくれていためぐるの事や、音楽に対する情熱を失ってしまう。自分を救ってくれた恩人が音楽をけなすことにめぐるは絶望し、主人公は、ライブで彼の昔の曲を演奏し、それを中継で見せることで昔の情熱を取り戻してもらおうとする。結果的に曲を聞いたことで老人は昔の情熱が戻り、めぐると言葉を交わしたのち、息を引き取る。主人公たちは相変わらずインディーズではそこそこの評価を得ながらなかなかメジャーデビューできず、ただひたすらライブをやって、音楽を続けていくという終わり方。

このルートでは、音楽で成功した先人の没落から音楽の意味を考えていくことになる。結論としては主人公と、対バンするバンドリーダーとの会話中にある、すべての事象には意味はないが、価値を見出すことはできる、ということだろうか。

 

このルートは唐突だとか、普通だとかあまり評価されていないらしいのだが、私は昔お世話になった老人の死を利用した王道シナリオに弱いので普通に良かったし感動した。話が一番わかりやすかったのもよかった。

 

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めぐるルートに入る選択肢で、音楽を通じて何か伝えたいという考えを持つと、彼女のルートに入る。

『花鳥風月』の花井是清の妹でボーカリストアルビノでひきこもり。独特の思考方式と行動様式を持ち、いわゆる常人には理解できない天才タイプである。

 

これはシナリオとは関係ないのだが、このキャラには声があっていないという感想が多くついており、確かにこの容姿から想像される声と比べると透明感が足りていないと感じるが、言動を考えるとこれでいいと思わせるレベルであり、また作中で三日月が世間で勝手に思われているイメージとの乖離に言及することもあって、声については何も言うことはない。しかし、是清や主人公が天才だと連呼するほどはボーカルとして何か感じるかと考えればそういうわけではなく、むしろそちらの方が問題だと思った。まあ、天才と描写されるものを実際に表現しようとすればどうしても難しいのでそれについては仕方がないともいえる。

 

三日月ルートではめぐるルートではサポートメンバーで埋めていたドラムが正式に決まり、完全体の『Dr.FLOWER』になる。

そのメンバーがこいつである。

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最初に出てきた時から男だと思っていたのだが、なんだか女のような描写をされるので、女なのかと思っていたらやっぱり男だったやつ。一人称は「ボク」。立ち絵に胸があるのは、パッド付のブラをつけているからで、パンツも女物。外では男女別のトイレには絶対に入らない。両親が音大出の音楽一家に育ち、理想が高く、自分にも他人にもそれを求めてくる。主人公の音楽に惚れこみ、『Dr.FLOWER』のドラムを志願する。実は意外と面倒見がよく、常識人でいいやつ。最近気づいたのだが、私は自分を男だと思っていて、なおかつ自分の信念のために女の子として振舞っているタイプの男の娘キャラが好きらしい。

OVERDRIVEは声優が非公表で、ダメ絶対音感を持っていない自分にはほかのキャラを特定することはできなかったのだが、このキャラの声優は渡辺明乃さんではないかなと考えた。

 

 

 

三日月ルートを進めていくと、彼女にソロデビューの話が降ってくる。そこで彼女にソロデビューを進めると澄(BAD)ルート、バンドに残ってほしいと言うと三日月ルートに入る。

 

 

ここでは先に澄(BAD)ルートについて説明したいと思う。

 

三日月は主人公に必要とされたからバンドをやっていたのだが、主人公が三日月の才能を埋もれさせていてはいけない、この才能は世に出すべきだと考え、三日月にお前は必要ないといいはなち、三日月と決別するとBADルートに入る。ソロデビューを果たし、売れっ子シンガーになった三日月と対称的に『Dr.FLOWER』は一向にメジャーデビューできない。前述の風雅が、主人公との音楽性の違いをはっきり理解してしまって、意見を言わなくなり、それでも昔主人公とした、このバンドを一番にするという約束を守るために一人で頑張り続けた結果、ストレスと過労から精神を病んで倒れてしまう。それがきっかけで主人公は『Dr.FLOWER』の解散を決める。すべてを捨て、一人ボロアパートで曲を作る主人公だが、次第に自分が作った音楽の価値について信じられなくなっていく。収入を親からの仕送りに頼り、日々暗中模索する主人公は現実逃避からストリートライブをはじめ、そこで来島澄という女性に出会う。

