shanの落書き帳

ポケモンときどき〇〇

無題5

 

お久しぶりです。shanです。

積みゲー消化記録第五弾です。

今回はちょっと頑張ろうと思います。

文章が下手ですが、よければお読みください。

 

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今回プレイしたのは2004年にS.M.Lから発売されたCARNIVALです。

この会社は2008年に潰れてしまいもうありません...。

このゲームの感想を言う前にまずこのゲームをプレイしようとした経緯について話さなければなりません。

このゲームのライターは瀬戸口廉也という人なのですが、この人は瀬戸口廉也名義で三本しかシナリオを書いていないにもかかわらず、エロゲ界隈でカルト的な人気を誇っています。その三本とは時系列順に「CARNIVAL」「SWAN SONG」「キラ☆キラ」です。

この中でも「キラ☆キラ」は特にmilktubのbumbooさんが社長を務めるOVER DRIVEから発売したゲームであり、その曲のよさもあいまって私の中ではかなりの神ゲーだという位置づけになっています。

「キラ☆キラ」はそれ単独で語りたいことがたくさんあるのですが、それはまたの機会ということで

 

「キラ☆キラ」で瀬戸口廉也に興味を持った私は、彼の書いた作品を何作か読んでみました。彼は瀬戸口廉也名義を引退した後も唐辺葉介という名義で何作かのラノベを書いています。私はその中でも「Psyche」「電気サーカス」という二作品を読みました。

小説の感想はここでは省きますが、その時は中学生が山田悠介を喜んで読んでいるのを眺める大人のような何とも言えない気持ちになったのを覚えています。

この作者は心理描写や独特な文体に特徴があると言われていますが、もっとざっくり言うと、文章が暗いのです。昔の作家でいうと太宰治を連想させるところがあり、シナリオの題材によってその暗さが活かされるかどうかが決まるのではないかと思います。

というわけで、ここは原点に立ち返っての処女作をプレイしようと思い立ったわけです。あとdmmの半額セールやってた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔のゲームだし、ネタバレはガンガン出していきたいと思います。

 

 

以下、常体。

 

 

 

 

 

まずはストーリーから

 

昔から嫌なことがあると記憶をなくしてしまうクセがあった主人公木村学は、高校で学をいじめていた相手である三沢に屋上に呼び出されたとき、記憶をなくしてしまう。

学が次に気が付いたとき、目の前には血まみれで倒れている三沢と、おなじく倒れている幼なじみである九条理沙の姿があった。

その後学は三沢を殺した容疑で逮捕されるが、護送中のパトカーが事故を起こした隙に逃亡する。

しかしこのまま逃走しても捕まるのは時間の問題であり、それならば捕まる前に理沙と約束していた夏祭りにいって、借りていたハンカチを返そうと思い立つ。

その後色々あるが理沙には会う事ができて、理沙の自宅に匿ってもらうことになる。

学は今まで自分をいじめていた連中に復讐することを思いつき、三沢に命じて学をいじめさせていた志村詠美を呼び出してレイプしたり、巡回中の警察官である高杉百恵を監禁してレイプしたりする。

しかし、監禁していたはずの詠美や百恵がいつのまにかいなくなっていたり、理沙の友達である渡会泉も監禁したはずなのに勝手に逃がしたり、学が寝ているときに学の友達である武と話している声が聞こえたりしたことで、学は理沙に対する不信感を募らせる。

最後は百恵から奪った拳銃を理沙に突きつけ、真相を問いただすが、理沙は何も答えず、主人公は再び記憶を失う。

 

というかんじ。

あとは各ヒロインのルートで話すことにする。

 

雑で申し訳ないが、このあらすじを読んだことで勘のいい方ならわかると思う。

そう、学は二重人格者である!!!