このルートはこの人物から澄ルートと名付けられているが、公式サイトの人物紹介にすら出てこない、しかもBADでのみ登場するキャラがろくなはずはなく、彼女には両親がおらず、施設で暮らす19歳の花屋のアルバイトで、ストレートライブを行う主人公の演奏を上手だとほめてくれる。それがきっかけで主人公と澄は付き合って同棲するようになるが、主人公がどんな曲を作ってもすごいとしか言わない。主人公には曲を作っていてくれればそれでいいという完全な依存関係になる。主人公は曲を作り続けるが、どんどん方向性が狂っていき、今まで曲を卸していたレーベルに、曲が理解できないと言われ、サブカルカルト集団のような集会に呼ばれるようになる。

それでも主人公は曲を作り続けるが、ある日澄が交通事故にあって死んでしまう。澄は交通事故にあう前、主人公が作った曲をイヤホンで聞いており、それがなければ車に気が付いていたかもしれないという警察の説明に主人公はとうとう自分の曲で人を殺してしまったのかと絶望するところでルートは終わる。このときに流れる『no title』という不協和音満載のエンディングテーマが結構ホラーっぽくて怖い。

音楽以外のすべてを捨てて音楽と向き合うとこの結末にたどり着くあたり、よくわからないがエモさがあふれていると言えるのではないだろうか(適当)。

少なくともこのルートの主人公は、澄が妊娠したときに即座に堕ろせといったり、澄を好きではないことを自覚していたりと、ロボットぽさが強調されていると感じた。

このルートで述べられていることは、価値を信じることの大切さ、ということになるのだろうか。

 

 

 

 

それはさておき、三日月ルートにもどる。

彼女のソロデビューを断ると、三日月ルートに入り、今度はバンド単位で構わないというオファーが来る。そのオファーを出したのは、昔三日月が引きこもりながらネット配信を行っていた時に三日月に曲を送っていた人物で、中学生の時からボカロで曲作りを始めた天才高校生という触れ込みの人物だった。モデルを考えると米津玄師っぽいなと考えた。その企画が成功し、それからもメディアへの露出やバンド演奏をこなしていくうちに、トントン拍子に売れ、ついには2年連続の紅白出場を果たすという内容。

結局あれだけ自分たちの手で三日月を売り出すことに執心していた主人公だったが、売れるきっかけは世間が注目していた若き天才プロデューサーの力だったということに拍子抜けし、これも冒頭で言ったストーリーに感動するというやつなのかと考えた。

話がここで終わればいいのだが、この後もう少しストーリーは続き、ある日主人公と同棲することになった三日月が、ストーカーじみたファンに硫酸をかけられる事件が起きる。この事件のせいで三日月の顔には一生消えない跡が残り、右目を失明し、PTSDから歌を歌えなくなって『Dr.FLOWER』は無期限活動休止に追い込まれてしまう。

シナリオを読んでいてこれは本当に悲しかった。確かにその後「キラ☆キラ」で出てきた『STAR GENERATION』という某遠藤正明さんが歌う伝説のバンドの復活を通じて三日月は歌う意味を悟り、再び歌えるようになって『Dr.FLOWER』が復活するという流れになるのだが、三日月にここまでする必要はあったのかと考えてしまった。現実に即して考えれば、こういう事件が起こることは予想出来て、なおかつ回避できないが、せめて創作の世界ではヒロインを肉体的に傷つける方向での話の進め方はしてほしくなかった。(凌辱ゲーを除く)まあここまで思ってしまう時点で案外自分もキャラに感情移入してしまっていたのかもしれないなと考えた。

あと、三日月の復活のきっかけが、「キラ☆キラ」ではそれなりに出番があったものの、「MUSICUS!」ではほぼ出てこない『STAR GENERATION』であることに、本作単体で見て不満を感じたという感想もあったのだが、私個人からすると「キラ☆キラ」からみてきた『STAR GENERATION』の復活はうれしいことであり、また『STAR GENERATION』ボーカルの八木原さんが三日月に語った、俺の魂は一つしかないんだから、みんなのためには歌えない。ただ一人のために歌っている。それでもそのたった一人にすら何かを伝えることは難しいというセリフには感動した。