武というのは学が昔母親に虐待されていた時に、その痛みを肩代わりするために生み出した人格なのだが、母親はいつか優しくなってくれると信じている学に対して、武が体の主導権を握ったことで、母親を崖から突き落として殺してしまう。

その時のショックで学は武のことを忘れてしまい、武はが寝ているときだけ現れる人格となる。

学が記憶を失っているときは武が表に出てきているときであり、三沢を殺したのも武である。

このゲームはストーリーで話した流れを過去回想はあれど三者の視点で繰り返す構成になっており、

一章 Carnival(学視点)

二章 Monte-Cristo(武視点)

三章 Träumerei(理沙視点)

となる。

章タイトルに意味があるのか考えたけどさっぱりわからなかったぞ!

 

このゲームは瀬戸口廉也の処女作だけあって、彼らしさというのが存分に出ていると思う。題材も暗いし、救いのない感じが彼の文体とマッチしている。

 

例をあげると、ゲームの一番最初の文章が

 

月の表面に小さな蛆が無数に湧いて、その蛆が月面に笑顔を形作っている。
表面だけ笑みの形を作った、見下すような蔑むような腐敗した気持ちの悪い笑顔だね。笑顔って言っても、ちっとも朗らかでもなんでもない。ただ不快な笑顔。僕は、そうやって嗤う月を見ながら歩いていたんだ。

 

である。

なんか雰囲気でてる、でてない?

ゲームの文章引用するのってなんかキモいよね

 

・攻略

 

このゲーム、OP詐欺としても有名らしく2004年には珍しかったフルアニメーションのOPに透明感あふれる雰囲気の描写がなされる。実際にはOPで出てきた描写は本編中に一切存在せず、また攻略可能ヒロインが

九条理沙(幼なじみ)

渡会泉(理沙の友達)

志村詠美(いじめの主犯格)

高杉百恵(巡回中の警察官)

志村麻里(詠美の妹、どうみても小学生)

の五人いるような表現がなされるが、確かに回想は存在するものの、ほぼすべてレイプシーンであり、ENDが存在するのは理沙と泉の二人だけである。

その中でも物語の本質はほぼ理沙ルートで、泉ルートはサブキャラ的な位置づけである。

なお古いゲームであり、演技がイマイチなこともありストーリー上必要以外の実用性は望めない。

また古いゲームにありがちで選択肢を間違えると、バッドエンドがとても多い。

総プレイ時間は10~15時間ほど。

 

・キャラ

今回は公式サイトが閉鎖しているので立ち絵もなく、種族値も載せることができない...。

立ち絵に関しては紹介しているブログがあったので興味のある方はそちらを参照されたい。

いちいちスクショとるのはさすがにめんどい。

 

九条理沙

 

主人公の幼なじみ。

よくエロゲではさえない系の主人公に美少女な幼なじみが世話を焼いてくれて、その理由がエロゲ主人公だから、で済まされることも結構多いと思うのだか、このゲームはそんなことはない。

主人公が学校で一人でいると理沙が来て一緒に無理やりお弁当を食べたり、三沢にいじめられているときも彼を問い詰めたりするのだが、正常なヒロインはこんないかれた主人公にかいがいしくしないのである。

実は理沙は幼少時から現在進行形で父親にレイプされており、母親はそれを見て見ぬふりをしている。

幼いころ、いじめられていた学が武に豹変していじめていたやつを半殺しにするところを目撃し、彼に興味がわく。

つまり学=武を知っている人物であり、学と接していくうちに、彼の前では自分を偽らずふるまえたことから学を特別視し、学に対して救いを求めているのである。

 

このゲームでは哲学的な問いかけがいくつも出てくる。

理沙は幼少時からレイプされていたことから、自分は間違って生まれたのだと思い込んでおり、自分にとって特別な存在である学に対して赦しを求めている。

このことを説明するときにキリスト教の原罪の考え方が出てくる。

後で出てくる渡会泉はクリスチャンの両親をもっており、その関係で理沙もキリスト教に触れる機会が出てくる。

その中で理沙はキリスト教とはなにかについて泉に質問する。

その答えが、

道徳の根っこを神に結び付けたものであり例えば、人を殺したいと思うこと自体が罪である。善悪の基準は神が決めて人間はそれに従う。人間は馬鹿だから間違うこともあるけど、神は告白すればそれを赦してくれる。人間はよくないことを考えた時、良心の呵責がうまれる。その心に科された罪を取り除くのが神なのである。