『STAR GENERATION』のライブを経て三日月が至った結論とは、音楽というのは音だけではなくて心を震わせる力の事だということ。花井さんが散々語っていた、曲に対する背景も全部ひっくるめて音楽だという事になる。

主人公はライブ中花井さんの幻覚をみて、対話を行う。そこで、音楽の神様がいるかいないか、そんなことはどうでもいいことだ。大事なのは俺達には音楽が必要で、信じるしかないんだという結論にたどり着く。最後は復活した『Dr.FLOWER』が武道館でライブを行い、最初の曲が始まったところで話が終了する。

この最後の終わり方がめちゃくちゃかっこよかった。ライブの終わりではなく、始まりを終わりに持ってくるところが、これからの彼らのスタートを象徴していたと思う。

あとは本編の流れにはない三日月の人生観とか考え方が本当に面白く、こんな風にひねくれて世の中を見ていたらそうなるよねと思ったり、物語序盤から主人公に好意をアピールしてくる三日月がかわいかったりした。まあ主人公は人の心がなくて、三日月の恋愛感情に気付いていても理解できないのだが。

三日月の考え方は、よくある瀬戸口廉也のキャラの考え方だなあと思っていて、私はそこが好きなのだが、うまく説明できないことがもどかしい。

総評として音楽の神様がいるかいないかという問いに第三の選択肢としてどっちでもいいという答えが出てきたのは定番であるが、納得できたし、硫酸事件を除いてルート全体では面白い出来になっていたと思う。

 

 

・金田について

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主人公と同じ定時制高校に通っている生徒で、見るからにロックな格好をして話しかけづらいオーラを放っているが実際は人見知りのヘタレで自分から声をかけられないだけである。両親はおらず、引き取ってくれた親戚のおばさんの経営する施設で暮らしている。

この金田は人の心がない主人公の対比として、全体を通して主人公について回る。弥子ルートでは、『NIGHT SCHOOLERS』にリードギターとして参加するが、口ではロックスターになるといったり、ライブハウスを回ってほかのバンドをけなしたりするが、口だけマンであり、Fコードがひけず、ギターを弾くことができない。このクズ人間である金田を好きになれるかどうかでこの話のストレス具合が変わると思う。

弥子ルートでは結局最後までFが弾けずにインチキをして本番に臨むが、みんなで何かをするという経験がない金田は感動して泣いてしまう。

他のルートでは、主人公と一緒に高校を辞め、主人公が借りたアパートに寄生して『Dr.FLOWER』のギターとして活動することになる。最初はギターが弾けないが、実は左右を入れ替えれば弾けることが判明する。普段は働かずに主人公の金で飲み食いをし、パチンコに行き、練習もさぼるクズだが、本当に困っているときには彼なりに考えてバンドのためになるように行動したり、だれとでも仲良くなれる特技があったり、バンドメンバーを大切に思っていたりと、いいやつの側面もある。三日月ルートではファンの女の子を妊娠させてしまい、それがきっかけで家庭を持つようになる。

ロックスターを目指しながら、ささいな成功ですぐに満たされてしまい、完璧を追い求める三日月や主人公の対比として描かれる。

こういうキャラはたまにいいことをすると憎めなくなるのがずるいと思う。

 

・システム、音楽

 

音楽が売りのゲームなだけあって、劇中歌はどれも素晴らしい。一番気に入ったのは『花鳥風月』の『ぐらぐら』という楽曲。

だがCFでアルバムを手に入れられなかった私には聞く手段がないのだ...。

一般発売として3月に『Dr.FLOWER』と『NIGHT SCHOOLERS』の楽曲を収録したバージョンが発売されるのでそれは買いたいと思う。

システム面は前述したフリーズ問題があったり、シーンジャンプがなかったり不満点が多かった。

 

・総評

 

「キラ☆キラ」と、「DEARDROPS」という前作をプレイしていないと100%理解できないというシステムははっきり言って嫌いなのだが、それを差し引いてもシナリオゲーとして素晴らしく、やってよかったと思う。瀬戸口廉也氏には、OVERDRIVEがなくなってしまってもまたシナリオを書いてほしいと思った。

あと遠ちゃんのスタジェネ新曲『Be strong』が聞きたい...。