というものである。

しかし、理沙は神というあいまいなものによって簡単に自分の罪が赦されてはいけないのではないか、むしろ神を信じられないことによって自分の罪が赦されないことが顕著になったと考える。

 

 

理沙は聖書を読む中で、創世記第十九章が自分の罪だと思うようになる。

ちなみに創世記第十九章はソドムとゴモラの話であり、つまり近親相姦の話で理沙の現状と合致するが、それがどういう風に罪で、何が教訓かとかそういった話は難しくてできませんでした...。とりあえず振り向いてはいけないんだと思う。

 

理沙エンドでは自分の中で武との折り合いをつけた学が理沙と逃亡することを選択する、という終わり方。

学と理沙は幸福について議論したことがあり、そのとき学は、幸福とは馬の顔の前にぶら下がっているニンジンのようなものだ、と答える。

つまり幸福というのは思い描くことはできるけれども触れることはできないと言っているのである。

理沙はこのニンジンを追い求めることを決意し、二人は朝日をバックに歩き出すところでtrue ルートは終わる。

一見さわやかなエンドに見えるが、学が殺人犯であることは変わらず、また理沙も家族の問題に一切手を付けていない、消化不良感あふれるエンドである。

また学は最後に理沙という学自身にとっての希望を見つめて終わるのに対し、理沙は学の後ろにたくさんの人間が生活している街並みをみて、

この瞬間がずっと続けばいいのに

といって終わるのである。

つまり、二人の見ている方向がバラバラであり、人と人とは分かり合えないということが暗示された悲しい結末だと思う。理沙と学が背負っている罪に関しても結局赦されてはいない。

学は母親殺しの罪を一生背負っていくことを決めているが、理沙はその罪を学に赦してもらいたがっているところも方向性の違いを表していると思う。

 

余談だが、このゲームには瀬戸口廉也が書いた公式の後日談小説があるが、現在アマゾンで3万円ほどのプレミアがついていてとても読めない。

一番確実なのは国会図書館で申請して読むことだそうである。

東京在住じゃないととても無理なので、ストーリーを掲載しているブログを漁ってきたところ、学と理沙は7年間逃亡生活を続けるが、最後は学が自殺して理沙はまた父親がレイプしてくる実家に帰ることになるそうである。

学は理沙のことを大事にしていて巻き込みたくないと思っていた気持ちの終点が自殺なのだろうが、理沙は学のためなら死んでもいいと思っており、ここでも人と人とは分かり合えないというテーマが描かれていると思う。

 

このゲーム、古い作品であることを差し引いても演技が下手くそなのだが、この人の演技はマシ、程度だった。

なお、出てくる声優は誰一人知らないが、学の声だけ氷河流さんなのですぐわかる。

 

渡会泉

 

理沙の友達で学とは中学からのつきあいなので、そこそこの知り合い。

中学の時から物事を斜に見ているところがあり、クラスで浮いていたが、主人公の言動に興味を持ち、それ以来学のことが気になっている。

学は母親の虐待されている以外の時は、祖父の残した本を読み漁っていたので、無駄に頭が切れて文学的な表現がスラスラ出てくるのである。

という設定で、泉ルートでは文学作品からの引用が結構ある。

泉ルートは学が理沙に固執せず、告白してきた泉と一緒に逃亡することを選ぶと入ることができる。

このルートでは理沙を裏切って、理沙が抱える問題をすべて置き去りにするため、理沙ルートを見た後だと非常に入りづらいが、シナリオとしては全編を通じて一番好きだった。

私は終わりの見えないロックンロールな逃亡シーンというのが大好きなのである。

グリザイアの果実」榊由美子ルート

リトルバスターズ」鈴ルート

ef - a fairy tale of the two.」雨宮優子ルート

など

オススメだぞ!

アニメ版グリザイアで由美子ルート改悪したの許さない

 

逃亡した二人は最初は美人局をやって金を稼ぐ。

本番までしてもいいという泉だったが、学は自分以外の男に泉が抱かれるのが嫌だからという理由で許可しない。

これに泉が自分のことを思ってくれていると勘違いするのだが、このクズシーンの雰囲気が◎

その後二人は行き当たりばったりで金を使い、旅を続け、ある時競馬で300万ほどの馬券を当てる。3万倍のオッズに100円ではなく300倍のオッズに一万円なところがロックンロール感が出ていてとても好き。

二人はその金でラブホに泊まり、金色夜叉の一節を朗読するのだが、こういう風にサラッと昔の作品からの引用を出されるとかっこよすぎてもう駄目である。

なお金色夜叉との関係性はカット

 

泉は前述の通り両親がクリスチャンで、洗礼を受けており、洗礼名はヨハンナである。

これはバプテスマのヨハネからとったもので、彼はイエスキリストの洗礼を行ったとても有名な人なのだが、説明のされ方がサロメに献上された首だけの人、である。

ちなみに父はアントニオで母はロザリアというらしいのだが、泉にヨハネ要素がどれだけあるのかはキリスト教初心者の私にはよくわからなかった。

理沙ルートで泉と理沙は二人でクリスマスのミサに行き、その時讃美歌をうたわなかった泉に理沙はなぜ歌わないのかと尋ねるのだが、その返しが

 

すごい音痴なんだ 神様も怒るだろうから歌わないの

 

である。ハリウッドB級映画感がすごく出ていてかっこよくて感動してしまった。

 

二人は最後に思い付きで登った山で語り合って泉ルートは終了するのだが、その時の会話もすばらしいので載せておく。

 

泉証明なんか出来ないけど、私はずっと一緒にいるよ。何があっても。
学そっか
泉・・・って、言って欲しかったんでしょ?
学うん
泉ねえ
学なに?
泉私も言ってもらっていい?

 

かわいすぎかよ...。

 

他にもおすすめ会話を載せておく。

 

学スカートとか、よくわからないところに穴とか切れ目が入った服とか、理解できない。ぜんぶなくなればいいのに。
泉私も、昔はそう思ってたよ
学今は違うの?
泉だって、そういうの着るとあなた喜ぶじゃない

 

 

学モミジって、どういう漢字あてるか知ってる?
泉コウヨウ。クレナイに、はっぱの葉で、紅葉でしょう?
学そうじゃない方
泉知らないよ。どうやって書くの?
学あのね、木ヘンに花とも書くんだ。ほら、こんな季節なのに、葉っぱなのに、まるで花が咲き乱れてるみたいだよね。盛大な狂い咲きみたいで綺麗だ。
泉それは風流な説明だなあ。うん、合格
学サンキュ。でも、本当はこっちのほうの漢字も知ってたでしょ?
泉えー、そんなことないよ。・・・って、ばれてた?
学まあね。お前が知らないはずないもの

 

はあ...はあ...。

とにかく私がこういう雰囲気が好きすぎることが理解してもらえたと思う。

なろう系みたいなすげー頭いいーみたいな感じではなくさりげなくスマートな会話というのが大好物なのである。

 

あとの人たち

 

シナリオの大筋に絡んでこないし、レイプされてるだけなので割愛。

ちなみに志村麻里をレイプすると即バッドエンドになるぞ。

 

・システム、音楽

 

古いゲームなので色々足りないのは仕方ない。

音楽はOPもEDもよかった。なおEDはbambooが作曲を担当している。

 

・総評

 

これこそ求めていた瀬戸口廉也だ!となるとてもいい読み物だったと思う。

瀬戸口廉也OVER DRIVEの最終作となる「MUSICUS!」でメインライターとして復活するのでそれも楽しみにしたいと思う。